第44話メンタル強男は幸せ者

「パパーおきてー!」


大きな声と共にお腹に二つの衝撃が走る。

もう朝か……昨日の登板の疲れがまだ抜けていないようでなかなか起きられない。


「おきてーあさだよー!」

「ん……ママが呼んでる」


葵と碧がお腹の上で無邪気に暴れている。


「葵……碧……パパもう少しだけ寝てたいんだけど……」

「ダメー!!」「ダメ……!」


二度寝は許してくれないようだ。こうなったら……。

俺は二人を布団の中に引き込む。


「「キャー!」」


楽しそうに笑っている二人をそのまま抱きしめていると、スンスンと鼻を慣らし始めた。掛かった!

俺は全力で二人を撫で始める。そうして楽しそうに笑っていた二人は、だんだんと静かになってきた。


「「……スー……スー……」」


やったぜ。これでまた寝られる……。


「あ、パパまた二人を寝かしつけて! もうご飯出来るから起きて!」


ダメみたいだ。


「海おはよう。もう少しだけ……」

「ダーメ! もうお姉ちゃんも起きて待ってるんだから!」


そう言って近づいてくる海におはようのキスをする。


「えへ、おはよう♡ はい、もう起きて!」

「はーい……」

「あ、葵と碧は寝かしつけた責任を持って連れてきてね!」


胸に顔を埋めてすやすや寝ている二人を抱きながら起き上がる。

結構大きくなってきたけど寝顔は天使のままだ。よーし、パパ頑張って抱っこしちゃうぞ!


リビングに行くと海はキッチンでご飯を作っていて、空はソファーで座っていた。


「おはよう空」

「おはようちぃ」


ソファーから立ち上がろうとする空を静止する。


「いいよ立たなくて。のんびり座ってて、妊娠してるんだから」


空は今妊娠している。……俺との子供だ。




結局俺は、空と子供を作る事を了承した。ずっと俺を支えてくれた空には絶対に幸せになって欲しかった。

そしてその幸せが、俺と子供を作る事だと言うなら、海の許しもあったし断る選択肢はなかった。


ただ子供の事を考えると少し不安だったので1年待ってもらった。野球に集中するために。

アメリカでの1年目は日本での成績ほどではなかったが上々の結果を残せた。これならいきなりクビになって露頭に迷うなんて事もないだろう。


そして、自信を持つ事が出来たので改めて海の意見を聞いた。

時間が空いたので海の考えが変わっているかも知れない。空を幸せにしたい気持ちはあるが一番は海だ。その海が嫌だと言うなら申し訳ないが断るつもりだった。

だが海の答えは、あの時と同じでお姉ちゃんも幸せにして欲しいとの事だった。


……もしかしたら、海はもう俺のことを独占したいと思う程は好きじゃなくなったのか?


そんな考えが頭をよぎってしまって思わず聞いてしまった。

……その時の海は、今までで一番怖かった。今までも少なからず喧嘩する事もあったけど、あんなに怒った海は初めてだった。

愛してるに決まってる、本当は独占したい。でもお姉ちゃんだから、お姉ちゃんだから許しているだけ。


俺は自分の発言を反省した。海の愛を疑ってしまったから。

その日の夜はかつて無いほど熱くなった。俺から沢山の愛を伝えて、海から沢山の愛を伝えられて……。

避妊していなかったら絶対に子供が出来ていたと思う。


そうしていざ空との子作り。その場には……海もいた。

俺の気持ちが空に移ってしまわないか不安だから隣で見ていると言う。だけど流石に恥ずかしい、それを伝えるとならば自分も参加すると。

……これでは昔の父さんの発言まんまだ。

しかも空がまだエッチは少し怖いからと取り出してきたのが……犬耳。海もそれならと空の猫耳を借りて賑やかな子作りになってしまった。

でもごめんなさい。ぶっちゃけめっちゃ興奮しました……。


空とも相性はバッチリだったようで、程なくして妊娠がわかった。空が涙を流して喜んでいる姿を見ると俺と海も嬉しくなった。

両親達にも報告をすると自分の事の様に喜んでくれた。


ちなみにお義父さんがこっそり声をかけてきた。


「気をつけろちぃ……子供が巣立つとペットに戻るかも知れん……」


少しやつれたお義父さんの言葉。それとは逆にお義母さんはなんだかツヤツヤしていて機嫌がよかった。

なるほど。覚悟はしておこう……。




朝の挨拶を済ませた俺は空にもキスをする。

海からは空の事もお嫁さん扱いでいいと言われている。俺としても子供まで作ったんだ、そこに海との差は作りたくない。

唇にキスをすると空はまだ恥ずかしそうに顔を赤らめている。


「パパーあおいも!」


いつの間にか起きていた葵にもおはようのキスを求められる。俺は抱っこしたまま葵の頬にキスをする。


「葵もおはよう」

「おくちにチューがいい!」

「……そっちは将来大事な人が出来た時にしようね」

「……パパはあおいがだいじじゃないんだ……」


拗ねてしまった。なんとかなだめてご機嫌をとろうとすると頬を掴まれ唇にキスをされる。


「……えへ♡ おはようパパ!」


その笑い方は海に似ていた。うーん、葵の将来が心配だ。男を惑わせる女の子になりそうだ。

そんな事を思っていると今度は逆側に引っ張られ、碧にも口にキスをされた。


「ん……♡ みどりも……」


魔性の双子である。

ちなみに二人は一卵性双生児なので見た目はそっくりだが、すでに性格に差が出始めている。

元気いっぱいの葵と、静かで少し寡黙な碧。だけど二人とも聞き分けもよく、手がかからないいい子だ。


「……碧もおはよう。ほら、起きたなら降りて。ママのお手伝いお願いしていい?」

「はーい! いこっみどり!」

「うん……いく……!」


手を繋いでトテトテと走っていく二人。尊い。

少し疲れた俺は空の隣に座った。


「お疲れ様ちぃ。二人はホント可愛いね」

「うん、流石俺の娘!」

「私の子供も可愛くなるといいなぁ」


そう言って自分のお腹を擦る空。

海の時もそうだったけど、大きくなってきたお腹はなんだか触りたくなる。


「……俺も触っていい?」

「ふふっどうぞ」


間違っても負荷がかかるようなことにはならないように優しく、そっと撫でる。

ここに自分の子供がいると思うと何度体験しても不思議な気分だ。


「……くっ……」

「どうしたの空!? 何か痛むの!?」


お腹を撫でていると急に苦悶の表情を浮かべた空に慌てる。まだ陣痛が来るには早い。何かあったら……


「……くぅ~ん♡」


……なんだ、ペットと母親の感情に苛まれているだけか……。

空はまだペットから抜けきれていない。母親らしさも出て来たがまだまだ甘える毎日だ。

お義母さんは母親になれば抜けられると言っていたがそれはまだ先のようだ。


空のペットの部分が出てしまったので、お腹を守りながら寝転がせて膝枕をする。

頭を撫でると嬉しそうにはにかむ空。まぁこれはこれでいいか。


法律上、空とも婚姻届を出すというのは出来ない。なのでいわゆる内縁の妻、事実婚といった形になるだろう。

それで空に肩身の狭い思いをさせる気はない。こうなった以上、海も空も同じくらい愛してみせる。

もちろん空との子供もだ。ちゃんと認知はして、戸籍上でも俺の子供にする予定だ。

世間的には認められない関係だろうけど、そこは覚悟している。

一番いいのはバレない事だけど、バレたならバレたで誠意を持って説明したい。それでもダメならみんなでどこかに身を隠せばいい。

幸いアメリカでの野球も順調でまだまだ稼げそうだ。これなら子供たちの将来も含めて、金銭面で苦労させることはないだろう。



「あー! お姉ちゃんまた甘えて! 私がご飯作ってるっていうのに!」


遠くから海の非難する声が聞こえる。


「よし葵、碧! お姉ちゃんに甘えてきなさい!」

「「はーい!」」


二人が走ってこちらに向かってくるので慌てて空を起こす。そんな空に向かってお腹を避けて抱きついていた。

一応二人にも、今の空は妊娠してるから気をつけてとは言ってあるが、ちゃんと理解してくれている。


「そらーなでてー!」

「みどりも……」

「はいはい♡」


産まれた時から一緒にいるせいか、空にもしっかり懐いている。なんとか母親として認識してしまうことはなかった。

でも空からしたら自分の子供みたいなものだろう。きっと子供が産まれても、そこは変わらないでいてくれる気がする。


「そしてその隙にー!」


そんな3人を見て和んでいると今度は海が俺の膝にダイブしてきた。


「にゃん♡ 甘やかしてにゃん♡」


例の空との子作りの日のペットエッチ、あれが良くなかったのだろう。海は甘えたい時ペットモードになるようになってしまった。

元々海の甘え方は動物っぽさがあり、やってることは変わらないが語尾に「にゃん」まで着くようになった。

……めっちゃ可愛いからいいんだけど。

お義母さん、どうやら母親になってもダメかも知れません。この調子だと、空もダメかも知れない。


「ほら海にゃん、ナデナデー」

「にゃぁ~ん♡」


撫でられて目を細める姿は姉妹そのもの。そしてその姉妹二人を妻にして、ペット堕ちさせている俺は一体……。

撫で続けるとだんだんお尻を高く上げだし、顔をグリグリと俺の足に擦り付けだした。

海さん、その動きはやめてくれ、元気になってしまう。子供も隣にいるし、日も上がったばかりだというのに。


「……ママばっかずるい!」

「ほんとだ! ままどいてー!」

「にゃぁん……」


子供達に移動させられている海は悲しそうな声を上げる。ていうか子供達の前でもペットモードを出すのは教育に悪いと思います。


「……パパ……にゃん♡」

「にゃーん♡ なでて♡」


ほら子供達が真似しだした。可愛いけど。

涼木家の血を考えるとうちの娘達も危険だ。お義母さんの気持ちがわかる。なんとか娘達だけはペット堕ちさせないように気をつけよう。

とはいえナデナデはする。


「うぅ……パパの膝が取られた……じゃあ横から♡」

「あら、じゃあ私も♡」


二人の子供と、二人の嫁に囲まれる。

両腕には嫁に抱きつかれ、膝には子供二人が頭を乗せている。

ご飯を作っていたはずだが、まだまだみんな甘えたいようだ。火は止めてあるようだししばらくはいいだろう。


……俺は幸せものだ。


こんなみんなでの幸せを絶対に守り抜いてみせる。

そのためにもまずは野球を頑張らないとな。娘達にも周りに自慢出来る、かっこいいお父さんの姿を見せたいし。

子供達二人を撫でて、両腕は嫁二人にスリスリされながらそんな事を思う。




それじゃこの幸せのために、これからも張り切って行きますか!



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

完!!!

完結なんでクソ長自分語りいいっすか!?


まずは失踪することなく完結できました!褒めて!

とはいえこれで終わりではなく、おまけも書きたいと思ってます!

元々二次創作マンだったので自分の作品で二次創作を書く感じです!

一応予定では

海も裏でペット堕ち!?

第1回千尋君の一番のペットは誰だ選手権!

鬼畜父、娘達もペットに堕とす!

などを考えてます!他にも思いついた時に書いていきたいなーって感じです!

なのでこの小説を完結済みにするかどうするか迷ってます…どうしたほうがいいのか…。


後は内容ですね。

ホントすみません!タイトル詐欺です!

寝取られざまぁは実質ないに等しいし、そもそも空なんですが…寝取られてなくね!?というところです…。

ホントは最初の設定だと空は心は寝取られてないけど身体は…くらいのつもりだったんですけど思ったより皆様の寝取られヒロインに対するヘイトが凄まじく…変えました!

このままじゃ、最終的にペット化させるつもりだったんですけどこんな汚えペットいらねぇよ!で終わりそうだったので…。

なので途中でタイトルを変更したけど寝取られの部分も微妙だな…ってなりました!

とはいえ寝てるものは寝てるのでタグとかはそのまま!タグなしで寝取られあるのが一番のギルティなので!

結果として謎に空が人気あったのでそれはそれで嬉しかったですwでもメインヒロインの海が…(遠い目


ここを読んでいる方は最後まで付き合ってくれた方だと思うので、改めてお礼を申し上げます!ありがとうございました!

コメントやフォロー、評価、ギフトなどをくださった方々もありがとうございました!皆様のおかげで最後まで頑張れました!

ぶっちゃけ壁が3回くらいある変な作品でした!そこを乗り越えてきた者達だ…面構えが違う!


最後に。

ノクターンでエッチなのも書きたいし新作の今度こそ寝取られざまぁを完遂する短編も書きたいしでまだまだ頑張っていきます!

また出会う事があればよろしくお願いします!ありがとうございました!

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メンタル強男の寝取られ成り上がり譚(本編完結済み いちぱ @ichigo-pasta

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