第41話酔ったちぃにいはすごかった…♡(ほぼ海視点

今日はとらーズの優勝が掛かった試合だ。

そんな試合の先発はちぃにい、これは絶対に見逃せない!


朝から私もお姉ちゃんも楽しみでソワソワしている。ちぃにいも心なしか落ち着きがない。

ちぃにいを励まして元気よく送り出した。こういう試合を全部勝ってきたのがちぃにいだ!

ワクワクしながら試合の中継が始まるのを待っていた。


そうして始まった試合は大接戦だった。

ちぃにいも頑張って無失点で抑えていたが相手のピッチャーもすごかった。

両者一歩も譲らず無得点のまま8回まで来た。だけどここでとらーズにチャンスが来た。

そしてそんなチャンスで打席に立っているのはちぃにい。解説の人もチャンスに強いとは言え投手、ここで代打を出さないのは一種の賭けと言っている。

でも私はチラリと映ったちぃにいの表情で勝ちを確信した。


だってちぃにいは、楽しそうに笑っていたから。


そんな私の確信通り、ちぃにいはヒットを打った。走者一掃、勝負は決まった。

最後の回もちぃにいがそのまま抑えてとらーズは優勝を果たした。

テレビにはマウンドでガッツポーズを決めるちぃにいの姿。キャッチャーの人が抱きついていた。……羨ましい。

美味しいところを全部持っていったちぃにいの側に駆け寄って、手荒い祝福をしている笑顔のチームメイト。

監督の後に一番に胴上げされているちぃにいを見て、私とお姉ちゃんは目を潤ませて喜んだ。



私達は、ちぃにいが帰ってくる前に優勝おめでとう会の準備をしていた。

流石に優勝なので、チームの祝勝会もある。みんなでご飯とかは食べてきちゃうかも知れないけど一応作っておく。今日はうんと労ってあげるんだ!

私もお姉ちゃんも楽しく準備していた。お姉ちゃんなんてもう犬耳を着けて甘える気満々だ。……私も労った後はいっぱい甘えちゃおっ!


夜もだいぶ遅くなり、そろそろ日付が変わろうとしていた。ちぃにいに連絡をしてみても既読も付かない。まだ祝勝会が続いてるのかな?

そんな事を思っていると家のチャイムが鳴った。ちぃにいだ!

私とお姉ちゃんはウキウキで出迎えにいった。


「ちぃにいおかえりー! ……ってあれ?」

「あー千尋さんの彼女さんっすよね?」


そこには男の人に肩を担がれて、顔を真っ赤にしてぐったりしているちぃにいがいた。

この人はたしか……ちぃにいの高校の時の後輩さんだ。坂下さんだったかな?

坂下さんは、ちぃにいに続いて翌年とらーズに指名された。1個下の上、キャッチャーという激戦ポジションながらもう一軍で出番ももらえててすごいとちぃにいも褒めていた。


「って、ちぃにいどうしたんですか!?」

「大丈夫っす、ビールかけして匂いだけで酔っ払っちゃったっぽくて」


少し安心した。たしかに、ちぃにいはお酒を一滴も飲まない。だからお酒に強いのかどうかはわからなかった。でも飲んでもないのに酔ってしまうという事は相当弱いみたいだ。これからは気をつけなきゃ。


「それで、俺が送り届けに来たっす!」

「そうなんですか、ありがとうございます!」

「あーでも……彼女さんなら大丈夫だと思うんすけど、一応気をつけてください」

「……何をですか?」

「酔った千尋さん初めて見たんすけど……やばかったっす! これが俺じゃなくて後藤とかだったら絶対堕ちてたっすね……」


何がやばいのかよくわからないけど、まずはちぃにいを寝かせてあげないと。


「わかりました。本当にありがとうございました!」

「いえいえ、酔いが覚めたらよろしく言っといてください!」


そう言い足早に去っていった。

心配そうに後ろで見ていたお姉ちゃんと一緒に、ちぃにいを担いでリビングのソファーに下ろした。


「ちぃにい、大丈夫? お水飲む?」

「うーん……飲むぅ……」


こんなちぃにいを見るのは初めてだったので心配だが、とりあえずまずはお水だ。コップに入れた水を飲み干すとちぃにいは気を取り戻した。


「……どう? 具合悪くない?」

「んー……あれぇ、海ちゃんだぁ!」


そう言って抱きしめられた。


え!? 海”ちゃん”って……ちぃにいと付き合う前以来の呼び方だ。なんだか久しぶりでドキドキする。


「海ちゃんは今日も可愛いねー! よちよち!」


ほっぺをむぎゅっとされて、そのままグリグリされる。

いや、なんなのこれ!? いつものちぃにいじゃない!!


「ちょ……ちょっと」

「ほっぺも柔らかくて気持ちいいねぇ! お礼にキスしてあげる!」


ちぃにいが顔中に沢山キスをしてくる。


し……幸せ……♡


……じゃなくて! なんとか正気を取り戻してもらわないと!


「お……落ち着いて……」

「キスじゃなくて、ナデナデがよかった? 海ちゃんは相変わらずあまえんぼだねぇ!」


そのままキスを止めると今度はいっぱい撫でられる。強く抱きしめられながらの、少し荒々しいナデナデに私の頭はとろけていく。

幸せっ♡ もっとしてっ♡

まるで撫でられて喜ぶ犬の様な反応になってしまう。


「ほーら海ちゃん、気持ちいい?」

「あっ♡ 気持ちぃっ♡」


エッチをしている時の様な甘い声が出てしまう。でも抵抗する気がまったく起きない。


「耳ナデナデー」

「あっあっ♡」

「背中もナデナデー」

「あっあっ♡」

「首筋ちゅー」

「あんっ♡」


もうちぃにいにされるがままだ。だってこんなに幸せなんだもん。抵抗なんて出来るわけがない。


私は全てを受け入れる事にした。そしてこの幸せな時間を堪能しよう……。





「あれ、海ちゃん反応無くなっちゃった。寝ちゃったの?」


動かなくなった私にちぃにいは問いかけてくるけど、息も絶え絶えで言葉を返す事が出来ない。頭の中が幸せでいっぱいだ。


「寝ちゃったのか……。……ん?」


そしてちぃにいは気付いた。……そう、お姉ちゃんの存在に。


「そういえば空ちゃんもいたね! ほらおいで?」


次の犠牲者が呼ばれている。お姉ちゃん気をしっかり持って……。でないとこれには耐えられない。

お姉ちゃんは怯えた目をしながらちぃにいに近づいていく。でも私は見逃さなかった。怯えの奥に期待も混ざっている事を。

近くまでくるとちぃにいに抱きつかれた。

……あ、もうダメそうだ。だってメスの顔してるもん。


「空ちゃんはペットだったね! じゃあペットらしく可愛がってあげるね!」

「ひ……ひぃ……」


そして始まるちぃにいの猛攻。


「ほーら頭ナデナデー」

「あっ♡」

「顎の下すりすりー」

「おっ♡」

「耳もナデナデー」

「……」


あ、そこは付け耳だから反応ないんだ。


「あとは……そうだ! ペットと言えばお腹ナデナデがあったね! ほら空ちゃん、お腹向けてごらん?」


そう言われたお姉ちゃんは仰向けに寝転がる。そのままシャツを捲ってお腹を出した。

……この人、服まで捲ってますよ。調子乗ってるねぇ、今度再教育しておかないと。


「まずは……触れるか触れないかのところで……さわさわー」

「オッ♡ ちょ……ちぃ、これまずい!」

「そのままナデナデー」

「あっあっ♡」

「お腹ぷにぷにー」

「オッ♡ そこ押すのダメ……♡」


お姉ちゃんの顔がだいぶだらしない事になっていた。だけどきっと、さっきまでの私もこんな顔になっていたかと思うと顔が赤くなる。恥ずかしい。


「じゃあ最後に……ペットは尻尾の付け根のところをトントンされると気持ちいいらしいよ? 空ちゃんにもやってあげるね!」


それはたしか猫を気持ちよくさせる方法じゃ……。

でも今日のお姉ちゃんは犬だから大丈夫だろう。……いや犬でもないんだけど。


「ここかな? ほーらトントン!」

「おっおっ♡」


全然ダメそうだ。


「空ちゃん気持ちいい?」

「ぎ……ぎぼぢぃいっ♡」

「よかった、じゃあもっとやってあげるねー!」




そうしてちぃにいの甘やかし攻撃は続いた。

お姉ちゃんが気を失った後はまた私が。私が気を失うとまたお姉ちゃんが。長い夜になった。


……ちなみに私も付け根トントンをされたけど気持ちよかった。人間の尊厳を失うところだった。お姉ちゃんは失ってた。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


目が覚めると、そこは自宅のベッドの上だった。

あれ……昨日の記憶がない。優勝してビールかけをしたところまでは覚えているが、それ以降が思い出せない。

それに頭が少し痛い。昨日はどうしたんだっけか……。


とりあえず起き上がろうと右腕に力を込めるが動かない。確認すると海が抱きついていた。

あまりに幸せそうな寝顔に、起こすのも悪いと思い今度は左腕に力を込めた。でも動かない。

こっちには空が抱きついていた。こちらも幸せそうな寝顔だ。なんだこの状況?


……ていうか海はともかく、なんで空まで俺のベッドで寝てるの!?

まさかと思い下半身を確認するがちゃんとズボンは履いていた。二人も着衣に乱れなんかはない。とりあえず、間違いは起きていないようでホッとした。


なんとか腕を抜いて起きようとするが、二人ともしっかりと抱きついていて抜けない。そうして試行錯誤している間に二人とも起きてしまった。


「ん……あ♡ おはようちぃにい♡」


いつも以上に甘い声で挨拶をする海。


「……ちぃ、おはよぅ♡」


なんだか空も色気がすごい。


「……おはよう二人とも。で、この状況は何?」

「……覚えてないの?」


そのまま昨日の説明をされた。今までお酒は避けてきたのだがなるほど、俺は酔うと記憶を無くすタイプだったのか。


「ごめん何も覚えてないや。……もしかして何かやらかした?」

「……ううん、覚えてないならいいよ!」


一体俺は何をしたんだろう。


「問題ないならいいけど……じゃあ起きるから、二人とも離れてくれる?」


そう声をかけるが二人はまったく離れる気配がない。


「……海? 空?」

「今日はしばらくこのままでいいんじゃない? ちぃにいもオフだし!」

「それは良い案ね! 私は賛成よ!」

「いや……とりあえず水飲みたいから起きたいんだけど……」


というか二人の雰囲気が怪しいから、一旦離れたい。だけどそんな俺の願い虚しく、二人はまったく離す気はないようだ。

そうして1時間以上、二人に挟まれながら抱きつかれてた。




ちなみにこの日以降、家の冷蔵庫にはお酒が完備されるようになった。



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

エッチの効いたギャグ回!まだノクターン行きではないはずだ…!

千尋君みたいな基本真面目なキャラが主人公だとこういう回が書きにくい…せや!状態異常にしたらええんや!

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