第02話 記憶
「謌仙粥縺??∝窮閠?小蝟壹↓謌仙粥縺励◆縺橸シ?シ」
「繧?▲縺溘?√%繧後〒荳也阜縺ッ謨代o繧後k?」
—— 五月蠅い。
真っ白に塗りつぶされた視界で、それでも大勢に人に囲まれているのが分かった。
周りで大勢が何か喋っている、騒いでいる。だが、何を言っているのかは理解できない。
「言闡は?通騾てヲ縺いか?°?」
そして
周囲の壁には派手な旗が飾られ、その前にはローブを纏った集団、フルプレートを纏った騎士らしき集団。そして正面には、肥え太った男。派手な服を着て偉そうなその男の頭には王冠が輝いている。
なんだここ…その言葉は声にならず消えていく。
—— 異世界召喚
友人に勧められた小説やアニメで、幾度となく登場したそれが思い浮かんだ。
どうなって、なんで俺が、トラックに轢かれた覚えなんて...そんなとりとめのない考えが浮かんでは消えていくが、状況は彼を待ってはくれない。
「そんな薙→どう縺ゥ良い〒今の縺ォにキ隷属の戊シェを付け縺翫まえ」
王らしき男が何かを叫ぶと騎士の一人が近付いてくるが、その手に光る物を見て咄嗟に手を振り払い跳ね除けた。
「貴倥、何を輔る!!」
騎士が叫ぶが、そんなことはどうでも良い。
俺はこれを知っている。俺はあの旗を知っている。
この言葉を知っている!この世界を知っている!!
—— そうじゃない、思い出した!!
「ッざけんな!!」
つい叫んでしまったが、それこそどうでも良い。あのまま受け入れるよりも遥かにマシだ。
咄嗟に払い除けたそれは腕輪だった。
一見すると少し派手な印象の腕輪、それは"隷属の腕輪"と呼ばれる物。
身に付けた者は王家の所有物となり、その命令に逆らえなくなる。そういう道具だ。
勝手な都合で召喚し、訳も分からぬうちに隷属させようとする。そんな連中に囲まれ、唯一の出口の前には王と騎士、ローブの集団が構えている。控えめに言って絶望的な状況だった。
「何をしている!さっさと捕らえて隷属させよ!!」
「死んでさえいなければどうとでもなる、何としても捕えろ!」
「悪く思うなよ小僧、これも国の為だ」
—— ただし、普通の高校生にとっては…だが。
身体強化を掛け、出口に向かっての突撃。
降ってくる剣を躱し、流し、打ち払う。
杖を向けてきたローブには腕を取った騎士を勢いのまま投げつける。
そして、怯んだ王の横をすり抜けて出た先の階段を駆け上がると ——
「ここは…大広間ってことは、城門は向こうか!」
この城は知っている、昨日のことの様に思い出せる。
魔王を倒したと、その報告に訪れた場所なのだから。
この奥、謁見の間で俺達は殺されたのだからッ!
あれから何年経ったかは分からないが、城の作りは変わっていないように見える。なら記憶に従っても問題ないだろう、ここで立ち竦んでいても追いつかれるだけだ。
騎士も地下に集まっていたとはいえ、それが全てではない。城の警備に当たっていた騎士が異変と、見慣れぬ恰好をした人物の登場に集まってきている。ここで挟み撃ちにされるのは避けてたい。
思い出した勇者としての記憶はあるが、ただの高校生として過ごしてきた人生が刃傷沙汰を避けようとする。そもそも今は安全な場所で状況の整理がしたいのが正直なところだ。追手は減らしたいが、追われる理由を増やしたくはなかった。
「まぁ、あそこから逃げ出した時点で今更か…っと」
「そこの小僧、何者だ!一体何処から入ってきた!!」
槍を構え近付いてくる騎士が二人。向けられた槍を手に取って捻り、バランスを崩したところで奪い取る。返事の代わりにそれを振り回し、一歩退いて出来た隙間を駆け出した。片方には勢いの付いた槍のおまけ付きだ。
似たようなことを幾度か繰り返し、城外に出てからは簡単だ。城壁の階段を駆け登り、そのまま堀を飛び越える。あとは夜闇に紛れ、城から離れるように街中を行く。
そうやって流れ着いたのはスラムの空き家だった。夜に街外へ出るのは危険だし、情報を集めるなら街中の方が良い。それに一度出ると入るのが面倒になりそう、理由はそんなところだ。
「しっかし、異世界召喚ってなんなんだよ意味わかんねぇ。そういうのは希望者だけにしてくれ…」
『くぅ~~、拙者も異世界に行ってチートでハーレムな勇者になりたいでござるなぁ』
…そんなことを言っていたクラスメイトを思い出してぼやきつつ、状況の整理を始める。
「(ここは剣と魔法がある世界で、五十年置きに魔王と勇者が生まれる。さっきのが勇者召喚だとすると、あれから五十…いや、俺が勇者になってから魔王を倒すまでに確か六年だったか?なら最低四十四年は経ってる...)」
いや、問題はそこではない。大事なのは何故自分が
そうしてふと、殺された時のことを思い出した。意識が途切れた時、誰かの声が聞こえたのだ。聞き覚えのない、何かを悔やむその声は、『最後にもう一度だけ…』そんなことを言っていた。
—— つまりそういうことなのだろう。俺がこの世界で最後の勇者だった。あれから五十年経ち、魔王が生まれたが勇者が現れなかった。だから勇者を異世界から召喚した。それで俺が呼ばれたのは縁だとか、まぁそんな感じか。
確かに自分はこの世界の住人だった。この世界を救った。だが最期は仲間共々殺されたのだ。そんな世界を、身勝手に喚ばれた自分が何故再び救わねばならないのか。そもそも今の自分はただの高校生だ。勇者の記憶はあるが、それは自分ではないのだ。
となるとやはり大切なのは帰る手段を探すことだ。そして帰る手段が見つからなければ、結局自分が魔王を倒しに行くハメになる。魔王を倒さなければ人類は滅ぶのだろう、そうなると帰る手段を探すことすら出来なくなってしまうのだから。
「とんだクソゲーじゃねぇか...」
—— そう呟いたところで、心身とも限界がきたのだろう。そのまま眠りについた。
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