中編「赤ずきんとオオカミ」

「そうだっ、お婆さんにお花摘んで行こう!きっと、喜んでくれるわ」

 彼女は微笑み、そう思い立つといつも、通っている花畑に向かって歩き始めました。

 その様子を見ていた灰色狼は、赤ずきんの行き先の花畑で、先回りをしようと考えます。



 ☆



 そうして、狼が待ち伏せしていると思わない、赤ずきんが花畑にやって来ました。

 赤や黄色、色とりどりの花が咲いていてとても、綺麗です。

「うわあっ、綺麗に咲いてる。お婆さんに何を摘んで行こうかしら?」

 彼女が、喜んで花を摘んでいると、後ろから灰色の狼が音もなく忍び寄り声を掛けました。


「お嬢さん、こんにちは。おいらはオオカミだよ」

 狼が挨拶をすると、狼が怖い獣とは知らない赤ずきんは、にこりと笑って返事をします。


「オオカミさん、こんにちは。私は赤ずきんって言うの」

「赤ずきん、花を摘んで、美味そうな物を持ってどこに行くんだ?」

「お婆さんのお家よ。ほら、綺麗なお花でしょ?」



 赤ずきんは、狼の鼻先に黄色い花を差し出しました。

 花びらが鼻先に当って、くすぐったくて、むずむずとします。


「ハッ、ハックショーイ!」


 狼は、たまらず大きなくしゃみをしてしまいました。

 その瞬間、狼の体が煙に包まれ、銀髪の男の子の姿に変化していました。

「オオカミさん、人間なの?」

 目を丸くした彼女は、狼にたずねました。



 金色の目、頭には三角の耳に尻には、ふさふさの尻尾が揺れています。

「おいら、狼の獣人タスタっていうんだ」

「へえ、そうなんだ」

 赤ずきんは良く分からないながらも、タスタの綺麗な銀髪と可愛い容姿に惹かれました。


「それより、おいらが獣人でいられる時間は、限られてる。狼の姿になると理性が保てないんだ。だから、赤ずきん。おいらから出来るだけ遠くに、早く逃げて!」

 狼の獣人タスタは、彼女の肩を掴んで焦りの表情で言う。



「うん…?なんのことだか、わからないけど。タスタが言うならもう、行くね」

 赤ずきんは、タスタを振り返りながら、足早にお婆さんの家に向かった。



 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


 〇登場人物紹介〇

 赤ずきん

 物語の主人公、お婆さんの家にお使いに行くことに。

 狼のタスタに出会う。


 ・赤ずきんイメージイラスト

 https://kakuyomu.jp/users/ca8000k/news/16817330667959098175


 オオカミ

 赤ずきんを狙っている狼、実は優しい性格の狼の獣人タスタと言う。

 赤ずきんに狼の自分から逃げるように伝える。


 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。


 次回は最終話、後編です。

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