45.ライバル
====== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。
中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。実は、元巡査部長。
中津[西園寺]公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。元は所員の1人だった為、調査に参加することもある。
高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。
泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
泊[根津]あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。同僚の泊と結婚した。
中津[本庄]尚子・・・弁護士。中津興信所と南部興信所の契約弁護士だが、中津警部と結婚、より中津興信所と関係が濃くなった。
服部源一郎・・・大文字伝子のコーラス部後輩。シンガーソングライター。
服部コウ・・・服部の妻。服部と音楽教室を営んでいる。
芦屋三美・・・芦屋グループ総帥。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==
※芦屋グループとは、正式には『芦屋総合産業自助共助組合』の通称である。
芦屋三美は、父の遺志を継いで『総帥』として束ねている。昔風に言えば、「コンツエルン」の企業集団だが、三美達の地親は、忌み嫌い、単にグループと呼ばせていた。
午前9時。中津興信所。所長室兼会議室。
「何か変だな、と思っていたら、高崎は新婚旅行だったな。どこだっけ。」
中津の問いに、公子が「函館。いいとこ一杯あるわよ。ツアーだけど、行ったことあるんだ。高校の時に。」と言った。
「函館って言えば、展望台で100万ドルの夜景を堪能できる『函館山』、五稜郭築城100年を記念して建設された『五稜郭タワー』、四季折々の美しい景色で、地元民と観光客に親しまれている『五稜郭公園』、ショッピングも楽しめる函館港の歴史の象徴『金森赤レンガ倉庫』。」
「なんかやけに詳しいなと思ったら、パンフ棒読みじゃないか。」と、泊が根津に言った。
「ああ。北海道行って、セックスしたい。」と公子が言うと、マルチディスプレイを見て、「あ。お義兄さん。」と罰の悪い顔をした。
「暢気な奴らだな。お盛んで結構だよ。この間の映画館の暴漢。ChotGPTの仕業、というか利用した奴が唆したらしい。『絶対捕まらない犯罪』ってな。捕まってるんだけどね。『そんな筈はない』なんて言ってるらしい。新里警視も呆れたと言っていた。『アメーバ野郎達』って毒づいていたよ。」
「『単細胞生物』か。面白いから、どっかで使おう。」
「健二。披露宴は終ったぞ。」
「そう言えば、披露宴、ぶち壊しだったなあ、敵襲で。こういう時、どうするの、EITOでは。」
「ああ、そういう事もあったわよね、でお仕舞い。やり直ししている時間はないからな。でも、特別ボーナスは出る。理事官からじゃなく、芦屋総帥からな。温情的だろ?」と、中津警部が言うと、「ああ。ウチは出ないからな。」と中津健二は返した。
「そこで、依頼だ。『冗談じゃないか』殺傷事件の目撃者捜しだ。」
「今、拘留中なの。ざっとお浚いすると、詐欺まがいのことをした被疑者左京恵美子が、言い争いの上、ナイフで被害者の小川八重子を刺してしまった。左京の通報で、駆けつけた警察官が緊急逮捕したけど、どうも不審な点がある、と言うの。左京は『冗談じゃないの。冗談も判らないの?』と言ったら、逆上した小川が台所のナイフを振りかざした、揉み合う内に、刺してしまっていた、と言っている。」
「最低の言い訳ね。大抵は男が使うものだけど、いけ好かないおんなだわ。」と、公子が言った。
「不審な点がある、って本庄先生のカン、ですか?」と泊が尋ねると、「鋭いね、泊君。所帯持つと違うね。」と中津警部が茶化した。
「『辻褄』が合いすぎている、って言うんだ。」
「詰まり、裏があるってことか、兄貴。」と健二が言うと、警部は頷いた。
「拘留切れまで2日間ある。まずは、左京の友人知人を当たって『性格』をあぶり出して欲しい。」
午前11時。
中津健二は、思い立って、芦屋総帥に連絡を取った。
正午。服部源一郎音楽教室。
大文字伝子の書道部先輩である、副島はるかは、再会後EITO東京本部準隊員として参加、弓道の師範もしていたが、EITOの敵ダークレインボウの奸計に填まり殉職した。
副島が経営していた書道塾は、殉職後解散、副島の自宅でもあった書道塾物件は芦屋三美が親族に掛け合って譲り受けた。
そして、大文字伝子の後輩夫婦に『無利子無担保無催促』で貸し与えた。
玄関には、服部夫妻が待ち受けていた。
リビングに泊と根津を通した夫妻は、教え子であった被疑者左京恵美子と被害者小川八重子のことを語り出した。
「小川さんは、幼少の頃、ピアノを習っていて、親族からピアノを譲り受けて、またピアノを弾きたい、と思うようになって、ウチに通い出したそうです。左京さんの方は音楽大学を受験したけど不合格、それでも高校から始めたピアノが弾きたくて音楽部に入ったけれど、指導出来る先輩がいなくて断念。暫く遠ざかっていたけど、ウチの看板を見て入塾したんです。でも、ご存じのように、残酷なことですが、幼少の頃たしなみがあるのとそうでないのは、歴然と差が出るんです。」と、コウが説明した。
「ギターとピアノの教室を始めましたが、僕はピアノが弾けないので、ギターの方を担当して、時々コウに手伝って貰ってはいたけど、コウがピアノを担当していました。ピアノは2人しか生徒がいなかったから、交互に練習させるのは無理があって、どんどん差が出てきました。大文字先輩の助言もあって、隔日の曜日に変更して、スムーズに行っていると思っていました。」
「そこで、事件ですか。普段から仲が悪かったんですか?」
「ええ。お互いにライバルとして敵視するようになっていたんです。それでもクリスマスに向けて、週一回賛美歌コーラスの練習を皆でやるようになってからは、目立った争いは無かったんです。」
そこへ、所長の中津から泊のスマホに電話があった。
指示通り、泊はスピーカーをオンにした。
「服部さん。リフォームする時、大文字コネクションの面々は敵に狙われる恐れがあるから、と防犯カメラをセキュリティーとして、警備会社のとは別に設置した話を聞いていませんか?」
「ああ、そう言えば・・・。何故?」
「本庄弁護士が、おかしいと感じた答が、防犯カメラ映像にあるんじゃないか、と思ったんだよ、泊。カメラの位置の地図をメールで送るから、調べてみてくれ。」
そう言って、中津所長は待機状態になった。
泊と根津は、服部夫妻に案内され、順に調べて回った。センサー式のカメラの映像データはSDメモリに格納されていた。時間が経ちすぎると、最初に戻って上書きされてしまうが、服部の書斎のPCで、それは、確認出来た。
録音室の、コーラス練習の休憩時間、被疑者と被害者はじゃれあい、ふざけ合って、キスまでしている。
それを見た4人は絶句した。
午後2時。
本庄のクルマは、警察に出発した。
午後4時半。中津興信所。所長室兼会議室。
マルチディスプレイに中津警部が映っている。
「取り調べに当たった、新里警視から連絡が入った。流石、『完落ちの女王』だね。殺された小川は恋人がいて、恋人と左京の、2つの恋愛を維持出来なくなり、自殺した。左京は、『自殺幇助』かと言うと、そうでもない。証拠隠滅の罪だ。尚子は、それと、『情状酌量』で裁判に臨むそうだ。」
マルチディスプレイから中津警部の顔が消えると、4人は溜息をついた。
突然、根津が声を上げた。「そうだ!!」
3人が驚いていると、「カマンベールチーズ、頼んでおかなくちゃ。」と根津が言い、「そっちかよ。」と、泊がまた溜息をついた。
―完―
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