44.エマージェンシーガール4号

 ====== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。

 中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。実は、元巡査部長。

 中津[西園寺]公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。元は所員の1人だった為、調査に参加することもある。

 高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。

 泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。

 泊[根津]あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。同僚の泊と結婚した。

 中津[本庄]尚子・・・弁護士。中津興信所と南部興信所の契約弁護士だが、中津警部と結婚、より中津興信所と関係が濃くなった。

 柴田管理官・・・警視庁交渉人。

 エマージェンシーガールズ・・・実は、愛宕みちる。


 ================================================

 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==


 午後1時。モール。シネコン映画館。

 中津達は、喫茶店アテロゴのマスターから貰った、割引券で映画を観ていた。

 いや、観ようとしていた。

 CMや案内映画が終った後、突如として、舞台に男達が現れ、その1人が、舞台上から映写室に向かって発砲した。

「おい。ライトを点けろ。」

 天井灯が灯った。

 昔の機材もあるが、昔と違って、映写はコンピュータによる自動制御で映し出される。

 万一の場合に備えて、係員が常駐する。

 今が「万一の場合」だった。

 貫通はしなかったが、映写室に拳銃の弾は刺さった。

「どうやら、舞台挨拶じゃなさそうだな。俺の好きな女優なのに。」と、中津健二が言い、DDバッジを押した。

 DDバッジとは、元々は「陸自バッジ」というバッジで、災害時の救助等に使用するものである。

 大文字伝子のグループが、度々災難に陥るので、EITOが再開発、関係各所に配られた。

 中津興信所の面々も全員持っている。

 所持者の位置情報が一元管理されている他、救助信号、即ちSOSを発信出来る。

 すぐに届いている筈だ。EITOには直接救助は依頼出来ないが、EITOを通じて警察に「110番」出来る。

 尤も、映写室のスタッフが事務所を通じて警察に通報はしている筈だ。

「男達はいい。女達は、前へ出ろ。」

 公子、本庄、根津は躊躇わず、舞台に移動した。

「既婚者だけどいいかしら?レイプする積もりなら、選び直してもいいわよ。」と、本庄は言った。

「人妻も悪くないな。」と、下っ端らしい男が言った。

 減らず口の男の他のメンバーが、タブレットで3人の女性を映した。

 どうやら、New Tubeのライブ中継のようだ。

 そして、リーダーの男が本庄に紙片を渡して、「これを読むんだ。」と、言った。

 本庄は、呆れた内容の紙片を、わざと『棒読み』した。

「内閣総理大臣市橋早苗さん。私たちは、あなたが総理を継続したことで、今、命の危険に晒されています。すぐに退陣して下さい。」

「復唱しろ。」根津と公子は仕方無く「すぐに退陣して下さい。」と言った。

「1時間待つ。すぐに退陣しろ。」

「言ってることが、めちゃくちゃだ。」

 中津のスマホが鳴動した。

「今、迎えを送ったから、時間稼ぎをしろ。」中津警部からのメールだった。

 中津は高崎と泊にメールを見せた。

「判った。総理とは親しいんだ。今、メールを送った。犯人の要求を呑んで、大人しく退陣してくれ、と。」

「お前、誰だ?」

「人質の1人の夫だ。俺も、恋女房を失いたくない。信じてくれ。俺からもお願いするから。」

「どうだろう?女3人人質だったら、『女性擁護団体』から、『いつも人質が女だ。男尊女卑だ』って言われるぞ。俺達3人が人質になるよ。ロープ、持ってるんだろう?拳銃も持ってるし。今の内に『人質交換』しないか?」

 男達は、協議をした。

 女達は、開放され、中津と高崎と泊は、強盗に縛られた。

「待たせたな。」

 言いながら、入場した者がいた。エマージェンシーガールだった。

 そのエマージェンシーガールは、あっと言う間に拳銃を持った犯人に構わず、トンファーを振り回して、強盗を倒した。

 エマージェンシーガールは、何故かコンパクトを出して、身繕いした。

 実は、コンパクトの中は『通信装置』だ。

 警官隊が雪崩込んで来た。

「ふうん、やっぱり、俺の出番はない訳ね。交渉人なのに。」柴田管理官は拗ねた。

 30分後、犯人が逮捕連行していく中、本庄は、「大丈夫なの?お腹。」とエマージェンシーガール姿の、みちるに尋ねた。

「これ、おねえさまの『予備』なの。だから、目立たない。今日のこと、警部が『責任は俺が持つ』なんて言うから、来ちゃった。内緒よ。」

 そう言って去って行った、みちるを中津興信所の面々は呆れて見送った。

「コーヒーでも、飲んで帰る?マスターの『おごり』で。」

 中津健二の提案に皆は賛成した。

 ―完―


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る