46.副総裁大姪誘拐未遂事件

 ===== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。

 中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。実は、元巡査部長。

 中津[西園寺]公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。元は所員の1人だった為、調査に参加することもある。

 泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。

 泊[根津]あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。同僚の泊と結婚した。

 岬山源太・・・白バイ隊隊長。中津警部の後輩。


 ================================================

 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==


 ※国立映画アーカイブ

 日本で唯一の国立映画機関として映画文化に関わるさまざまな所蔵品を公開している「国立映画アーカイブ」。所蔵する映画フィルムは日本映画7万本以上、外国映画1万本以上で合計8万本以上。ほかにも数万点にのぼる映画関係図書やシナリオ、ポスター、スチル写真などを保管しています。

 施設2階にある「長瀬記念ホール OZU」と地下1階「小ホール」では、監督や俳優、製作国、ジャンル、時代を切り口にした特集上映を行っており、有料で誰でも鑑賞可能。7階「展示室」では映画のポスターや写真、映画機材など、映画関連資料を展示しています。また、無料で入場できる4階の「図書室」では映画に関する文献を公開しています。

 ※警視庁女性白バイ隊は「クイーンスターズ」と呼ばれています。

 ※拙作では、女性白バイ隊員が多く登場いていますが、単に「白バイ隊員」と表現しています。


 午後-2時。国立映画アーカイブ。

 中津健二は、11月3日(文化の日)は0円と聞いて、3人の部下(高崎は新婚旅行中)を連れてやって来た。

 女性陣は、下の階の『恐竜』を見て、怪獣、怪獣と言ってはしゃいでいた。

 中津達は展示室の展覧会「没後50年 映画監督 田坂具隆」を見て、図書室にやって来た。

 皆、幸い図書室が苦手ではない。そのお陰で『目黒区図書館システム殺人事件』に出くわした。

 中津は、探していた本から、情報をノートにメモをした。図書館を利用したことのない人には理解出来ないだろうが、その図書館毎に、所蔵している書物は違う。国会図書館にないものが見つかる場合だってあるのだ。

 各員が調べ物を終って、午後4時には国立映画アーカイブを出た。今日は祝日。所謂三連休にもなっている。渋滞は避けた方がいい。今日は、高速を降りてからファミレスで食事にしようと言っていた矢先、運転している泊が「所長。煽り運転です!」と叫んだ。

 思わず3人は、後方を見た。

 追い越し車線を猛スピードで走るクルマがあった。

 だが、そのクルマは、中津達の車の前には出たが、こちらにはちょっかいを出して来ない。

 ちょっかいを出しているのは、前を走っていたマイクロバスだ。そうか、もう1台はマイクロバスの前だ。

 公子が警察に、中津が兄の中津警部に連絡している間に、案の定マイクロバスの後ろ側はクラクションを鳴らし、それを合図にしたのか、マイクロバスの前の車は減速しだした。

 典型的な『挟み撃ち』だ。

 中津は、こういう場合に備えてあったメガホンを取り出し、助手席から身を乗り出して、徐ろに警告した。

「そこの車両、〇〇〇〇〇〇のナンバーの車両、速やかに車間距離を取り、徐行しなさい!!」

「んだとぉ、らぁああ!!」前の車の後部座席から身を乗り出した男が、威嚇射撃をしだした。

「根津!撮影は?」「ドラレコ回ってます!!カメラも廻してます!!」根津は、泊の後ろの席だ。威嚇射撃は、バッチリ映せた筈だ。

 5分後、男性白バイ隊員が数名でやって来た。

 上り方向と下り方向の逆走で、煽り運転をしているクルマと被害者の車の間に割り込んで、無理矢理停車させた。

 急停車したので、マイクロバスの運転手は、エアバッグがハンドルと体の間に出てきた。

 白バイ隊員の隊長らしき人物が、コンコンと中津の車のドアを軽く叩いた。

「中津健二さんは?」「私です。」と言って、中津は助手席で手を挙げた。

「お兄さんは中津敬一警部?」「ええ。」「後輩です。よく弟さんの自慢話をされていました。110番と中津警部と両方に連絡されたのですね。」「ええ。」中津は名刺を出した。

 隊長は、警察手帳を示した。『岬山源太』と書いてある。どうやら、巡査部長のようだ。

「後の処理は部下達に任せて、先導しましょう。」「じゃ、次の出口で降ります。」

 午後5時半。

 高速を降りて、ファミリーレストランに入って、席に座った途端、中津のスマホが鳴動した。

 中津はスピーカーをオンにした。

「ご苦労さん。連中、常習犯かと思いきや、徹底黙秘。今日は、保育園の遠足で、『恐竜』を観に行く予定だった。ところが、熱を出した子が2人いてね。遠足は中止、予定より早く解散、帰宅させた。あのマイクロバスは無人だったが、本来のマイクロバスの方には、移民党麻生島副総裁の大姪さんが乗っていた。」

「兄貴、ひょっとしたら、ただの煽り運転じゃなく、誘拐未遂?」

「その通り。大文字君に連絡したら、麻生島副総裁から感謝の電話があったよ。」

「まさか、また闇バイト?」「いや、今回はエイラブだな。自殺しないように監視している。副総裁を操り、裏金を出させようとしたのかもな。ところが、連絡の行き違いがあった。そう言えば、『絶対成功する』とか『軽犯罪』とか言われて、その気になって闇バイトする『乙(おつ)世代』の若者の思考回路、どうなっているのかね。」

 中津が電話を切ると、公子が中津のハンバーグを横取りしようとしていた。

「煽り運転禁止!!」

 オーダーを持って来たウェイトレスが、ケラケラと笑った。

 ―完―


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る