40.大失態
====== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。
中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。実は、元巡査部長。
中津(西園寺)公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。元は所員の1人だった為、調査に参加することもある。
高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。
泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。
泊(根津)あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。同僚の泊と結婚した。
宮田孝之・・・元京都大学准教授。感染症学者。奸計に填まり、幽閉されていた。
中津(本庄)弁護士・・・中津興信所の顧問だったが、中津健二の兄敬一と結婚した。
田尾美緒子・・・白バイ隊隊長。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==
午前8時半。中津興信所地下。宮田ラボ。
「わざわざお呼び立てして申し訳ないです。先日のお礼もしないまま、だったので。加計さんに言われて。初めて思い出して。」と、宮田は中津健二と公子に深くお辞儀をした。
「もう、身内も同然なんだから、堅苦しいのは止めましょう。それより、次回から、講演は、あの形にすれば安全だと判って良かったですよ。」と健二は言った。
午前9時。所長室兼会議室。
「気さくな人よねえ、あなた。」「ああ、全然威張ってない。本物の学者は違うな。テレビやメディアに出る人は、薄っぺらい。」
2人の会話に呼応したかのように、マルチディスプレイに中津警部が映った。
「薄っぺらな仕事で悪いが、またあのホテルを監視してくれ。辞めた筈の『宴会部長』が、ホテルに出入りしていることが、夏目リサーチの調査で判った。久保田管理官は、EITOの敵ダークレインボーの、いや、ダーティー・ブランチの『枝』の1人ではないか、と睨んでいる。監視用のポイントは、公安で用意してくれた。頼んだぜ。」
「頼んだぜ?命令してるくせに。」と、健二はこぼした。
午前10時。エンパイヤーステーキホテル近くの民家。
「公安らしい、物件だな。どうやって確保するんだろう?」泊が言うと、「不動産屋だろうな。表向きに不動産屋やってる場合がある。公安がな。わざと『売れ残り物件』を残すんだ、『訳あり物件』としてな。幽霊出るとかさ。」と、高崎が苦も無く応えた。
「わあ。すげえな。」「日本はスパイ天国って言われるが、全体をカバー出来るだけの余力がないだけなんだ。新興宗教団体とか、活動が激しい団体とか、対象が多すぎるんだよ。だから、バイオ兵器の事件が起った。」
「あ。出てきた。あの会見で出ていた宴会部長だわ。ボーナスはまだ時期が早い。辞めた会社に足繁く通うのは、確かに変ね。」と、根津が言った。
「所長に連絡してくれ、泊。」「了解。」
午前10時10分。ホテルの第二駐車場。
健二は、ターゲットの宴会部長が出てくると、公子にゆっくりとクルマをスタートさせた。
第三高速に入ると、あるクルマが煽り運転のクルマに挟まれていた。
健二は、そのまま通り過ぎるように指示したが、公子は無視して間に割り込んで、煽り運転のクルマを停車させた。被害者のクルマから、女性が引きずり出されたからだ。
一瞬で、煽り運転のクルマの2人組を健二と公子が倒し、110番した。
間もなく、女性白バイ隊隊長田尾がパトカーと共に到着した。
公子が状況を説明していると、健二のスマホが鳴動した。
「今、どこだ?」健二が煽り運転のクルマの事を説明すると、「やられたな。お前ら、『囮』使って『巻かれた』んだよ。」「やっぱり。」
田尾が会話を聞いていたらしく、「被害者も加害者ですね。」と、言った。
彼らは全員、逮捕連行された。
健二は、仕方無く、事務所に帰ることにした。
高崎達にも引き揚げるように指示をして。
そして、確信を得た。見抜かれていたのだ。出し抜かれたのだ。
大失態だ。もう宴会部長は、あのホテルには来るまい。
何らかのコンタクトは、手段を変えるだろう。
正午。中津興信所。所長室兼会議室。
本庄弁護士が待っていた。
「お寿司、嫌いな人、手を挙げて!!」
皆、黙々と食べ始めた。
お茶は、妙に熱かった。
―完―
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