35.珍客万来

 ====== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。

 中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。実は、元巡査部長。

 中津(西園寺)公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。元は所員の1人だった為、調査に参加することもある。

 高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。

 泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。

 泊(根津)あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。同僚の泊と結婚した。

 中津(本庄)尚子・・・弁護士。中津警部の妻になった。

 高崎(馬越)友理奈・・・空自からのEITO出向。結城の仲立ちで高崎とした。


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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==


 午前9時。中津興信所。所長室兼会議室。

 皆で会議を始めようとしたら、玄関を開ける音。

「閉めとけよ。」、と泊が根津に注意した。

「閉めたわよ。」、と根津が泊に口答えした。

 根津が、玄簡に出向いた。

 玄関の手前は執務室だが、報告書を書く時以外は使っていない。

 勿論、防犯カメラはある。

「あのー。お願いしたいことが・・・。」

「ごめんなさい。表に貼りだしてある通り、弁護士の紹介がない方は、お断りしているんです。お困り事や相談事は、警察署の生活安全課か、余所の興信所をお尋ね下さい。」

 根津は、用意してある地図を差し出した。よくあることだから、警察署と、1キロ圏内の余所の興信所が載っている。

 ヘンな顔をして、男は去って行った。

 根津が郵便受けを確認すると、隅に何か傷つけようとした形跡があった。

 空き巣狙いは、『調査係』がいて、郵便受けや表札、門の目立たない所に印を付ける。

 老人しかいない、とか家人が留守をしがちだとかの印を付ける。

 中津健二は、手口を知っているから、郵便受けの周囲にポマード(チック)を塗っている。これでは、ペンで印を書くことも釘で傷つけることも出来ない。

 根津は、健二に報告して、自分のPCで防犯映像を確認した。

「いました。奴じゃないわ。『斥候』?所長。やっぱり玄関はタイマーロックにしましょうよ。」

 近寄ってきた健二は、「皆、来てくれ。説明が遅れて済まん。明日から玄関はタイマーロックになる。解除ボタンは、ロッカー左上の『巴』マークのボタン。」と言った。

「以前、根津が提案していた、ロックだ。入る時は、スマホのアプリで出来る。EITOのセキュリティーは抜群だ。俺も今朝聞いたんだ。」

「ひょっとしたら、先日の改造で?でも、いつ依頼したの?」

「違うよ、公子。24時間監視されている、って言ったろ?あの声までな。」

 健二の声に皆、げんなりした。

 今度は、玄関チャイムが鳴った。

「切っとけよ。」「あ、忘れた。」と、公子は舌を出した。

 留守が多い家は、チャイムの電源を切っておく方が却って安全である。受話器側の電源だ。音が鳴って誰も出ないことが頻繁なことは、家にいない確率、即ち「不在証明」が出来てしまうのだ。

 皆、奥に移動して、今度は公子が出た。「はい。」

「あの、中津興信所って書いてありますけど・・・。」

 公子は、根津がやったように、地図を渡して他を当たるように諭した。

 高崎は、防犯カメラのバックアップ映像と、たった今の玄関の映像を見比べた。

「郵便受けに印付けようとした奴だ。グルだな。」

 1時間後。表が騒がしくなった。カメラと直結する確認モニターに警察官に職務質問され、逮捕連行されるのを確認した健二は、兄の中津警部にモニターを繋いで、報告した。

「まあ、EITO関連ではないとは思うが、普通の家なら、空き巣か強盗だな。」

 健二達は、念の為、表を確認し、玄関を施錠し、チャイムを切った。

 更に、1時間後。正午。会議室。

 マルチディスプレイに中津警部が映った。

「偶然だと思いたいな。強盗グループだ。女性の留守番だけだと思って強硬手段を使ったと言っている。今のところ、ピスミラやダークレインボーとの繋がりは見えない。一課は喜んでいるよ。先日、葛飾区で起った事件と同一犯だ。」

 皆で蕎麦を食べながら、「あの声って・・・プライバシー、ないの?」と、健二に公子は文句を言った。

「偉いさんの前で、『どこでセックスしたらいいの?』って言うデリカシーの無さも、どうかと思うよ。」

「正直なお前が好きだよ、って言って口説いたくせに。」

「口説いたんじゃ無くて、お前が勝手に・・・。」

「正直なのも、困ることがあります。」と、高崎は、先日の婚約者の友理奈の発言を振り返った。

「呼んだ?」と、トイレから本庄尚子弁護士が現れた。

 泊は、蕎麦が喉に詰まり、むせた。

「トイレがお勝手口、っていうのも特殊だけど・・・。」と、根津が呟いた。

 電話が鳴った。

 皆、食事中なのを見て、本庄は大きな鞄を置いて、電話に出た。

「はい。こちら中津興信所。」

 ―完―


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