36.医療連携組織

 ====== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。

 中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。実は、元巡査部長。

 中津(西園寺)公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。元は所員の1人だった為、調査に参加することもある。

 高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。

 泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。

 泊(根津)あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。同僚の泊と結婚した。

 中津(本庄)尚子・・・弁護士。中津警部の妻になった。

 高崎(馬越)友理奈・・・空自からのEITO出向。結城の仲立ちで高崎とした。

 池上葉子・・・池上病院院長。

 愛宕みちる・・・EITO副隊長。今は産休中だが・・・。

 新里警視・・・警視庁テロ対策室勤務。取り調べは過酷で、必ず『完落ち』すると言われている。


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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==

 ==エマージェンシーガールズとは、女性だけのEITO本部の精鋭部隊である。==


 午後1時。渋谷区。LINE CUBE SHIBUYA(渋谷公会堂)。

 ※いろんなイベントを行う渋谷公会堂は、LINE CUBE SHIBUYAとして、2020年に再出発した。


 池上病院院長、池上葉子は、コロニーで利権に走った「大日本医師会」や「全国保険医師連合会」を「日本医療者連盟」に統合・連携させる医療ネットワーク「医療者ネットワーク(Medical Worker's Net)」を発足させる為、多くの医療者、政治家を招いて講演を行った。中津興信所は、本庄弁護士の依頼により、池上医師の護衛の一部を行うことになった。

 元々、「日本医療者連盟」には,池上医師の個人的医療ネットワークが参加していたのだが、コロニーが流行したとき、製薬会社に天下りした厚労省OBと「大日本医師会」や「全国保険医師連合会」を「日本医療者連盟」とマスコミによる「患者コントロール」によって、日本の医療を大混乱に導いた。

 流行病に対応仕切れなかったことを憂慮した池上医師は、遂に立ち上がった。

 次の流行病に『同じ過ち』を犯さない為に。

「コロニーは、厚労省の指揮下で、全医療者が一丸となっていたら、もっと早く収束出来たのです。医療逼迫していた事実はありません。『患者のたらい回し』『医療逼迫』等は、マスコミが描いた『ドラマ』でした。『医療専門家委員会』は、肝心の感染病の専門家を除外して発足し、厚労省は、発言する時間を、たった10分しか与えない会議を重ねました。先日、宮田先生が幽閉されていた場所から救出されました。何故、拉致され幽閉されたか?ビールスが人工のものであることを実証実験したから、邪魔になったから、ある大きな組織が動いたのです。マスコミの『情報操作』は、日に日に腕を磨いてきました。ここにおられる、『免許返納という薬害隠し』を提唱された沢秀樹先生も、高齢者が事故を起こす度『免許返納すべきだ』と高齢者差別を継続してきました。クルマがなくては、食料を貯えることすら出来ない高齢者の生活を全否定してきました。沢先生によって、高齢者が起こす交通事故の大抵は、『せん妄』という意識障害だと明らかになってきました。大きな医療組織は、ずっと無視してきました。その原因は『医療過剰』であり、高齢化が原因ではありません。アメリカの高齢者の交通事故が少ないのは、『皆保険制度』による、『医者が儲かるシステム』がないからです。高齢者が交通事故に遭うと、殊更に『ヘルメット着用義務を守っていたか』をアピールしました。ヘルメット着用していなくても、轢き逃げ事故に遭うと、結果は同じです。運転免許返納以外にも幾らでも手立てがあっても、厚労省もマスコミもだんまりです。我々が作ろうとしているのは、政治団体ではありません。患者を救う為の『連携組織』です。」

 その時、会場から男が立ち上がり、「そんな筈はない。これは立派な政治活動だ。テロリストに成敗を!」と言って立った男が、ナイフガンで壇上の池上を撃った。

 ナイフガンから発射されたナイフは、池上には当たらなかった。

 池上が使っていたテーブルの天板が丁度『忍び返し』のように垂直に開いたからだ。

 聴衆が、改めて見ると、テーブルには、マイクもなければ、お茶や水もない。池上は、テーブル下のストロー付き水筒で喉を潤していた。そして、マイクは、スタンドマイクが周囲に立っていた。

 ナイフは天板に刺さっただけだった。

 そして、男にブーメランが跳んできて、前頭部に当たり、投げた人物に返って行った。

 エマージェンシーガールズだった。

「おまいう。お前こそテロリストだ。」

 警備に当たっていた、警備員の格好の女性が、男を投げ飛ばし、手錠をかけた。

「お前、警備員が・・・。」と、男は言いかけたが、警察手帳を見せられ、観念した。

「連行して。後で、可愛がってあげるわ。」新里は、ニヤリと笑った。

 この模様は、New Tubeで配信され、夕方のTVのニュースで流れた。

 午後5時。中津興信所。所長室兼会議室。

「賊がどこから侵入したか、分かりましたよ、所長。」

「別のホールの、別のイベント会場の、大道具搬入口。」

「なんでそれを?」

「ご苦労様。EITOが仕掛けたカメラ。ただの講演じゃなかった。新しい敵をおびき出す囮でもあったんだ。事後処理を君たちに託したのは、警察やEITOを前に出さない為だ。」

 マルチディスプレイの中津警部が言った。

「小谷は、義理があるのかどうかは知らないが、『先輩幹』の手掛かりを遺して行かなかった。だから、仕掛けた。」

「あの、エマージェンシーガールズは?」「愛宕みちる、その人さ。根津の後ろに立っている。」

 中津健二の言葉に、根津が後ろを振り向くと、愛宕みちるが、お腹をさすりながら、会釈をした。隣には、本庄弁護士が立っていた。

 ―完―


 ※このエピソードは、「大文字伝子が行く304」に続きます。

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