34.お化け屋敷殺人事件

 ====== この物語はあくまでもフィクションです =========

 ============== 主な登場人物 ================

 中津敬一警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。

 中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。実は、元巡査部長。

 中津(西園寺)公子・・・中津健二の妻。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。元は所員の1人だった為、調査に参加することもある。

 高崎八郎所員・・・中津興信所所員。元世田谷区警邏課巡査。

 泊哲夫所員・・・中津興信所所員。元警視庁巡査。元夏目リサーチ社員。

 泊(根津)あき所員・・・中津興信所所員。元大田区少年課巡査。同僚の泊と結婚した。

 中津(本庄)尚子・・・弁護士。中津警部の妻になった。

 みゆき出版社編集長山村美佐男・・・大文字伝子と高遠が原稿を収めている、出版社の編集長。

 高崎(馬越)友理奈・・・空自からのEITO出向。結城の仲立ちで高崎とした。


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 ==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==


 午前9時。中津興信所。所長室兼会議室。

 本庄弁護士が、トイレから出てきた。

「先生、下痢ですか?いつもトイレから現れるけど・・・。」

 根津は、思い切って尋ねた。

「来たついでに用は足すけど、下痢じゃないわよ。あ。あきちゃん、知らなかった?ひょっとしたら、泊君も。」

 本庄は、閉めたドアをもう一度開けた。根津と泊が興味深そうに近寄った。

「スイッチは数カ所あるんだけどね。」本庄は、ドアの上の方のスライドスイッチをずらした。すると、トイレの奥の掃除用具入れが自動的に開いた。

 中津健二が解説をした。

「まっすぐ行くと、遠い遠い『もう一つの玄関』に通じる。非常用だけどね。裏の『EITO秘密基地』への隔壁以外にも脱出出来るんだ。それと、この途中のドアを開けるとシェルターになっている。前にも言ったように、大文字さん達が住んでいた頃から、ここは『からくり屋敷』なんだ。隔壁が『どんでん返し』になっているのは、知っているよね。EITOの下請け機関でもあるウチの興信所には、秘密がイッパイあるのさ。」

「所長。『からくり屋敷』というより、『お化け屋敷』みたいに感じるんですけど。」

「カンがいいわね、高崎君。今回の依頼は、使命は、『お化け屋敷』殺人事件よ。」

「なんか映画みたいな展開だな。」と、根津は言った。

 皆で会議室に戻り、本庄は説明を始めた。

「10年位前なんだけどね。京都のテーマパークのお化け屋敷で、空手五段の男が、酔っ払って、お化け屋敷でお化けを蹴って、お化け役の演者を蹴ったの。演者は大怪我してね。運営会社を相手に裁判して示談にしたの。で、演者と会社は賠償金を支払われた。」

「それって、演者の人が損してません?」「そう、そこなのよ、公ちゃん。その蹴った男が、先日惨殺死体で発見されたの。今、公ちゃんが言ったように一方的に損をした、当時の演者、池端明日香が参考人として呼ばれた。」

「本当は、被疑者、ですか。先生。」と、泊が言った。

「池端は、その後、その男、中大路彰を提訴しているけど、却下された。」

「当然、恨みがあるだろうと・・・。それって。」

「そう、思い込み捜査だな。取り調べ担当は、活気盛んな五反田署の山田宏一巡査部長だ。」と、いつの間にかマルチディスプレイに映った中津警部が言った。

「じゃあ、池端のアリバイですか。それにしてもなあ、格闘技の心得のある人は、特技で素人に怪我負わせちゃいけなかったんじゃなかったのかなあ。幾ら『お化け屋敷』でも、言わばフィクションでしょ。本物のお化けなんていないんだから。大怪我したのは池端だから、池端が訴えて勝訴、が筋でしょ。」と、高崎が珍しく興奮して言った。

「実は、池端のアリバイだけじゃないんだよ、健二。その山田巡査部長の身辺調査も必要なんだ。というのは、起訴立件が多すぎる。それと、中大路の評判だ。」

「成程ね。単なるコロシじゃないってことか。」

 健二は、手分けして調査した。

 先ず、何故空手五段の男が『お化け屋敷』に行って、『怖さのあまり』蹴ったかだ。

 中小路と同じ道場の空手有段者から証言が取れた。借金があった、と。

 事件の時、警察がろくに調べなかったのか、中小路はギャンブル依存症で、同じ依存症のパチンコ仲間に巡査がいた。その事件は、巡査が作ったストーリーに基づいていた。

 その巡査が、後に巡査部長になった、山田だ。高崎と泊は、そのことを報告した。

 公子と根津が、池端のアリバイを調べたところ、殺害された当日、池端は『ウーマン銭湯』にいた。ウーマン銭湯は、大文字伝子が名付け親になった、新しい形の、浴場だ。

 近頃は、自称『女性』の者が無理に入場しようとしてトラブルが起きているが、その浴場では、100%に近い確率で起らない。

 何故なら、DNAや温感センサーまで用いて、入場チェックが行われるからだ。

 そして、完全予約制で、抜けられそうな『裏口』は無い。セキュリティーシステムも万全で、しかも、その時間帯には、EITOのエマージェンシーガールズも利用していた。

 利用客のデータは全て記録される。

 それ以上は調べる必要がない。根津と公子は意気揚々と引き揚げて来た。

 健二は、山田が競馬場から出てきた所に、わざとぶつかった。

「おい、気を付けろ!」「気を付けてよく見たら、山田巡査部長ですか。相棒の刑事が探してましたよ。」

 そこに、中津警部と、山田の相棒の灰田佳津夫警部補がやって来た。

 灰田は、有無を言わさず山田に手錠をかけた。

「やり過ぎたんだよ、お前は。」中津警部の言葉に、逃げようとした山田は、三人がかりで押さえつけられた。

 連行されたのを見送って、健二は事務所にかけた。

 留守番をしていた、本庄が電話に出た。

「こちら中津興信所。」

 ―完―



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