後の『ひな祭り』
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
中津健二・・・中津興信所所長。中津警部の弟。
西園寺公子・・・中津健二の恋人。愛川静音の国枝大学剣道部後輩。
中津警部・・・警視庁テロ対策室所属。副総監直轄。
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==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指し、民間テロ対策組織のことである。
==MAITOとは、Mighty Air Self-Defense Force Independent against Terrorism Organizationを指し、空自テロ対策組織のことである。
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「あかりをつけましょ ぼんぼりに」
3月4日。午前0時を過ぎたばかりだった。
妙な歌声に、目を覚ました中津健二は、中津邸の前を通り過ぎる『おんなの集団』を観た。
皆、和服を着て、手燭台を持って歩いている。手職台(てしょくだい)とは、持ち歩きに便利なように柄をつけた燭台のことである。しかも、火が点いていない。街灯の明りの中の行進だ。
異変を感じた中津は、素早く着替えて、後を追った。
「どうしたの?あなた。」妻の公子は、追いかけて来て、囁いた。
中津健二は、中津興信所所長で、大学生でもある、妻の公子は興信所所員で、押しかけ女房だ。
「犯罪のニオイがする。」「ニオイ?そんな特技あるの?聞いて無かったわ。」
「たとえだろ。こんな夜中に異様な集団の行進だ。警察は事前の犯罪は防げない。だが、EITOに連絡しておけ。」
行進は1キロ続いた。到着したのは、廃寺だった。新興宗教か?
境内を抜け、お堂を覗くと、あにはからんや、袈裟でもない、スーツでもない、妙な格好をした男が覆面をして、奥に座っている。その向こうには、祭壇に見立てた、ひな壇がある。照明は、大小の行灯(あんどん)だ。
まるで、ひな人形だ。目を凝らして見ると、ひな人形かと思った物体は人間だった。お内裏様から順に並んでいるが、何かで固定された、おひな様コスプレの人間だった。
妙な男のすぐ前には、木の棺があった。こちらには、『本物の』ひな人形が無造作に放り込まれている。
何やら呪文を唱えていた男は、「レディ、ゴウ!」とかけ声をかけた。女達は、我先に手燭台に行灯から火を移し、棺に手職台を放り込んだ。
あっと言う間に、火は棺を燃やし始めた。
その焔の揺らめきで、棺から導火線が繋がっているのを確認した中津は公子と、その場を離れた。
大爆発が起こった。そこへ、オスプレイから投下された『消火弾』が落された。
MAITOのオスプレイではなく、EITOのオスプレイか。消防と警察のサイレンが鳴って、こちらにやって来る。
中津は、状況を、EITOの大蔵と、消防官、警察官に説明した。
明け方のニュースで、犠牲者が23人と発表された。
人数からすると、男雛、女雛、三人官女、五人囃子、右大臣、左大臣、手職台を持って行列した十人、そして、呪文唱えていた男だろう。
この段階では、不思議な事件でしか無かった。
翌日。午後。中津興信所。所長室兼会議室。
「ひとつ確認しておくが、健二。呪文男の顔は見なかったんだな。」「ああ、後ろ向きだったからな。」
「池上病院の蛭田教授によると、ある薬物によると、というより麻薬って言った方が早いか。要は麻薬でトランス状態になったと考えられるらしい。ひな祭り行列は。で、暗示をかけられていた。
闇サイトで、「不要になった『ひな人形を高価で買い取ります』という募集があったらしい。ひな壇の男女は、それに釣られて集まった。高価買い取りはいいが、その後眠らされ拉致されて、自分たちがひな人形にされてしまったらしい。これは、怪しんで辞退した人から証言が取れた。酷いことしやがる。全員、生きたまま焼かれた。行列おんな達は、捜索願いがだされていたよ。それと、呪文男だが、身元不明だが、左腕にマングースの入れ墨があった。つまり、酷いことしたのは・・・。」
「コブラ&マングース。」「そのとおりだ。進展があったら連絡するよ。厄介な敵だな。」
―完―
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