銀葉の館
白日夢
「ジョシュア先生、ぼくのにいさんはどこにいるんですか」
「なんのことかな?」
「先生は、ぼくのにいさんなんでしょ」
「きみのにいさんなら、とっくに存在をなくしてしまったよ。それできみが作り出されたんじゃないか」
「それならどうして先生は、ぼくの目の前にいるのですか」
「それはわたしがきみだからだ」教師の姿がぼくに変わる。「わたしはここに残るから、きみが代わりに消えるんだ」
教師だったぼくの手が伸びて、ぼくの首を締め上げる。
あんなに自分を消してしまいたかったはずなのに、いざ消されるとなると怖くて仕方がない。ぼくは懸命に伸し掛かる体を退けようとした。
「どうしたの、ミック」
ラファエルが、上から覗き込んでくる。ぼくは大きく息を吐いた。
「夢、見てた。ラフがあんまり気持ちよくさせるから、眠っちゃったらしい」
「それにしては、気持ちよさそうじゃなかったよ」
「夢のせいさ」
「どんな夢?」
ぼくは答えず体の位置を入れ替え、ラフの耳朶を噛みながら囁いた。
「ヒュプノスにも、これから夢を見させてあげるよ」
カタバミの茂みの中でラフの形の良い足を肩にかけたとき、目の端をひっそりと猫のアルが過ぎて行った。
きっと、噴水の水を飲みに行くんだ。アルは汲み置いた水より、流れる水の方が好きだから。黄泉から湧き出る噴水は彼の格好の水飲み場だった。
ぼくはラフを抱きながら考える。アルは、元々は教師の猫だったのではないかと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます