銀葉の館
秘密 フランス菊
ラファエルが庭で兎といっしょにいるのを見掛けた。森の湖の三羽のうちの一羽だ。
湖の兎は時々、少女の姿になる。
兎の少女は、ラファエルの首に両腕を回しキスをした。
ラファエルは、ぼくが窓から見ているのに気が付かなかった。だけど兎はラファエルにキスをしたあと、窓を見上げ、一瞬ぼくと目が合った。
それから兎の少女は、ラファエルの手を取ると
ラファエルは夕食の時間になっても、いっこうに姿を見せなかった。
アンジュが仕事で不在のときは、この館の主人は弟のラファエルだ。館の主人が来なければ、食事は始まらない。
召使いたちも普段通りで、慌てる素振りさえない。
ぼくはラファエルがやって来るまで、食卓の椅子に座って待っていた。
いつだって、ぼくには食欲なんてなかったから、どれだけ待っていたって平気だ。今夜の食事がなくなったって構わない。
ラファエルが紅潮した頰でやっと食堂に入って来たときも、ぼくは何も尋ねなかった。彼の髪に
ラファエルはいつもより食欲旺盛だった。
彼は気が付いているのだろうか。今夜の料理が兎のパイだということに。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます