第2話

ふぅ、さっきの奴で最後かな。そっちは、ユリ?

「終わったわよ」

うんうん、今回も怪我無く、しかも早く片付けられた。だいぶ慣れてきたね

「そういえば蛇みたいなやつ残ってると思うんだけど倒した?」

え、ユリがやってくれたんじゃないの?

「最後じゃないじゃん・・・。手分けして探そう、すぐ見つかるでしょ」

それじゃあ、私こっちね!

「待って。見つけても無理に戦わないで、私が来るまで待って」

大丈夫。私一人でできるって

「何かあってからじゃ遅い、仲間なんだから頼って」

わ、わかった、そうするよ。ユリも気をつけてね

「そっちもね」

・・・あれから数日経ったけど、変わったな~ユリ

前はあんなに親身じゃなかったんだけどな。いやー変わったなーうんうん

さて、残りを片付けますか!

っと・・・あっちで声がする

誰か―、いますかー!いたら返事をっ・・・

「・・けて、誰か・・・あああ・・・」

・・・え?

「こ・・・だれ・・・」

この声って・・・!

「・・・な、来るなって!!」

うそ、うそうそうそウソ嘘っ

「いやだ、死にたくないぃ・・・」

・・・!!そこかっ!

「ぐおおおおおおおおおお!!」

先輩に、さわるなぁああああああああ!!!

「・・・・ぎぃ、がぁ・・・」

はぁ、はぁ、はぁ・・・

「ううううう、ひっく、ひぅ・・・」

もう、いなくなったから、安全なので。

「・・・・・」

あ、あの、だ大丈夫ですかっ・・・ぁ!

「ひぃ、ひぅ。こ、恐かったよぉ」

大丈夫だから、抱き着くのは・・・

「ありがとうぅう、助けてくれてぇ、ありがどうぅうう・・!」

・・・・せんぱ

「ほら、離れて」

え?

「うぇ!?くび、くるじい・・・!」

「ごめんなさい。でもまだ怪物がいるかもしれないから離れた方がいいかも。あと邪魔」

「ええ!す、すみませんでしたもうどっか行きます!!」

あ、えっと!き、気を付けて・・・

「あの!」

はい?

「助けてくれて本当にありがとうございます!!」

・・・うん、さよなら。またね

「・・・またねって何よ」

え!?私、またねって言ってた?

「言ってた。また被害に遭わせるなんて意外とひどいのね」

そういうことじゃなくてっ!そうだ、まだ怪物残ってるんでしょ!倒しにいこ、ほら!!

「ローズが倒したので最後よ、さっきも言ったでしょ」

えっ。な、なんで嘘ついたの?

「男に襲われてたでしょ。あんた優しいからそこを付け込まれ」

襲われたわけじゃない!!

「・・・」

死にそうになってて冷静じゃなかったの、襲われとかじゃないっ、ただ抱き着いてきただけ。何もされてないしそんなことする人じゃない!

「・・・ごめんなさい、面白くない冗談だったわ。不快に負わせてしまったわね」

・・・二度と言わないで

「ええ、言わないわ」

・・・・・・

「・・・今日は解散しましょう。なんか疲れちゃった」







昨日はユリと一緒に帰らなかった

冗談だろうけど先輩のことをバカにした彼女を許せなかった、のだと思う

家に帰って自室に戻った時、ユリに怒った時の光景が頭の中で何度もよぎった

あんな大きな声出るんだ私と驚いたし、いつもだったらうまく返せたのにと嫌な気持ちでいっぱいになった

ご飯も美味しく感じなかったし、色々考えてしまってよく眠れなかった

唯一良かったなと思うことは今日はもう怪物が現れそうにないということ

今日登校してから大分経つけど、放課後の今になっても現れなかった

だから今日は珍しく部活の練習に参加している。みんな珍しそうな顔をしていたが久しぶりだねと声をかけてくれた

その中には昨日助けた先輩もいた

笑顔で話しかけてきたあの人をまともに見れなかった

先輩が怪物に襲われたという話は部内で広まり、みんなが大丈夫だったかと彼と話していた

楽しそうだなぁ・・・

それを私は片づけをしながら聞いていた

「昨日現場にいたんだってな、大丈夫だったのかよ」

「怪我とかないんですかー」

「大丈夫、大丈夫。ほら、頬がちょっと切れただけだから」

そう言って先輩は頬についた切り傷を笑いながら見せていた

大したことなかったよというパフォーマンスなのだろう

昨日わんわん泣いてくせに

・・・何様だろ私

怪物を倒して人助けをした。いつものことだ

その中に昨日たまたま先輩がいただけだ。いつもと変わらないんだ

だから、私が助けたのになんて考えるな

・・・片付けて早く帰ろう

「女の子が助けてくれたんだ」

・・・・・・

「いつも怪物を倒してくてるっていう。見たのか?」

「どんな人だったの?顔は見た?」

「二人いてどっちとも顔を隠してたよ」

「噂だと不仲でどっちが怪物多く倒せるか競ってるって聞いたけど本当か?」

「どうだろ。でもそんな険悪そうじゃなかったけどな」

「私たちと年齢同じくらいって聞いたんだけど」

「いやそれは嘘で本当は20代ぐらいらしいぞ」

そんなわけないでしょ

「実は小学生ぐらいで魔法かなんかで大人化してるって話聞いたわ」

そんな力私たちにないって

「か、怪物は、本当はその彼女たちが生み出してるんじゃないのかな?」

・・・はい?

「げぇ、まじかよ!」

「こわぁ!じ、自作自演てっこと?」

そんなわけなくない?

「でもあいつらって攻撃とかしてくるよな?警察とか呼んだ方がいいよな」

「ばかじゃないの?警察なんかじゃ太刀打ちできないって」

「じゃあどうしろっていうだよ!」

「化け物の倒し方なんて知らないわよ!」

・・・全部本人に聞こえてるんだけど?

そう言えたらどれだけ楽だろうな

ねぇ、私たちはみんなのために怪物を倒してるんだよ、守ってるんだよ

なのにそんな噂を信じるの?私たちを悪者にしたいの?

守られたくないってことなの?

じゃあ怪物に襲われちゃえばいい

勝手に頑張ればいい、勝手に助かればいい

どうして私たちのことを悪く言う人たちを助けなくちゃいけないの?

どうして弱いくせに声だけ大きい彼らを助けなくちゃいけないの?

ああ、なんか馬鹿らしくなってきた

ああ、イライラしてきた

なんでこんな人たちを今まで守ってきたんだろう

この人たちのほうが悪者じゃない?この人たちのほうが危険じゃない?

それなら、それなら、それなら・・・

私が、あなたちを、

「絶対にそんなことはない」

・・・・・・

「怪物を作ってるとか、自作自演だとか、そんなわけないじゃん」

「でもさぁ」

「でもも何もない。僕はその人たちに命を助けてもらったんだ。すごい感謝してるんだ。あの人たちのおかげで僕は今ここに立っていられるんだ」

・・・・・・

「あの赤い人のおかげで、僕は今生きてるんだ」

・・・・・・!

「命の恩人を悪く言わないでほしい、ね?」

「すまん・・・」

「確かに変なこと言っちゃったね、ごめん」

「でもそんな耳赤くして言わなくても」

「え。み、耳赤いかな?

「ほんとだすごい赤い!もしかしてその人のこと好きになっちゃった!?」

「なんでそうなるんだよ、こら!」

・・・・・・

この人を助けて良かったと心の底から思った

この人を良い人だと信じていて良かった

ユリ、わたし、やっぱり先輩のこと好きだよ

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助けてもらった命で恋してる 夢価値 @mukachi_4569

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