第203話 相談
「その後どう? なんか苦労してない?」
「特に何かあるって訳じゃないよ。職場の先輩達に揶揄われたりするくらいかな」
「それなら良かった」
「最近男らしくなってきたと自信を持ってきたところだったのになぁ…」
Vtuberの面接も問題なく終わり、後は諸々の手続きが終わり次第、いつでもデビューは出来るようになった。
百々女鬼さんは個人から事務所所属になるだけだけど、それはさておき。
今日は忙しい中の束の間のオフ。
地元千葉に戻って来て、曽川君と会っている。順春砲で何か変な被害が出てないかなと思ってたけど、特に問題なく過ごせてるらしい。
曽川君は今、父親の建設会社に就職して働いている。将来的には管理者的ポジションに就いて、ゆくゆくは父親の跡を継ぐんだろうけど、その前に現場の苦労とか、どういう仕事をしてるのか知っておかないといけないって事で、普通に現場で働いてるらしい。
現場仕事をして、多少筋肉も付き、仕事時の格好も現場の兄ちゃんらしく男らしい感じになってたから、自分の身体の変化に自信を持ってきたところでの意味の分からん順春砲。
男の娘イメージを払拭するどころか、より定着する感じになってしまった。
まあ、本人が本気でそのイメージを払拭したいと思ってるなら協力するが、別にそこまで気にしてる訳じゃないっぽい。
気にしてるならコスプレの時に女装なんてしないだろうしね。今日の格好も男とも女とも解釈出来る格好だしさ。
「それで結婚する決心がついたって?」
今日、わざわざ千葉に戻って来たのは、曽川君から相談があるって言われたからだ。以前、順春砲の写真が撮られた時、彩綾さんの誕生日プレゼントを買ってる時だな。その時にも軽く相談は受けてたけど、とうとう決心がついたみたいだ。
「うん。彩綾さんがプロポーズを了承してくれたらだけど…」
「するだろうよ。あの人が拒否する姿なんて想像出来んぞ」
「そうだと良いんだけど…」
多分、鼻血出して喜ぶんじゃないかな。鼻血出して幸せそうな顔でぶっ倒れるまでがワンセットだ。
「そこまで決めてるなら、今更俺に相談するような事ってなくない? 後は行動するだけじゃん」
「いや、その、心構えというか…。谷君は中村さん--今は谷さんになるのか。プロポーズした時はどうだったのかなって」
「どうもこうも…見てたよね?」
俺のプロポーズは水晶浜で動画を撮りながらだった。それを初の顔出しPVにするって事で、宇良さんや、曽川君、彩綾さんにも手伝ってもらったし、現場でその姿は見てたはずだ。
まあ、確かに緊張はしたよ。回帰前でも夫婦で、オッケー貰えるってのは分かってたし。それでもプロポーズが終わった後は、ちょっと腰が抜けたりしたなぁ…。
………なるほど。曽川君もあの時の俺と同じような心境って事か。ほぼほぼオッケーを貰える状況でも、何か緊張してしまう。そういう時の心構え的なサムシングが聞きたいと。
「まあ、あんまりもじもじとかしないで、覚悟を決めてスパッと言った方が、自分的にも相手の心境的にも良いとは思うな。いざ、言うぞってなって、そこから先延ばしにしても良い事ないし」
まあ、曽川君が恥ずかしがってもじもじしてる姿も、彩綾さんからしたらご褒美になるのかもしれんが。
逆に男らしくバシッと決めてギャップを見せつけるのも良い。鼻血確定演出だ。
………なんかどう足掻いても成功するような感じしかしないな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます