閑話 卒業旅行2


 「道頓堀より人が凄いね…」


 「一応平日だけど春休みだからなぁ」


 晩御飯はカニ道楽で美味しく頂いた。

 でも正直、温泉旅行に行った時の蟹の方が美味しかったかなぁって印象。まぁ、美味しい事には変わりないし、全然オッケーなんだけど。


 因みにやっぱり蟹を食べてる時は静かになりました。良い加減名前を付けたかったので『サイレントキャンサー』と勝手に決めました。学力100さん仕事して。名付けが下手っぴすぎる。


 それはさておき二日目。

 今日は一日US◯で楽しむ。


 「行きたいアトラクションは予め決めておかないとな」


 俺と梓だけならお金にモノを言わせてファストパスを用意しておいたんだけどね。

 曽川君と新田は直近まで高校生だったって事もあって、お金に滅茶苦茶余裕がある訳じゃない。


 二人とも親はお金持ちだけどね。あんまり頼らないようにしてる立派な若者なので。

 新田はバイトでコツコツ貯めて、曽川君は家の仕事の手伝いをしてお小遣いを得てるらしい。


 俺達がお金を出すのも何か違うだろう。いやらしいし、健全なお友達関係とは言えない。本当に困ってる時は貸すけどね。それぐらいの信用が二人にはある。まぁ、その前に親が解決しそうだから、そんな心配は無さそうだが。


 俺が逆の立場なら親の脛を齧りまくってただろうな。楽な方へ楽な方へ流れる人間なので。


 「この前バックドロッ◯って新しいジェットコースターが出来たみたいだよ」


 「普通の方も乗りたいな」


 ハリドリね。つい一週間前ぐらいにリニューアルされたんだ。あれはかなり並ぶぞー。平気で3時間待ちとかあるからな。

 でも乗りたい気持ちは分かる。普通に面白いし。


 「スパイダーマ◯、スペースファンタジ◯、あれ? E.◯.って無くなったんだ…」


 どれもこれも並びそうなやつばっかりだ。まぁ、待ち時間を楽しむのもテーマパーク醍醐味だ。この四人ならいつの間にか時間が過ぎてるだろう。


 来年にはハリーポッタ◯の世界とかが実装されるんだよなぁ。俺はあのシリーズ大好きだから、何度も足を運んだものだ。

 ハーマイオニ◯役のエマ・ワトソ◯が滅茶苦茶タイプですね、はい。梓には負けるけど。



 そして開園。

 まずは一番並びそうなハリドリに向かう。

 最初だからか、程なくして俺達の順番が回ってくる。


 「凄いね!! 耳元で音楽が流れるよ!」


 「手元のやつで曲を選べるぞ」


 「ルトゥールはないか…」


 「あの人達は曲を正式にリリースしてないでしょうが」


 曽川君が興奮気味に耳元にあるスピーカーをまじまじと見てて、新田はルトゥールがない事にしょげていた。ピクッと反応しちゃったのは内緒。身近な人間が俺達の歌を聞いてると思うと気恥ずかしいな。

 母さんとかは普通に家で流してたりするから慣れたんだけど。


 「きゃーっ!!」


 曽川君が女子かってぐらいの叫び声をあげてる。他の女子と紛れてるぞ。





 「バックトゥザ・フューチャ◯にも乗りたかったけど時間が無かったね…」


 時刻は閉園間近。大体乗りたいのには乗れたけど、それでも時間が足りなかった。

 曽川君は名残り惜しそうにしている。


 それは早く乗らないとミニオ◯に変わるぞ。是非彩綾さんと来る事をおすすめする。


 「もう帰るのかー」


 「二泊三日なんて一瞬よね」


 明日で卒業旅行は終わり。お土産買って千葉に戻る。そして、この二人とは当分会う事はないだろう。


 連絡を取り合えればいつでも会えるって思うかもしれないけど、そう思ってたまさるとも結局全然遊ばなかったし、新田に関してはこれから警察学校だ。気軽に遊べるとは言えない。


 大人になっていくなぁと感じる。

 悲しくもあり楽しみでもあって。

 回帰前は適当に過ごしてたけど、この時間はとっても大切だったんだって、しみじみと実感する。


 後悔がないようにこれからももっと楽しんで生きていかないとな。

 

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