第86話 謎


 「あれ? 珍しい。ブレスレットしてるじゃん」


 「えへへ。彩綾さんにプレゼントしてもらったんだ」


 うっ。間近で曽川君のえへへはやばいな。

 心臓によろしくない。破壊力がとんでもねぇぜ。


 季節は11月中盤。本格的に大学受験が近付いてきて、学校中が少しピリピリしだした頃。


 曽川君はそんなの関係ねぇとばかりに殺人スマイルを繰り出してくる。

 千葉高校は校則が緩めなので、アクセサリーをつけたり、制服を着崩してる人もいる。チャラ男の新田なんて、チャラ男らしくなんかいっぱいつけてるし。


 俺と梓もピアスをつけたりしてるしね。その分結果を出せよとプレッシャーをかけられる訳だが。


 で、特にそういう事をしてなかった曽川君がアクセサリーをつけてたりすると、そりゃ気になる。聞いてみたら彼女さんからのプレゼントらしい。


 「ほー。中々センスがよろしいようで。似合ってるね」


 「ほんと? ありがとー!」


 あーあー。そんな笑顔を振り撒いちゃって。クラスメイトもほんわかしちゃってるよ。ほんと、この笑顔だけで世界を救えるんじゃないか。そう思わせるだけの破壊力が曽川君の笑顔にはある。


 「受験対策は順調?」


 「自分的にはね。なんとかこの調子でいきたいけど」


 「体調管理だけはしっかりな。万全の状態で挑まないと、受かるもんも受からなくなるし」


 「彩綾さんにも言われたよ。彩綾さんは当日にちょっと体調を崩しちゃったみたいで」


 ほえー。それでお茶の水に受かるのも凄いと思うけど。課金してない賢い人って凄いなぁ。





 「いかつい車を買ったもんだな」


 「ずっと欲しかったんだよね」


 おっちゃんと喫茶店にて。

 『わんこ大戦争』が軌道に乗って、モンスターバウンドの進捗は順調。

 でも俺の夢はウマ◯な訳で。もう今から準備していきたい。2.3年後にリリースするのを目標に。とにかく早くやりたい。


 「ほー。システムは分かったが…。実際のウマの名前とか使わせてもらえるかねぇ」


 「その為の実績よ。ヒット作を三つも出した会社からの提案だぜ。もし人気になったら、実際に競馬場に足を運ぶ人も増えるだろうし、JRAからしたら万々歳でしょうよ」


 まぁ、競馬ガチ勢とアプリから競馬にハマった勢で軋轢が生まれるだろうけど。回帰前もネットで、それはもう熱いバトルを繰り広げてた。見てる分には楽しいから良いけどさ。


 「まだモンスターバウンドは成功するかどうか分からねぇんだが?」


 「あんな面白いアプリ、失敗する方が難しい」


 歴史が証明しております。バランス調整さえ間違えなかったら、神ゲーですよ。

 俺は知識をパクっただけだけど、これを考えた人はマジで凄いと思いますね、はい。


 「まぁ、まだ先の話だ。それより坊主は大学受験は大丈夫なのか?」


 「問題ない。バッチリ現役合格してみせるよ」


 「かーっ。可愛げのない奴だな。顔が良くて、歌が上手くて、頭も良くて、金も持ってる。神様ってのはつくづく不公平だよな」


 「それは俺も思う」


 なんで俺と梓にこんなステータスボードなんていうチートアイテムを渡してくれたのやら。それがずっと気になってます。

 使命とかあるんなら、恩恵を享受しまくってるし、やる気満々なんだけど。


 神託とかそっち系のスキルも真面目に探してみたけど、無かったんだよね。

 ほんと、神様は俺達に何を求めてるのやら。

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