第82話 家と車
「お久しぶりです」
「おお! 谷君! いつも息子の勉強を見てくれとるみたいで。ありがとうなぁ」
オルフェがフォア賞を完勝して、凱旋門賞への期待が高まる九月中旬。
俺も何かの間違いで斜行しない世界線のオルフェを見てみたいと密かに期待してるのはさておき。
土地と家を買うお金が貯まりました。今日は梓と一緒に曽川君の家にお邪魔している。
本格的にお願いしたいからね。
「それで今日は例の件かい?」
「はい。夏休み前にもお願いしてましたが、大丈夫でしょうか?」
夏休み前に遅くても十月には貯まるって言っておいたんだよね。
その時はばっちり空けておくと言ってくれたので、その最終確認になる。しっかりお高めの手土産も持ってきてますよ。この家に来る時は本当にビビるし。ヤクザの家にしか見えん。俺の想像とピッタリすぎる。
「十月から仕事を始められるように準備はしておる。しかし、本当に高校生であんな大金を持っとるとはなぁ」
「投資がそれなりに上手くいきまして」
「それなりではないような気がするが…」
まぁね。未来知識がありますゆえに。
それも段々狂ってきてるところもあるんだけど。
滅茶苦茶大幅に変わったりはしていない。俺もしっかりチェックはしてるし、大怪我しないように注意している。
「あらぁ! 幼稚園から! 凄いわねぇ!」
「ありがとうございます」
梓と曽川ママは楽しそうに世間話してらっしゃる。俺達の馴れ初めの話かな?
その後も軽く世間話をしつつ、曽川君の彼女の話になったりと、2時間程滞在してお暇させてもらった。
「お金が一気に減りましたなぁ」
「税金とかは大丈夫なの?」
「その辺は抜かりありませぬ」
税金高いよねぇ。しかも家も買ったら更に税金が掛かる。まぁ、今まで脱税しまくってたからね。
国に貢献する意味でもどんどん散財していこう。
勿論それなりに限度はあるが。寄付とかもそろそろ本格的に考えていかないとなぁ。
「あ、そういえば免許取ったんだし、車買いたいな」
「このまま見に行く?」
そうね。一台だけ絶対買いたい俺の大好きな車はあるけども。それ以外にも梓用とか、家族用とか。
そんなに必要ないかもしれないが、新しく建てる家は駐車場も広いし買っても良いんじゃないかな。
そして曽川君の家からとあるディーラーへ。
今日は特に買う予定もなく、とりあえずの下見にと来たんだけど。
「は? まだ高校生? 冷やかしなら帰ってくれる? 暇じゃないんだよね」
やばくねこれ。
応対してくれた中年のおじさんは最初は丁寧だったんだ。で、年齢を聞かれて18歳って言ったらこれよ。まぁ、高校生二人が来て買うなんて思わないだろうから仕方ないのかもしれないが。
タメ口はやばいだろ。一応お客さんなんだが。
「帰りましょうよ。相手にするだけ無駄だわ」
「あいあい」
会話を録音して本部にでも送ってやろうかと思ったけど、梓はそれすらも馬鹿らしいからって、俺の手を引いてさっさと店から出て行く。それでも俺は一応録音はしたんだが。
応対してくれた失礼な店員さんは、そんな俺達を見て鼻で笑ってらっしゃる。
「ぶっ飛ばしてやろうか」
「今度高級車にでも乗ってこの店に来てやりましょうか。で、圭太の録音を流してやれば良いのよ」
ふむ。それは面白そうだ。俺が大好きな車は高級車寄りだろうし。多分。俺の中ではそう。
それに今日は軽く変装してるのもよくなかったのかもしれんな。普段ならカリスマやら顔面の暴力に圧倒されるはずなのに。
「次は服装もバッチリで来てやる」
「そうね。私もしっかりメイクするわ」
そうと決まれば急がねばなるまい。
早速俺のお目当ての車を買おう。
待っててね、ジャガーちゃん。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます