第77話 18歳


 7月。期末テストもバシッと終わらせて、まもなく夏休みという頃。

 俺と梓、母親ーズは千葉の自動車教習所に来ていた。母親ーズも免許持ってないし、俺達が取る時に一緒にどうと誘った次第だ。

 運転しなくても免許持ってると何かと便利だし。


 俺と梓は車と大型バイクの免許。

 母親ーズは車の免許だけ。


 「やーっと18歳になれたわね」


 「それな。4月生まれの奴らが羨ましくて仕方なかったぜ」


 7月でも充分早い方だと思うけどね。

 でも早く車の免許はとりたかった。時間も掛かるし。


 「本当は合宿でささっと済ませたかったんだけどな」


 「8月は模試があるものね」


 夏休みに合宿に行ってスパッと終わらせるのがベストだったんだが、残念ながら8月は東大模試を受ける予定がある。


 学力100のチートがあれば試験なんて余裕と思うかもしれない。でも高校受験の時にちょっと思ったんだよね。あの時も余裕ぶっこいて、私立受験なんて余裕っしょとタカを括ってたんだけど、雰囲気とかを感じるには良い機会だった。

 あれのお陰で、学力を上げようと思えたしな。


 同じ失敗をしない為にも模試を受けて、東大の模試がどんな感じか知っておくのも悪くない。

 そう思ってる次第であります。


 「まぁ、免許は夏休み終わりぐらいまでに取れたらいいだろ。今年は旅行とかにも行く予定はないしな」


 「そうね。今年の夏休みは教習と勉強で終わる感じね」


 仕方あるまい。多分人生で一番忙しい夏休みになるだろう。勉強、教習、そして動画投稿。

 体調管理をしっかりして、パンクしないように頑張ろう。健康スキル5が仕事してくれる事を祈る。


 「免許代ってたっかいよなぁ。これが普通か?」


 「安くして、適当に取られても困るでしょ。ただでさえ馬鹿みたいな交通事故が絶えないんだから」


 まぁ、そりゃそうか。

 年に一回は意味の分からん交通事故ってあるもんな。コンビニプリウスとか。判断能力が怪しい人は免許を返納して下さい。お願いします。


 「煽り運転が流行り出すのもそろそろじゃないかしら?」


 「だな。ドラレコは必須だ」


 煽り運転な。あれ、何がしたいのかいまいち分からんのだが。面白い事なんて何もないだろ。

 ドラレコはしっかりつけよう。2012年はまだそこまで普及してるとは言えないけど。

 あれは無実を証明するのにかなり重要だからな。

 未来では車を運転するのに必須とまで言える。


 まぁ、その分自分もしっかり交通ルールを守らないと墓穴を掘る事になるが。

 ちゃんと守ってたら問題あるまいて。


 「まさかこの歳になって免許を取りに来るなんてねー」


 「せっかくですから。あると便利なのは間違いありませんし」


 母親ーズがしみじみと呟く。

 確かに30後半で免許を取りに来るのは珍しいかな? 二人は俺達が幼い頃から女手一つで育ててたから、取りに来る時間が無かったんだよね。

 まぁ、これも一つの親孝行って事で。


 給料も貯金に回せてるらしいし、免許取ったら車もすぐ買えるでしょ。

 俺達が買った車を使っても良いしね。


 「さてさて。どんな車を買おうかな」


 「バイクもよねぇ」


 回帰前は機能性を優先した車を買ったけども。

 今はお金もあるし、おしゃれな車とかバイクを買ってみたいね。

 お金は一定以上の貯金以外は使ってなんぼだし。


 日本の経済を回すという名目で、どんどん欲望に従って散財するぞ。

 身の破滅にならない程度にだけどね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る