第2話 回帰


 「圭太! 圭太ってば!!」


 「う、うぅ」


 梓の声が聞こえる。ペチペチと顔を叩かれてみるみたいだ。もう朝か?


 「って違う違う! それどころじゃなかった!」


 意味不明な現象が起こりすぎて、脳が限界を迎えたんだった!


 「そうよ! それどころじゃないのよ!」


 目の前の梓はかなり若かった。

 何故か中学の頃の制服を着ていて、とても可愛らしい。いや、既に可愛いってより美しい寄りに変貌してきているな。


 「梓。ちょっと待ってくれ。俺は今信じられない現象に理解が追い付いていないんだ」


 いつまでも梓の制服姿を眺めていたいところだったけど、自分の事で精一杯。

 そう思ってたんだけど…。


 「やっぱり圭太もなの? 私、てっきり死んだと思ったんだけど…」


 「え? 梓も」


 こいつはびっくらポン。

 どうやら梓もこの意味不明な現象に巻き込まれているらしい。


 「このステータスみたいなのは?」


 「見えてるわよ。それの相談がしたくてわざわざ家まで来たんだから」


 どうやら丸っきり同じらしい。

 違うのは梓はテンパらずに、学校をサボってまで俺の家に来たらしい。ん? 学校?


 「私達中学三年生になってるわよ。意味が分からないわね」


 梓に言われて慌ててカレンダーを見る。

 どうやら中学三年時の五月に戻ってきてるらしい。


 「マジかよ。一体どうして…」


 「ほんとにね。圭太が居てくれて良かったわ。私だけ過去に戻ってきてたら絶望してたかも」


 それな。俺も梓が居てくれてかなり気持ちが楽になっている。本当に良かった。


 「えーっと…もう10時か。とりあえず今日は学校をサボろう。で、これからの事について話し合おう」


 「そうね。分からない事が多過ぎるわ」


 それから自分達の事について話し合った。

 ガラケーと新聞を駆使して、本当に過去に戻ってきたのかを確認。

 パラレルワールド的な事もありえると思ったけど、そんな事はなく。

 俺達が知っている過去だった。


 「やべぇだろこれ。こんな事を今考えるべきじゃないんだろうけど、やりたい放題出来るぞ? 株を知ってる通りに買っていくだけで億万長者だ」


 「圭太が株取引をしてて良かったわ」


 なんで戻ってきたのかは知らんが、やりたい放題させてもらうぞ?

 俺は若い頃から妄想でこの時にこの株を買ってればとか考えていたから、それなりに過去の事も詳しいと思っている。

 勉強のし直しは必須だが、それでもかなりのアドバンテージを貰えた事になるだろう。


 「で、問題のこれか」


 「圭太もまだ触ってないのね」


 目の前にあるステータスボードみたいなの。

 消えろと念じたら消えるけど、出てこいと念じるとブォンと出てくる。

 他人に見えないのは梓が既に確認済みらしい。

 どうやら、俺の家に来るまで出しっぱなしで来たけど、誰にも気に掛けられなかったようだ。


 「とりあえず俺が触ってみるぞ」


 「気を付けてね」


 こういうので先陣を切るのは男の役目だろう。

 気を付けてって何を気を付ければ良いのか分からんが。


 《基本情報》

 名前 谷圭太

 年齢 14

 身長 172cm


 学力 30/100

 運動能力 40/100

 容姿 50/100

 運 20/100


 【歌Lv2】 【競馬Lv5】 【スロットLv2】

 【パチンコLv2】 【麻雀Lv3】 【性技Lv5】



 「う、うーん?」


 「どうだったの?」


 「見てみた方が早いかも? 特に害がありそうでもないし見てみてよ」


 「わ、分かったわ」



 《基本情報》

 名前 中村梓

 年齢 14

 身長 159cm


 学力 30/100

 運動能力 40/100

 容姿 50/100

 運 20/100


 【歌Lv2】 【編集Lv4】 【料理Lv5】

 【麻雀Lv1】 【性技Lv5】



 「これは…」


 「スキルみたいなのは過去で俺達が趣味にしてたのを参考にしてるっぽいよな」


 「そうね」


 なんか自分のステータスを見せられた訳なんだけど。納得がいくようないかないような。


 「俺だって編集してたのにスキルがない」


 「それなら私も圭太と一緒に一通りギャンブルをやったつもりだけど、麻雀しか反映されてないわ」


 「基準が分からんな」


 ギャンブルだって、もっと色々なのに手を出してるしさ。競艇競輪だって軽くはやってたし、アメリカに旅行に行った時にカジノで色々とやっている。


 「私が一番納得いかないのはスキルじゃない方だわ。容姿が50って。絶対私平均より可愛いもの」


 「お、おう。そうだな」


 「ええそうよ」


 それなら俺だって、平均よりもイケメンだと思うんだが。それとも世界には埋もれている美男美女でも居るんだろうか。


 「で、これを見せられたからなんだって話なんだけど」


 「努力次第でスキルとかが上がっていくとかかしら? なんだかゲームみたいね」


 ふむ。まぁ、自分がこれだけ出来ますよって分かるのは良い事だよな。

 努力の成果が分かるかもしれないって事だし。

 


 「ん? なんだこれ。弄れるじゃん」


 「あら、ほんとね」


 ステータスボードを適当に触ってると、容姿や運動能力を弄れる事に気付いた。

 なんでもありじゃん。


 「え? マジ? お金取るの?」


 「そう甘くはないって事ね」


 お金かー。すぐには無理だけど、将来的には用意出来る。未来知識を使って株取引をしたらいいだけだからな。


 「なんか楽しくなってきたぞ」


 「そうね。死んで過去に戻った事なんてどうでもいいわ」


 そうこなくっちゃ。流石梓さん。

 俺のお嫁さんをやってただけあってノリが非常によろしい。

 もう少し詳しくステータスボードを見てみようぜ。

 

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