ふとNTR衝動に襲われ校内を駆け巡っていたら偶然学校一の美男美女カップルの片割れがいたので催眠アプリで彼氏の座を奪い取り、すぐさま寝取られることを期待したのに 、彼女の言動にドン引きです
くろねこどらごん
第1話
俺の名前は
どこにでもいる、ごくごく普通の高校生だ。
「寝取られてぇ……寝取られてぇよぉぉぉぉぉっっっっっ!!!!!」
しいて人と違うところをあげるとすれば、彼女を寝取られたくてたまらない真っ最中であることくらいだろうか。
「でも俺には彼女がいないよぉぉぉぉぉっっっっっ!!!!!」
だが困ったことに、俺には現在彼女がいない。
もっと言えば、彼女がいたこと自体ないのだが、そんなことはこの身に溢れる寝取られ欲求の前では些細なことだ。
「どうすればいいんだよぉぉぉぉぉっっっっっ!!!!! このままじゃ寝取られを拗らせて死んでしまうよぉぉぉぉぉっっっっっ!!!!!」
そんな理由で死にかけている俺は、あるいは世界で一番不幸な男なのかもしれない。
絶望が全身を包み込もうとした、その時だった。
「はっ!? そうだ! 他の男の彼女を奪えばいいんだ!」
突如俺は閃いた。
そうだ、寝取られたいなら彼女持ちの男から彼女を奪うのが一番手っ取り早いのではないか。
なんせ付き合っている女の子は彼氏のことが大好きなのだ。俺に対する興味なんてこれっぽっちもないだろうし、そんな子を奪えばすぐに俺に興味を失い、他の男になびいて寝取られるはず!
「よっしゃ! そうと決まれば善は急げだ! レッツ強奪!!!」
天啓を得て水を得た魚状態になった俺は、すぐさま教室を飛び出した。
言い忘れていたが、俺のいる場所は放課後の学校だ。
どうすれば彼女がいないけど彼女を寝取られることが出来るかについて朝からずっと考えていたら、いつの間にか教室からは誰もいなくなっていたのである。
全く薄情なクラスメイトたちだ。
罰として明日の朝のHRで俺の寝取られ英雄譚を語ってあげることにしよう。
絶対ウケるに違いない。
さてそれはともかくひとけの少ない放課後とはいえ、諦めるにはまだ早い。
いや、むしろチャンスと考えるべきだろう。
放課後といえば部活の行われる時間だ。つまり校内にはまだ部活で残っている生徒は数多く存在する。
そのなかには野球部やサッカー部といったリア充御用達の部活だって含まれている。
そんな部活に所属している彼らは当然、彼女持ちも非常に多い。
つまりこうして適当に校内を走り回っていれば、彼氏の部活が終わるまでどこかで待っている、いたいけで甲斐甲斐しい美少女に出会える可能性も高いわけで……。
「おっしゃ! 早速ひとり見つけたぜ!」
目論見通りというべきか。
一階の渡り廊下をひとりで歩いている美少女を、俺は発見することが出来ていた。
(ククク、しかも西住さんとはツイてるぜ! やはり天は俺に味方しているということだな!)
その子のことを、俺はようく知っていた。
同時にクラスメイトでもあったが、俺とは特に接点はなかった。隣の席になった、みたいなラッキーすらもない。
そもそもあったとしても、どうすることもできなかっただろう。なんせ西住には、中学から付き合っている彼氏がいたからだ。
そいつは
しかもただのイケメンというわけではなく、一年生ながらサッカー部のレギュラーの座を獲得しており、運動神経も抜群。おまけに成績も優秀という完璧超人だ。
これで女癖が悪いという欠点でもあればいいのだが、残念なことに彼女である西住一筋であるらしく、寄ってくる女はことごとくあしらっているのだそうな。
そんな頼れるイケメン彼氏な北大路に、西住も完全にベタ惚れしているようだ。
彼らは名実ともに校内一の美男美女カップルであると同時に、校内一のラブラブカップルの名を欲しいままにしているのであった。
(だが、悪いがそれも今日までだ!)
俺は全力ダッシュの勢いそのままに、西住の前に回り込んだ。
「ストップ! 西住!」
「え、へ? な、なに?」
「好きだ! 付き合ってくれっ! オラッ、催眠!」
驚く西住の眼前に、俺はインストールしたばかりの催眠アプリを突き出した。
「あ……♡ はい、分かりました。東くんと付き合います……♡」
途端、目をトロリとさせて頷く西住。
この瞬間、俺は北大路から西住を奪うことに成功したのだ。
秒もかからない、実に鮮やかな略奪であった。
(いよっし! やったぜ! これで寝取られることが出来るだぜ!)
思わず内心でガッツポーズを決める俺。
口説くなんてかったるいことやってられんからな。催眠アプリなんて便利なもんがあるんだから使わない手はない。
(悪いなぁ北大路。ごめんな。でも仕方ないんだよ。俺は寝取られたくて寝取られたくて、仕方ないんだからサァッ!)
仲睦まじいカップルを引き裂くことに良心が痛まないと言えば嘘になるが、この内に溢れる寝取られ欲求の前では良心の呵責など些細なことだ。
ひとり満足していると、目にハートマークを浮かべた西住が、俺に話しかけてきた。
「あの、東くん。早速だけど一緒に帰らない? 私、東くんのこと良く知らないから、もっと良く知りたいな……♡」
「ああ、もちろんいいけど。でも北大路のことは大丈夫なのか? 元々はあいつの部活が終わるのを待ってたんだろ?」
「そうだけど……彼のことはもういいの♡ 今一番好きなのは、東くんだから……♡」
学校一の美少女からの愛のささやき。
誰もがきっと羨むだろう言葉を聞き、俺は。
「……………………は?」
思い切りドン引きしていた。
「え、ちょっと待てよ。北大路はもう元カレとはいえ、仲が良かったんだろ? そんなんでいいのかよ。せめて一言声かけるくらいはさぁ……」
「だから、秀光くんのことはもういいの♡ 私が好きなのが東くんなんだから、他の男の子の話なんてしなくても大丈夫だよ♡ 私、絶対浮気なんてしないから♡」
「えぇ……」
恋愛脳に染まりきった言葉を次々と吐き出す西住に、俺は頭がくらくらする感覚を覚えていた。
宇宙人と会話しているかのような錯覚に陥ってしまう。
(この女……普通じゃないぞ! あんなに仲の良かった男をあっさり切り捨てるなんて、頭がおかしいとしか思えん!)
つい数時間前まであんなにラブラブなカップルだったというのに、あっさりと彼氏を裏切って他の男と付き合うことを選ぶ……冷静に考えればそんな女、ただのビ〇チだ。
俺はビ〇チは嫌いなのだ。童貞らしく、付き合うなら一途に彼氏を想ってくれる、そんな子と付き合いたい。
なのに、初めての彼女が彼氏を捨てて別の男になびくような最低な女だったなんて……!
「……別れよう」
「え?」
「だから、別れよう。元カレと別れた途端態度を変えるような女の子を、俺は信用出来ない」
裏切られた気持ちで胸が一杯になり、もう我慢できなかった。
今の俺の正直な気持ちを彼女……いや、元カノである西住に、ハッキリと告げた。
「え、そ、そんな……!」
「ハッキリ言うけど、今の西住は、ちょっと頭がおかしいよ。病院にでも行ったほうがいいんじゃないかな。それじゃ……」
こんな尻軽女と一分そこら彼氏彼女の関係にあったことを一刻も早く忘れたい……そんな思いから、足早にその場を去ろうとしたのだが、そうはいかなかった。
「待って! お願い、捨てないでぇっ!」
「うわっ!」
背を向けた俺の制服を、後ろから西住が掴んできたのだ。
必死な形相で涙を流しながら大声で俺を止めようとしてくる。
泣いていても美少女は美少女だったが、生憎と今の俺は西住に対して嫌悪感しかわいてこない。
「ちょっ、やめっ、離……「なにをしているんだ!」
引き離そうと躍起になっていると、聞こえてきたのは怒りの混じった男の声。
釣られるように声のした方を見ると、顔を般若の如く歪ませたイケメン――北大路の姿がそこにあった。
「おい! お前、同じクラスの東だな。萌香になにをしているんだ! すぐに離れろ!」
まさに怒り心頭といった様子の北大路だったが、ある意味でタイミングのいい登場だ。
彼の言葉に俺は大きく頷くと、
「勿論だ! 俺もそうしたいと思ってるから、手伝ってくれ! 俺はもう別れたのに、西住が離してくれないんだよ! 元カレのお前がなんとかしてくれ!」
「ハァッ!? なに言ってんだお前!?」
「なにもクソもない! ビ◯チに捕まってるのは俺の方なんだよ! 助けてくれよぉっ、お前の彼女だったろ?」
助けを求める俺の言葉に、目を見開く北大路。
頭脳明晰だったはずだが、どうにも察しは悪いらしい。仕方ないので、俺は両手を掲げることにした。所謂降参のポーズというやつである。
「ほら、この通り! 俺は西住を掴んでなんかいないんだって。なのに西住が別れたくないって聞かなくて……」
「へ? いや、だからそんなはず……」
「捨てないで東くん! 私のことを捨てないでぇっ!」
「も、萌香!?」
困惑している北大路の耳に、西住の鋭い悲鳴のような嘆願の声が突き刺さる。
「私、東くんのことが好きなのっ! 別れるなんて言わないでぇっ!」
「な、も、萌香? なんで……?」
さすがに元カノの言葉を直に聞いてしまっては、認めざるを得なかったのだろう。
顔面を蒼白にして立ち尽くす北大路だったが、ビ〇チから一刻も早く離れたかった俺からすれば、いつまでもそうしていてもらっては非常に困る。
「ホラ、俺の言った通りだったろ? 西住は秒で俺になびいたビ〇チなんだよ。俺はビ〇チが嫌いだし、付き合いたいとも思わないから早く引き取ってくれないか?」
「な……!」
催促の声をかけると、またもや驚愕の表情を浮かべる北大路。
やれやれ、そんなに驚いてばかりいるなよな。俺は一刻も早く次の獲物を探し出し、今度こそ寝取られないといけないというのに……って、あれ?
「て、訂正しろ東! 萌香はビ〇チなんかじゃない! 一途で性格も良くて、俺にはもったいないくらいのいい子なんだ! 高校を卒業したら結婚することだって決めている! 俺の最愛の彼女を、悪く言うなぁっ!」
よく考えてみたら、これってチャンス?
今西住が北大路のところに戻ったら、寝取られが成立するのでは?
北大路は学校一のイケメンだし、敗北感マシマシニンニクギョウザマシになること請け合いだ。
この状態は俺にとって、理想的なシチュエーションに持ち込めているんじゃなかろうか。
「やめて北大路くんっ! 東くんに誤解されちゃうじゃない! もう貴方とは終わったの!」
「も、萌香……! そんな……! 嫌だ! 俺はお前が好きなんだ! 誰にも絶対渡さない! 別れたくない! 絶対別れないぞぉっ!」
いや、でも待てよ。北大路は元々西住と付き合っていたわけだし、それってただの元サヤでは?
元サヤを寝取られとは言わない……言わないよな?
うーん、定義がちとあやふやになってきた気がする。ちょっとじっくり考えなければ……。
「しつこいよ、北大路くん。言いたくないけど、ちょっと顔がいいからって勘違いしてるんじゃない? 私の気持ちは、もう北大路くんにはないんだから」
「そんな……! め、目を覚ましてくれ、萌香! 俺たちはあんなにお互い愛し合っていたじゃないか! 俺は本気でお前を幸せにしたいんだ! いいや、絶対にする! だから俺のところに戻ってきてくれ! 誰にもお前を渡したくないんだよぉっ!」
「だからしつこいんだって! これ以上はケーサツを呼ぶからね! 変なことを言って、私たちの間に入ってこようとしないでよっ!」
「も、もえかぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!! うわああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
というか……。
「お前らうるさいぞ! 喧嘩なら別のところでしろよ! 俺を巻き込むんじゃねぇっ! オラッ、催眠!」
あまりにふたりが騒ぐものだから、いい加減しびれを切らした俺は、ふたりに催眠アプリを向けた。
途端、静かで静寂な世界が戻ってくる。
「「……………」」
「とりあえずふたりとも、次に俺が話すまで大人しくしてろ。分かったな?」
「「……………はい」」
「はぁ、最初からこうしておけば良かったなぁ」
まったく、催眠アプリさまさまだ。
これがあればどんなやつでも言うことを聞かせられるというのだから、全く便利な世の中に……。
(…………待てよ)
俺は手に持った催眠アプリをじっと見つめる。
人の認識を書き換え、誰にでも言うことを聞かせられるという催眠アプリ。
それはもしや、持ち主も例外ではないのではないだろうか。
「…………ゴクリ」
緊張してるせいか、唾を飲み込む音がやけに大きく聞こえる。
俺はゆっくりと催眠アプリを自分へと向けた。そして大きな声で呟いた。
「今すぐ恋人を寝取られる至高の快感と究極の屈辱を味合わせてくれ!」と――――。
………後のことはもう語るまでもないだろう。
理想のセルフNTRを味わうことができ、ひどく満足した俺は、意気揚々と学校を後にしたのだった。
まったく、催眠アプリは最高だぜ!
ちなみに後日。
「あ、東。ちょうど良かった! また萌香を寝取ってくれないか! 俺、あの屈辱を味あわないともう満足できなくて……!」
「わ、私もお願い東くん! 秀光くんを他の女の子に寝取らせて欲しいの! あの脳が破壊される感覚が忘れられなくて……!」
「えぇ……」
なんか知らんがどっかで脳が破壊されたらしい学校一の美男美女カップルが俺のところに互いのNTRを望むという奇怪な頼みを受けることになったのは、また別の話である。
◇◇◇
せっかくなのでカクヨムコン向けに短編書きましたがこれはひどい……
読んで面白かったと思えてもらましたらブクマや↓から星の評価を入れてもらえるととても嬉しかったりしまする(・ω・)ノ
ふとNTR衝動に襲われ校内を駆け巡っていたら偶然学校一の美男美女カップルの片割れがいたので催眠アプリで彼氏の座を奪い取り、すぐさま寝取られることを期待したのに 、彼女の言動にドン引きです くろねこどらごん @dragon1250
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