fiction in ライト

上野空

先輩


 僕の持論では、人間は10代になる頃を境に劣化していく。小学時代に渇望した複数個の壮大な夢は、いつの間にか誰にも言えない…いや、自分でも忘れてしまうような夢物語へと姿を変えてしまう。中には、1つ、夢をかなえてしまうような猛者もいるが、僕の知る限り、複数個の夢全てを叶えたというような人物は今のところ存じ上げていない。それはしょうがないことだと思う。プロ野球選手は宇宙飛行士や外科医にはなることができないし、21歳の私が今からオリンピック選手になることはきっとできないだろう。

 授業終わりの校内の自販機前で、先輩にそんな意味合いの内容を話した。

「なんだか、ダーウィンの進化論のようだね。」と、先輩は言った。

 羽に特化した鳥は、地面を強く蹴って走ることも、魚のように水中を泳ぐこともできない。そういうことを言いたいのであろうか?

「でも、鳥にも例外はいるよね。早く走れるダチョウさんとか、スイスイ泳げるペンギンさんとか。あとは…鳥じゃないけどイルカやカモノハシなんかもそうね。」

 先輩は僕の心中を見透かしたように言葉を残し、その場を去った。僕には、先輩が人間の例外のように感じる。

「さしずめ、私は羽の折れたハトなのでしょうよ。」

 先輩は20mほど前で教育学部の准教授に声をかけていた。コミュ力お化けはプラス思考をオプション機能で持っていそうでいいな。と小並感漂う感想を持ち、スクーターで古本屋に向かった。



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