最終話  終わりよければ


彼らと別れ、私は再び学校へと戻った。

保健室では風花が暇そうにスマホをいじっていた。


保健室から風花を連れて帰る途中、なぜか芝生の上で寝ていた弟を確保できた。

突然の急接近に、弟も風花も満更でもなさそうだった。


「これは私が動かなくても何とかなるんじゃない?」


この時私は初めて作戦の成功を確信した。



「いやーそしたら想像以上に早く親密になって焦ったわ。

これは本気になってしまうんじゃないかって」


「でもそうはならなかった」

風花ちゃんは寂しそうに呟いた。


最初の時はふたりとも初めてでドキドキしてた

そしてなれた頃ドキドキが信頼に変わってゆくのがわかった


そして間違える

私の名前を

彼は全然気がついていないようだった。


「もう、また名前間違えてるよ」

そういったときの彼の顔忘れられなかった。


「それからは何か悩んでいるようだった」

私は苦しそうな彼を見てこれ以上見ていることが出来なかった。

私が耐えきれなかった。


「別れましょう」


そう言って私達の関係は破綻した





「コーヒー冷めちゃったね」

弟が気を利かせて新しいく入れ直すため席を外した。




「本当はどうなんだ」私は親友に詰め寄った。聞けるのは弟がいない今しかない。


彼女はなかなか口を割らなかったけど、ぼそっと一言だけ言った。


「本気になりそうだった」


頬を赤らめて、いやそれもう本気でしょ。


私は頭を抱えた。どうしようかと。

大失態である


「もうこうなったら成り行きに任せるしか無い 名探偵は引退だよ」


「逃げた」

「責任取ってよw」



「お待たせ」

弟がコーヒーとケーキを持ってきた。気がつく優しい弟だ。


「内緒話は済んだ?」


最近頭も切れてお姉ちゃん困るよ


「何のこと?」


僕は風花さんの方を見た。何故か赤くなって俯いてた。

なるほど。僕が不在の間何の話があったか、だいたい想像できた。


「ごめんなさい風花さん。僕は卑怯でした。弱い時だけ風花さんに頼って」

その時華ちゃんが立ちあがり、僕の腕を掴んだ。

「私も言わせて」


華ちゃんはそう言うと風花さんの前に立った。


「こんな事になってすみません。あと、待っててくれてありがとうございます」


風花さんは立ち上がり右手を振り上げそうになり、左手で抑えた。

限界まで開いた目から涙がこぼれそうだった。


「二度目はない。その時は容赦しないから」

「はい。ありがとうございます」


こんな結末になったけど、最後まで風花さんは先輩であろうとした。

ぼくはこの人にどれだけの借りを作ったんだろう


「でも要らなくなったらいつでも捨てるのよ」


「それ酷くないですか先輩」


「はい肝に銘じます」


風花先輩は僕たちを見て、いつものように優しく微笑んだ。

その目から涙がこぼれた





翌日の放課後

僕は図書室に来ていた


姉の中途半端な策略で回り道したけど、感謝してる。

僕たちだけでここまで戻せたかわからない。ふたりとも意地っ張りだから。


「華ちゃん、随分待たせてしまってごめん」


「ほんとにね!」


「ちょっとみんな静かにして!今いいとこなのよ」


図書室には全員揃っていた

僕 華ちゃん 風花先輩 姉の琴葉 その彼氏

・・・ホントなんの罰ゲームですか


「うん、待ちくたびれたよ」


そう言って彼女は僕の方に一歩近づく。


「華ちゃん愛してます。僕と結婚して下さい」


周囲がざわついた。何か間違えてた?

彼女はくすっと笑いながら、


「それは卒業式の時に言う約束でしょ?」


顔から血の気が失せた。間違えたよ僕


「かっこいいよ」と姉


「僕が言ってあげますよ」とイケメン


「わーすごいの見ちゃったよ!」風花先輩


・・じゃあなんて言葉だっけ


彼女はそっと手を伸ばす。そして優しく僕の頬を両手でつつみ囁いた。


「華は航大くんを愛しています。航大くんでないと嫌なんです」


ようやく思い出した。


「あの告白は私がするためのものです」


「私を大好きな、そんなあなたのことを愛しています」


周りのみんなも照れて、どこを見たら良いか困っていた。


そんな中


「いいなー」


「羨ましいなーあたしも言われたい」


そう呟いた姉が二人。


「僕が言ってあげますよ」とイケメン先輩が言えば


「あーうん、楽しみだなー」 なぜ棒読み


「あの、それで答えは」


忘れてた。

そんなの入学する前から決まってた


「はい、よろこんで!」


僕は華ちゃんをそっと抱きしめた。

周りがキャーキャー言ってる


「まさかお姉ちゃんの前でキスするの?」


「航大くん、それはあまりに私に対して配慮をかいてますよ」


「しませんよ」


ここではね

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幼馴染への告白を邪魔した先輩が、責任取って僕の彼女になってしまった 水都suito5656 @suito5656

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