第2話 天使に拾われた
誰なんだよその男は!
そこは僕の場所じゃなかったのか!
その話を言えなかったのは誰だ 僕じゃないか
きっと彼女の真剣な様子を前にしたら、どんな言い訳も無力だ。
おわったー 僕の青春。
たった一日も持たないなんてありえない
今日からカレカノになって、ワクワクドキドキする高校生活が始まる。
そんな事を考えてたら昨日は眠れなかった程に楽しみにしていた。
『でもそれって言い訳』
どこまでも彼女の教えがついてくる。こんな時だって言うのに
「帰るか」
来たときとは逆に校舎まで道は険しかった。
何度もころんだ。
なにもないところで
今なら泣いてもいいか
誰も見てないことを良いことに僕は声を出して泣いた。
誰もいない中庭で、男子高校生が泣いている。はたから見ればなかなかシュールな光景だったろう。
今の僕はどうしょうもなく悲しくて、情けなくて、そして寂しかった。
話を聞いてくれない彼女がゆるせなかった
当てつけのように他の男子と腕を組む彼女が憎かった。
でも、そんな彼女のことがまだ好きだって言う自分が嫌だった
泣き疲れた僕は、いつの間にかグランドの隅で寝てしまった。
*
「あ、起きたよ」
なんだか柔らかい感触が頭に
「今上向いちゃだめ!」
はい、向きません。僕はギュッと目を閉じた。女子の言うことは絶対です。
「・・・もういいよ」
そーっと目を開ける。
そこには小さな天使がいた。
「目が覚めたならもういいでしょ」
「そう、もっとしたかったのに」
ちょっとまって、今の声は
「いい加減離れなさい」
いたた耳を引っ張らないでください
そこにいたのは昼間助けた小さな菊池先輩と
「後はあたしがなんとかするよ、それよりアンタの足のほうが心配よ。こいつに送らせようか」僕の姉がそこにいた。
「二人は仲いいね」同じ生徒会だし
「親友よね!」
「ありがたいことにそう呼ばれてます」
照れたように微笑む菊池さんは、まるで小動物のように可愛いです。
ぜひお持ち帰りしたいです
「・・・それでこの1年生とあなたの関係ってやっぱり」
「ちょっと、変な勘違いしないでよ!弟よ!弟!」
「でもあなた一人っ子じゃ」
姉は乱暴に髪をかきながら
「今日から私の弟よ」と言った。
僕と姉は兄弟になった。
父さんが再婚して、今日籍を入れた。
だから今日から兄弟。でも今までと何も違わないんだけどね。
「元々は従兄弟なのよ」
「はい?」
あたしのお母さんとこの子のお母さんは姉妹。
「アンタのお父さんは、姉妹に手を出したって事でいいのかしら?」
言い方!
「まあ家族のことだから詳しくはちょっとね」
彼女はそう言ったけど、そんなに難しい話ではない。
僕のお母さんが失踪した。
彼女のお父さんも失踪。
残された僕たちはお互い助け合って何とか生きてきた。
そしていつの間にそうなったのか、二人の両親が結婚するという。
「ほんと今更よね」
初めてこの話を聞いた人は大抵混乱する。そして同時期に失踪した二人の男女。
後は言わなくても分かるなって事らしい。
まあ僕は子供だからわからないけどね。
*
「それでどうしてあんなとこで寝てたの」
帰宅してしばらくしたら姉が僕の部屋にやってきた、
「風花も心配してたんだからね」
「うん。ごめんなさい」
僕が馬鹿だからこんな事に
心配をかけたままだと悪いので、かいつまんで説明した。
彼女が悪者にならないように気をつけながら。
*
「ふーん。これは縁がなかったってことね」
「やっぱりそう?」
「縁があればどんな困難でも信じることが出来た。でも彼女にはそれが出来なかった」
人に言われると胸に来るものがある。
「もう他の人と付き合ってるんでしょ」
確証はないけど、そんな感じだった。
「ではここで姉から策を授けてしんぜよう」
その策は僕の規範から大きく踏み外す行為で
「準備はいい?」
「おお!」
人として決してやってはいけない行為だ
アンタに必要なのは彼女からの軛を立つこと
まずはどーんといってみよう
*
翌日
僕は再び図書室に来ていた。
ここから始めるんだ
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