第2話  天使に拾われた

誰なんだよその男は!

そこは僕の場所じゃなかったのか!


その話を言えなかったのは誰だ  僕じゃないか

きっと彼女の真剣な様子を前にしたら、どんな言い訳も無力だ。


おわったー 僕の青春。

たった一日も持たないなんてありえない


今日からカレカノになって、ワクワクドキドキする高校生活が始まる。

そんな事を考えてたら昨日は眠れなかった程に楽しみにしていた。


『でもそれって言い訳』


どこまでも彼女の教えがついてくる。こんな時だって言うのに


「帰るか」


来たときとは逆に校舎まで道は険しかった。


何度もころんだ。

なにもないところで

今なら泣いてもいいか


誰も見てないことを良いことに僕は声を出して泣いた。


誰もいない中庭で、男子高校生が泣いている。はたから見ればなかなかシュールな光景だったろう。


今の僕はどうしょうもなく悲しくて、情けなくて、そして寂しかった。


話を聞いてくれない彼女がゆるせなかった


当てつけのように他の男子と腕を組む彼女が憎かった。


でも、そんな彼女のことがまだ好きだって言う自分が嫌だった

泣き疲れた僕は、いつの間にかグランドの隅で寝てしまった。




「あ、起きたよ」


なんだか柔らかい感触が頭に


「今上向いちゃだめ!」


はい、向きません。僕はギュッと目を閉じた。女子の言うことは絶対です。


「・・・もういいよ」


そーっと目を開ける。

そこには小さな天使がいた。


「目が覚めたならもういいでしょ」


「そう、もっとしたかったのに」


ちょっとまって、今の声は


「いい加減離れなさい」


いたた耳を引っ張らないでください

そこにいたのは昼間助けた小さな菊池先輩と


「後はあたしがなんとかするよ、それよりアンタの足のほうが心配よ。こいつに送らせようか」僕の姉がそこにいた。


「二人は仲いいね」同じ生徒会だし


「親友よね!」


「ありがたいことにそう呼ばれてます」


照れたように微笑む菊池さんは、まるで小動物のように可愛いです。


ぜひお持ち帰りしたいです


「・・・それでこの1年生とあなたの関係ってやっぱり」


「ちょっと、変な勘違いしないでよ!弟よ!弟!」


「でもあなた一人っ子じゃ」


姉は乱暴に髪をかきながら


「今日から私の弟よ」と言った。


僕と姉は兄弟になった。


父さんが再婚して、今日籍を入れた。 

だから今日から兄弟。でも今までと何も違わないんだけどね。


「元々は従兄弟なのよ」


「はい?」


あたしのお母さんとこの子のお母さんは姉妹。


「アンタのお父さんは、姉妹に手を出したって事でいいのかしら?」


言い方!


「まあ家族のことだから詳しくはちょっとね」


彼女はそう言ったけど、そんなに難しい話ではない。

僕のお母さんが失踪した。

彼女のお父さんも失踪。


残された僕たちはお互い助け合って何とか生きてきた。

そしていつの間にそうなったのか、二人の両親が結婚するという。


「ほんと今更よね」


初めてこの話を聞いた人は大抵混乱する。そして同時期に失踪した二人の男女。

後は言わなくても分かるなって事らしい。


まあ僕は子供だからわからないけどね。



「それでどうしてあんなとこで寝てたの」


帰宅してしばらくしたら姉が僕の部屋にやってきた、

「風花も心配してたんだからね」


「うん。ごめんなさい」


僕が馬鹿だからこんな事に

心配をかけたままだと悪いので、かいつまんで説明した。


彼女が悪者にならないように気をつけながら。



「ふーん。これは縁がなかったってことね」


「やっぱりそう?」


「縁があればどんな困難でも信じることが出来た。でも彼女にはそれが出来なかった」


人に言われると胸に来るものがある。


「もう他の人と付き合ってるんでしょ」


確証はないけど、そんな感じだった。


「ではここで姉から策を授けてしんぜよう」


その策は僕の規範から大きく踏み外す行為で


「準備はいい?」

「おお!」


人として決してやってはいけない行為だ


アンタに必要なのは彼女からの軛を立つこと


まずはどーんといってみよう





翌日

僕は再び図書室に来ていた。


ここから始めるんだ

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