幼馴染への告白を邪魔した先輩が、責任取って僕の彼女になってしまった

水都suito5656

第1話  楽しみな告白日和

高校入学の日

今日は朝からソワソワしてた。


ついにこの日がやってきたんだよ!


あ、新入生挨拶なら問題ない。それよりも告白文を考えるのが難しすぎた。

お陰で遅刻ギリギリになって登校だ。


「おはよー今日は遅かったね」


そう言って僕に挨拶する美少女がひとり。

長い黒髪をハーフアップにして、僕よりほんの少し背が高い。

僕の幼馴染 伊藤華いとうはな


「またゲームやって夜更かししたんでしょ。叔父さん泣いてたよ」


うっそ、鬼の目に涙だと!


「今日帰ったら謝っとく」


「うんそれが良いよ」


「でさ、なにか言うこと無い?」


そう言ってこちらを上目遣いで見上げる。


かわいい!

そのあざとい行為も普通に大好き!


「うん、今日もかわいい、綺麗だ」


「それは分かってます」


あっそ


「あー」  あのことか


「じゃあ放課後図書室で待っていて」


「うん、了解!」


溢れるような笑みでそういって去っていった。





『高校に入ったら告白して』


『えーなんで今じゃだめなの』


『いいから。そこで告白してよ』


きっとそんなシーンを漫画かアニメでも見たんだろう

俺の幼馴染は結構なオタクだった。






よし!授業も終わった!約束の時間まで余裕もある。


「あ小笠原くん」


「はい先生?」


「悪いんだけど、明日授業で使う資料運ぶの手伝ってくれないかな。結構重くてさ、お願い!」


そう言って担任の林原先生が両手を合わせる。


「僕たちの授業で使うんでしょ」


「そうよ」


「なら、そんなにかしこまらないでいいですよ。どんどん扱き使って下さい!」


「うっわ、今年の生徒優しい」


あたりまえです。そのために日々努力をしてきたんだから。



『何ぼーっと見てるの?女の子が荷物持っていたらすぐ持ってあげること。これ常識だから、辞典にも書いてあるよ』どこに書いているの


『歩道歩くときは車道側を歩くのよ。車が飛び込んだら彼女死守しなさい』


『割り勘って言葉は忘れなさい。男女平等?なら男子はお化粧してる?

綺麗な服来なきゃ怒られない?女子はねいろんなことにお金が必要なの!

光熱費なのよ、女子維持費。

労ると思って女子に還元しなさい。とりあえず喜ぶわよ』



これらの事は全部幼馴染から教わったこと。

一部腑に落ちないところもあったけど、細かいこと男が気にするもんじゃないらしい。これも彼女の言葉だけど



「小笠原くん男前だね!」


「ありがとうございます。先生も可愛くて素敵です」


「そっかな、えへへ」


うわ、ちょっろ!



「なにか言った?」


何も言ってません。



「ありがとう、たすかった」


「いつでも言って下さい、先生の為ならなんだってやりますよ」


「あはは。そういう事は彼女にでも言ってね」


そう言って先生と職員室で別れた。


約束の時間まで後10分くらい。そろそろ向かうか。


そう考えて振り返った先に・・・1人の女生徒がいた。


「うわーちっさい」


その人は廊下にある掲示板に背伸びをしながらポスターを貼ろうとしてた。

だが残念身長が全く足りなかった。


ぴよんぴよんと跳ねる様子が可愛かった。


餌をせがむ子犬みたいだな


そんな事考えている場合じゃない!間に合わなくなる!


職員室から図書室へは迂回しなければならず、結構離れている。


ごめんね、名も知らない女生徒さん

自らに課した掟を見ないふりして、僕はその場を離れようとした。その時


「きゃああああ」


そんな叫び声と一緒に何かが床に倒れる音。

咄嗟に僕は駆け寄った。


「大丈夫ですか!」


「いたたた」


「何事なの?」職員室から別れたばかりの担任が現れた。


「あなた大丈夫?って菊池さんじゃない」



「あはは。お騒がせしてます」

「先生知ってるの?」


「知らないのって君、ああ新入生だったわね。彼女がうちの高校の生徒会長よ」


知らなかった。てことは姉と知り合いかも


「困ったわね、職員室今私しかいないんだよ」


「ぼくが保健室まで連れていきます」


「頼めるかしら」


「ハイ大丈夫です」


「菊池さんもそれでいい?」


「わたしはこれくらい大丈夫ですよ!」


彼女はそう言って、立ち上がろうと手首を床についた瞬間


「いった」と言って涙目になった。


「他にどこか痛いとこない?」


そう聞かれてあちこち動かしていたら、


「あ、歩けないかも」


見ると彼女の右足首が紫色に変わってた。


「幸い保健室も近いから菊池さんの事お願いね」


「はい、任せて下さい」


「ごめんね」


「大丈夫ですよ。先輩軽いから」


「それは私が小さくて可愛いってことかな?」


「そうそう。小さくて愛らしいからお家に持って帰りたくなります」


「・・そこは、なんでやねんって突っ込んでよ。・・・自分で言ってて恥ずかしいじゃない」


いま僕は先輩をお姫様抱っこして、保健室に向かっていた。

自分で歩くと言ったけど無理だった。反対側の足も痛いらしい。



「ご苦労だったね」


「いえ先輩軽くて助かりました」


「もし次もあったらだけど、重いとか軽いは厳禁だよ。女子的にはね」


「わかりました気をつけます」


僕はそう言って保健室を後にしようとしたとき、


「まって、君の名前教えて!」


「小笠原です」


「小笠原?・・そう。私は風花。菊池風花よ。運んでくれたありがとう」


その言葉に僕は罪悪感を覚える

あの時見て見ぬふりさえしなければ、怪我しなかったんじゃないか。

そんな後悔が。


「じゃあ、お大事に」

「うん、ありがとう」


こちらこそすみませんでした。

僕は心のなかで謝る。幼馴染からの訓示はやっぱり守るべきだった。


困った女子がいたら何も言わないで助ける。

理由は後から考えても遅くないって。


「あれ、いま何時だろ」


すっかりのんびりしていたら、約束が会ったことを思い出した。


「まずい!」


僕は校内だというのにもかかわらず全力疾走した。


間に合ってくれ!





「そんな・・」


図書室は既に閉まっていた。18時が閉館時間だった。

スマホが振動した


「もしもし!」


『・・・航大何でこなかったの』


「ごめん!ちょっと急に用事ができて。いまどこ?」


『もういいわ。』


「すぐ行くから」


『校門の前』


「すぐ行く!」


再び校内を全力疾走した。

息が苦しい、でも今は走れ!





校門に人影が見えた・  1人は幼馴染の彼女

もう一人は誰だろう


「ごめん、おくれて」僕は荒い呼吸のままそう言った。


「今日が何の日か知ってるよね」


もちろん、何年も前から


「航大の本気ってそんなもんなんだ」


彼女は僕の目も見てくれなかった。


なにか言わなくちゃ

でもなんて言えば

時間だけが過ぎていった


「わかった」


分かってくれたんだ!


「じゃあ・・」


「先輩行きましょう。どこか連れて行ってくれるんですよね」

え・・


「ええっと、彼氏の事良いの?」

その男はそう言って僕と幼馴染を見る。


気遣いが出来るイケメンなのが腹が立つ


「・・・いいよこんなの」


ごめんねそう言って、彼は僕の幼馴染に腕を取られ去っていった。


静寂の中、僕の心臓の音だけが激しく聞こえた。


何だよこれ


何で聞いてくれないんだ・・

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