第4話フェード現象
2人は、朝8時に目が覚めて旅館の朝ご飯食べると、目的地の渡月橋に向かった。
紅葉は既に終わった12月。
運転に自信が着いた洋一は、車のエンジンを掛けて、助手席にいずみを乗せて出発した。
行きは、登り坂ばかりの道でつづら折りが続いたが、帰りは反対。
くだり坂につづら折り。
洋一は、カーブの連続で、フットブレーキを多用した。
そして、長いくだり坂に入った途端、洋一が青ざめる。
ブレーキペダルを踏んでも、減速しないのだ。
様子を見ていた、いずみは、
「どうしたの。こんなスピードで坂下るの危ないよ!」
と、言うと、
「違うんだ!ブレーキが効かないんだ!」
そう言うと、いずみは、
「3速か2速にギアを入れてっ!」
「わ、分かった」
少しではあるが、車は減速した。
長いくだり坂が終わると平坦な道にさしかかり、さらに減速して、車を止めた。
「こ、故障かなぁ〜」
「洋一、フットブレーキの使い過ぎの、フェード現象だよ」
「あっ、油圧が沸騰するあれか?」
「しばらく、ブレーキパットを冷やす為に、休憩しようよ。後、私が運転する」
タバコを咥えた洋一は、
「いずみは、МT車の免許あるの?」
「うん」
「じゃ、お言葉に甘えて」
30分ほど経って、車はいずみの運転で出発した。
しばらく、低スピードで走り様子を見ながら運転した。
渡月橋付近の駐車場は、紅葉の後だが、観光バスが並び、やっとの事で到着した。
2人は渡月橋で写真を撮ったり、お土産屋を回った。
2時間ほど、滞在して帰りの道を走り出した。
いずみの方が格段と運転は上手かった。
「洋一、あなた、ペーパードライバーでしょ?」
「な、なんの事かのぅ」
「運転、下手だもん。私、坂道発進の時は祈ったもん」
「ご、ごめん。МT車もちろん、AT車も5年運転してないんだ。これからは、いずみの助手席で楽しむわ」
「だめ。私がコーチになってあげるから、先ずは坂道発進の練習ね?裏山でできるでしょ?洋一くんちの林道で」
「うん」
「でも、何でも出来る彼氏より、弱点がある彼氏の方が気楽だし、かわいいよ」
「そ、そうかな?」
「だって、会社ではめちゃくちゃ仕事できるし、運転が下手って馬鹿みたいで嬉しい」
「ば、馬鹿はないだろう。アハハハハ」
「アハハハハ」
2人は2年後結婚した。
車を貸した弟は、スカイライン結婚と呼んだ。
そして、2人に「安産祈願」と、「交通安全」のお守りを渡した。
そう、いずみのお腹には、洋一の子供がいるのだ。
ここらで、ペーパードライバーの物語は終わりにしよう。
終
ペーパードライバー 羽弦トリス @September-0919
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