第2話公道へ

洋一は何とかクラッチを繋ぎ、1速、2速とギアチェンジした。

思い出した!

洋一はすっかり、自動車学校で習った運転で林道から、公道へ進んだ。

しかし、油断は出来ない。

「洋一、スカイラインだから、もっと飛ばしてよ!」

「……」

「ねぇ、私の声聞こえてる?」

「歩行者確認、一時停止」

洋一は横断歩道に立つ、歩行者を確認すると、停止線で一時停止した。

歩行者は洋一に頭を下げて横断歩道を渡った。

「洋一!何で、横断歩道手前で止まるのよ!まだ、間に合ったじゃない」

洋一は前方を見ながら、

「横断歩道の一時不停止は、違反点数2点、罰金9000円だよ!オレはゴールド免許証なんだから、黙ってろ!」

「は〜い」

洋一は運転は下手だが、道路交通法には詳しかった。

いずみは、YouTubeで音楽を流し始めた。そして、曲に乗って歌い始めた。

「は〜るばる、来たぜ函館ぇ〜♪」

「左折確認、巻き込みヨシッ!」

「さ〜かまく波を〜乗り越えてぇ〜♫」

「踏み切り確認、一時停止。右ヨシッ!左ヨシッ!」

洋一は、額から脂汗をかいていた。

「ねぇ、洋一ッ!暑いの?」

「う、うん。冷房入れて」

「12月なのに?」

「うん」

車は国道1号線を走り出し、既に四日市の道路に差し掛かっていた。


途中、コンビニに寄りトイレ休憩。

いずみは2人分の飲み物を買い、トイレを済ませた洋一は、煙草を吸った。

弟の車は、禁煙車だった。目的地に18時に着けば良い。

四日市を過ぎれば、ゴールは近いと思われたがなんのその。

再び車は動き出した。12月だ。17時超えると夜のとばりが下りる。

洋一はライトを付けた。ワイパーが虚しく動く。

「いっけね。こっちか?」

ライトを付けた。山道を走り出した。京都に着いてから、長い山道を走った。

いい加減、洋一は疲れてきた。

「ねぇ、洋一」

「なんだい?」

「間に合うかな?」

「十分。ほら、ナビには目的地まで後15分だろ?」

「じゃ、間に合いそうね。一曲歌おうよ一緒に」

洋一は、山道を走り信号で停車した。スカイラインの真後ろには、タクシーが停車している。サイドブレーキを引いた。

……うっ!坂道発進か!自動車学校でも1回しか成功しなかった坂道発進。

「アタマは冴えてるよ!ヘイヘヘイ♫」

「……」

「アイデアバッチリよ!ヘイヘヘイ♪」

「……ヘイ」

後ろのタクシーが軽く、クラクションを鳴らした。

信号は青色に変わっていた。

震える左手でサイドブレーキを下ろし、ギアを繋げようとした。

左足も震えていた。

さぁ、どうなる?

成功か事故か?答えは2つのうちどちらかだ!

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