vsホブゴブリン

 敵は格下のゴブリンファイター4匹と同格のホブゴブリン1匹。


 そして、敵はこちらに気付いていない。


「カリン、最初にファイターを始末するぞ」

「はい」

「接近される前に2体倒せるか?」 

「倒せると思います」

「OK。残り2体は【居合】で倒そうと思うが……しくじったらフォローを頼む」

「アオイ君がしくじるところを見たことはありませんが、任せて下さい」

「残ったホブゴブリンは、火力が高そうだから……カリンは絶対に近付かないようにしろよ」

「はい!」


 カリンは生粋の遠距離アタッカー。最大の弱点は耐久力だ。初見のホブゴブリンは体躯から判断するに、攻撃力が高そうだ。万が一の事故を防ぐためにも、前衛の俺はカリンに近付けさせない立ち回りを心がける必要があるだろう。


「それじゃ、いこうか」


 カリンに目で合図を送ると、カリンは弦を力強く引き、


「――【パワーショット】!」

「ギャッ!?」


 不意を突いて放った矢で、左端にしたゴブリンファイターの頭部を射抜いた。


「ギィ!」

「ギィ! ギギィ!」


 こちらの存在に気付いてゴブリンファイターたちが騒ぎ始める。


「――【ダブルショット】!」

「ギャッ!?」


 カリンは続けざまに、一番最初に動いたゴブリンファイターの頭部を素早く放った2本の矢で射抜いた。


 完璧だ。


 勝手知ったるなんとやら……思えば、ライブオンラインのβテストが開始した日から、カリンとはずーっと一緒にいる。そんなカリンは俺の望む通りの動きを見せる。


 カリンが距離的と動き的に判別し、2体のゴブリンファイターを排除してくれた結果――残った2体の近くにいたゴブリンファイターは、ほぼ同時にこちらへと向かってきた。


「ギィ!」

「ギィ! ギィ!」


 後は、俺がゴブリンファイターからカリンへの動線上に待ち構えるだけだ。


「――【玄武の型】!」


 左足を前に前屈みになり、右手は鞘を掴みながら親指でつばを柄の方に押し出し、利き手である左手で柄を軽く握り、敵との間合いをはかる。


 ――!


「――【居合】!」


 目にも留まらぬ速さで抜刀された刀身が、2体のゴブリンファイターを同時に斬り裂いた。


 よし! スキルは使ってしまったが、これでホブゴブリンに対して2対1と優位な状況になった。


「――【青龍の型】!」


 俺は使い慣れた構えを取り、ホブゴブリンと対峙する。


「ギィ!」


 奇声を上げ、ホブゴブリンは手にした無骨な剣を振り上げる。


 初見の敵って本当に嫌だな……。口から変なの吐いたり、意表を突いた蹴りとか体当たりとかないよな……。


 俺は刀の切っ先をホブゴブリンに向けた状態で、無骨な剣を持つ手、腕、肩の動きに注目する。


 初見相手の理想は後の先……来い、来い!


「ギィ!!」


 肩の筋肉が膨張すると、ホブゴブリンは無骨な剣を振りかぶった。


 来た!


 俺は振りかぶった剣に意識を集中させ、


「――【切り払い】!」


 振り下ろされた無骨な剣を、タイミング良く『千姿万態』で弾いた。


 武器が後方へと弾かれたことにより、剥き出しとなった胴体にカリンの放った矢が刺さる。


「ギィ!?」

「まだだ……! ――【雷閃】!」


 俺は力強く地を蹴り、雷と化し、突き出した『千姿万態』の切っ先を苦悶の表情を浮かべるホブゴブリンの喉元へと突き刺した。


「ギィ!?!?」


 ホブゴブリンの目にはまだ命の輝きが見える。


 流石に倒せはしないか。


 俺は追撃より安全を優先し、バックステップで距離取った。

 

「ギィィィイイイ!」


 ホブゴブリンは体勢を立て直すと、怒りに満ちた視線を俺へとぶつける。


 【居合】のCTは残り10秒ほどだろうか。


 【玄武の型】を構え、【居合】でトドメを刺そうかと模索していると、


「――【パワーショット】!」


 後方より力強く放たれた一本の矢がホブゴブリンの右眼に突き刺さった。


「ギィィイイ!?」


 ホブゴブリンは右眼を押さえながら、悶えている。


 いくしかないな。


 俺は地を蹴りスキルに頼らず、『千姿万態』を悶え苦しむホブゴブリンへと振り下ろした。


「ギ……ギィ!?」


 ホブゴブリンは右眼を押さえたまま地に倒れ、光の粒子と化して消え去った。


「ふぅ……」


 額に滲んだ汗を拭うと、


「アオイ君、お疲れ様です!」


 笑顔のカリンが走り寄ってきた。


「当面は、同格のこいつで経験値稼ぎだな」

「はい!」


 再び同格の敵が出現したことで、鈍化していたレベル上げも加速するはずだ。


「それじゃ、道中の敵を狩りながらダンジョンコアを目指しますか」

「はい!」


 俺とカリンは、再びダンジョンコア目指して、足を進めるのであった。



★☆★あとがき☆★☆

いつもお読み頂きありがとうございます。

また、今回の震災でご心配のお掛けしました。お気遣いありがとうございます。

X(旧Twitter)や書籍の後書きにも記載しておりますとおり金沢在住ではありますが、幸いなことに家族含めて、全員無事です。


さて、本題となります。

ライブオンラインのストックはこちらの話で尽きました。私としては執筆していて楽しい作品ですが……読者さまとしてはいかがでしょうか?(少し展開が遅いかもですね……)


とりあえず、今後は連載が不定期となります。(週1以上のペースでは投降できれば……と思ってはおります)


この作品が面白いと思って頂けたなら、ブックマークや☆……レビューなどで応援よろしくお願い致しますm(_ _)m


最後に、本年もよろしくお願い致します。


2024年1月7日 ガチャ空

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