基本クラス考察①

「どこで稼ぎますか?」

犀川さいがわの河川敷でいいんじゃないか?」

「先程と同じ場所ですか?」

「ゴブリンが大量に生息していたし、鉄鉱石を採っておけばミランも経験値が稼げるだろ」


 装備品の生産や強化でも経験値稼げるらしい。ミランは防具一式を作ってくれるし、祝福ギフト的にも末永くお付き合いしたい存在だ。


 恩は売れるだけ売っておいたほうが賢明だろう。


「アオイ君は誰にでも優しいのですね」


 カリンは純粋無垢な視線をこちらに向ける。


 クッ……そんな澄んだ目で俺を……打算的な気持ちも多少は……いや、コレは打算的というより、戦闘職と生産職のしかるべき関係――いわるゆ、ウィン・ウィンの関係……だから、お願い……そんな純粋無垢な目で俺を見ないで……。


「とりあえず、犀川の河川敷に向かうか」

「はい!」


 俺はカリンと共に再び犀川の河川敷へと向かうことにした。



  ◆



「そういえば、カリンはなりたい基本クラスは決まったのか?」


 道中、ポムスラを狩ってもろくな経験値にはならないので、雑談を交わしながら歩みを進めた。


「基本クラスですか? 得意武器を考慮すると……戦士か狩人か冒険者か巫女……あとは僧侶ですかね。アオイ君はどれが良いと思います?」

「僧侶?」

「はい。ナビゲーターによると、僧侶からなれる上級職である賢者の得意武器が弓らしいです」

「上級職? 賢者? ナビゲーターってそんなことも教えてくれるのか?」

「はい。教えてくれましたよ」


 メティ、上級職について教えてくれ。


(申し訳ございません。その情報は蓄積されておりません)


 は?


「カリン、俺のナビゲーターは壊れてるのか上級職について教えてくれないようだ」

「え? そうなのですか? おかしいですね……ちょっと待って下さいね」


 カリンはそう言うと、立ち止まり、視線を上に向ける。ナビゲーターに質問しているのだろう。


「……えっと、私のナビゲーターも答えられませんでした」

「だろ? カリンは何て聞いたら賢者のことを教えてくれたんだ?」

「えっと……オススメの基本クラスはありますか? って聞いたら、弓を扱えるクラスを推奨しますって言われて……弓を使えるクラスを聞いたら教えてくれました」

「隠しコマンドみたいな設定だな」


 俺はカリンの答えに苦笑し、改めてメティに問いかけた。


 メティ、刀を扱えるクラスを教えてくれ。


(侍などが刀を得意武器としております)


 ほぉ……侍とは?


(戦士からクラスアップできる上級職です)


 侍以外に刀を使えるクラスはないのか?


(申し訳ございません。その情報は蓄積されておりません)


 なるほどね。聞き方次第で、色々な答えを教えてくれるのか。


 後で、色々と試してみよう。


「アオイ君、私はどの基本クラスがいいと思います?」

「んー、普通に考えると巫女だが……狩人も悪くはないな……」

「巫女か狩人ですか?」

「まだ情報が少ないから何とも言えないが……俺がカリンなら巫女か狩人を選ぶかな」


 祝福ギフトを考慮すれば、込めるべき異能――魔法が使えるであろう巫女のほうがマッチングはすると思うが、カリンの弓の腕を考慮すると狩人になって純粋にアタッカーとしての性能を伸ばすのもありだと感じた。


「なるほどー。参考にしますね! ちなみに、アオイ君は決めているのですか?」

「基本クラス?」

「はい」

「まだだな。時間はまだあるし、情報をもう少し集めてからだな」

「いざ決めるときになったら相談に乗って下さいね!」

「別に構わないが……カリンにはミランもいるし、一緒にライオンを始めた友人も色々とアドバイスをしてくれるんだろ?」

「そうですね。友人にも相談する予定ですが……今の私――カリンを一番知っているのはアオイ君ですから!」

「出会ってまだ2日目だけどな」

「もうっ! 素っ気ないのはよくないですよ」

「んじゃ、素敵なアドバイスが出来るように、ナビゲーターに質問しながら歩くから、周囲の警戒よろしく」

「はい!」


 俺は犀川の河川敷を目指しながら、メティへの質問を始めた。


 まずはステータスについてだな。


 メティ、戦士と闘士のVITの成長率は共に○だが、レベルアップを重ねると、値に違い出るのか?


(出ません)


 オンラインゲームで成長する値に乱数は用いないか。


 現在の俺のクラスはノービスでレベルが1上がるたびに成長値は……STRが3、DEXが2で、残りのステータスは1だ。


 そして、攻撃師範に師事して、その時に使用した武器が刀のときの成長補正は、STR+2とDEX+1。


 ってことは……メティ、ノービスについて教えてくれ。


(かしこまりました。

 ノービス すべてのクラスの基本となる守護者

 得意武器 なし

 防具   軽装 

 STR▲ MAG▲ VIT▲ AGI▲ DEX▲ MEN▲)


 予想はビンゴか?


 ▲の成長値は+1なのは確定として……。


 メティ、◎の成長値は+4、○の成長値は+3、△の成長値は+2、▲の成長値は+1、✕の成長値は0?


(違います。◎の成長値は4ではありません)


 ん? なら、+5とか?


(肯定です)


 ナビゲーターメティは、聞けば教えてくれるけど、聞かないと教えてくれない。また、一部は聞いても教えてくれない。


 そうなると、闘士を除いたすべてのクラスの成長する値の合計は12となり、闘士だけが14となる。


 闘士の説明にある『武器の扱いは苦手な反面、高い身体能力を誇る』とは、そういうことなのだろう。


 ってことは、神器の武器種は自動的に得意武器扱いになるから……俺の場合、デメリットはなし?


 いやいや、待て待て……んな訳あるかい!


 普通に考えて、クラスの特徴はステータスの成長率のみに非ず。むしろ、メインに考えるべきは習得するスキルだろう。


 メティ、各基本クラスが習得するスキルを教えてくれ。


(お伝えできるのは代表的なスキルのみとなりますが、よろしいでしょうか?)


 代表的なスキル?


(はい。例えば、戦士であれば【リミットブレイク】を習得します)


 基本クラスにあるまじきカッコいい名称のスキル名称だ。


 代表的ということは、他にも習得するスキルがあるのか?


(マスターが望む情報は、私をアップグレードすることでお答え出来るようになります)


 アップグレード?


(はい。人、或いは書物、うたなどから得た情報を私にインストールすることで、アップグレードが可能となります)


 ゲームのRPGなどにある、本棚の本を調べたり、人と話すことで、システムの記録レコードが更新されるみたいやつか?


 経験値をすぐにでも稼ぎたいが……この情報をそのまま放置するわけにはいかないな。


「カリン、すまない! 離席してもいいか?」

「離席ですか?」

「あぁ……えっと、少しログアウトしてもいいか? すぐに……10分ほどで戻る」

「あ、はい。わかりました」


 俺はメティから得た情報を精査すべく、ログアウトするのであった。

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