戦闘のコツ
一体何匹のポムスラを倒しただろうか。
最初は10回攻撃して1回聞ければいい方だったメティの『ヒット!』の声が、今は10回攻撃すれば9回は聞けるようになった。
コツは掴んだ。
青龍の型からの攻撃であれば、成功率は9割。
刀の扱いは、叩くのではなく――斬る。押すのでなく、刀身を滑らせ――引くのがコツだった。
夢中にポムスラを倒し続けた結果、レベルも1から3へと成長した。
さて、当初の目的であったクエストノルマの10匹はとっくに達成している。
攻撃師範の元に戻って、クエスト報告をしてきてもいいが、【朱雀の型】からの攻撃も試してみたい。
イメージとしては、【
ポムスラはすでに
「――【朱雀の型】!」
刀を持つ両手を振り上げ、ポムスラと向き合う。
このまま振り下ろしても……多分叩くみたいな感じになるから……斬ることを意識して……滑らせればいいのか……?
構え――初動が変わると、軌跡も大きく変化する。
まぁ、色々と試してメティの『ヒット!』を引き出すか。
すり足でポムスラきにじみ寄り、間合いに入ったタイミングで刀を振り下ろしたが、
――ぐぇ!?
跳躍したポムスラが体当たりのような形となり俺の
硬っ! ゼリーみたいな見た目の癖してめっちゃ硬くて痛いぞ!
咳き込んでいると、ポムスラはチャンスとばかり再度体当たりをしてくる。
痛っ!
(タイミング良くガードをすることで被ダメージを大幅に減らすことが可能です)
初めてダメージを受けて痛がっていると、メティが助言をくれた。
ガード?
(武器で相手の攻撃を受け止めてみて下さい。盾があればより簡単にガードするが出来ます。また、籠手を装備していれば腕で受け止めることも可能です)
と言われても、盾も籠手もないから……武器か。
俺はポムスラと距離を取り、慣れた【青龍の型】で構える。
せっかくだ、ガードを試してみるか。
俺はリズミカルに上下に揺れるポムスラに集中し……、
――!
今だ!
両手に持った刀で体当たりしてくるポムスラを受け止めた。
――ッ!?
腕に少しの衝撃は感じたが、先程と比べると痛みはないに等しい。
なるほど……これがガードか。
攻撃の基礎を学べた気がした俺はポムスラを一刀のもとに切り捨てた。
【朱雀の型】からの攻撃だけじゃなくて、ガードの練習も必要になったか。
んー、どうすっかな?
このままポムスラで練習していてもいいが、
一旦『初心者クエストⅠ』を完了させるか。
俺はポムスラ狩りを終え、カナザワシティの道場へと戻ることにした。
◆
道場に戻った俺は攻撃師範に入手試験を達成したことを報告した。
「うむ。よくやった。その方の入門を許可する。この『見習い許可証』と、入門の祝いとして『見習いの刀』を授けよう」
え? ……いらない。
このクエストは、初期のプレイヤーに武器を渡すために設計されたのだろう。
「む? 不服か? 残念ではあるが、入門を取り止めても構わないぞ」
「あ、違います。え、えっと……ありがとうございます!」
やばっ……不満が顔に出てしまったようだ。俺は慌てて取り繕い、攻撃師範に頭を下げて感謝の言葉を伝えると、そそくさと道場を後にした。
さてと、『見習いの刀』はともかく『見習い許可証』を入手出来たから、協会に言ってクエスト達成を報告してくるか。
俺は守護者協会へと向かった。
守護者協会のカウンターは相変わらず長蛇の列を作っていた。
クエスト報告をするときって、毎回コレに並ぶのか……。リアル過ぎたVR世界の弊害だな。
ここは、テスターとして運営に要望を出しておくか。
(マスター、クエストの報告であれぼ『端末』からでも可能です)
え? そうなの?
(はい)
凄いな、ライブオンライン!
俺は鼻歌交じりに『端末』を操作し、クエストアプリから『初心者クエストⅠ』の達成を報告した。
(マスター、クエスト達成おめでとうございます。報酬はポーション3個とポーションホルダーなります。今回のクエストを達成したことにより、新たなクエストが解放されました)
ポーションホルダーとは、銃弾ホルダーのような形をした腰に装着するポーションを持ち運ぶためのアイテムのようだ。
メティの言葉通り、クエスト一覧を確認すると新たなクエスト――『初心者クエストⅡ』が出現した。
『初心者クエストⅡ』のクエスト内容を確認すると、
『フレンドとパーティーを組みましょう。こちらのクエストはフレンドとパーティーを組んだ時点で達成となります』
へ?
(初心者クエストⅡはフレンドとパーティーを組んだ時点で達成となります)
……いや、それは理解はした。フレンドって……?
(フレンドとは、互いにアドレスを交換したプレイヤーです。アドレスの交換方法は『端末』からフレンドになりたいプレイヤーを選んで、フレンド申請を選択してください)
えっと……フレンドを作って、パーティーを組むことが必須ってこと?
(こちらのクエストを達成するための条件となります)
2つ目にして、超難解なクエストにぶち当たったのであった。
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