初心者クエストⅠ
とりあえず、見様見真似でやってみるか。
周囲にいる木偶を叩く人たちを見ながら、目の前の木偶を刀で切ったり、突いたりと、でたらめに攻撃してみた。
(【刀術】を習得しました)
(【
――!?
(一定の熟練度が溜まったことで新たなスキルを習得しました)
スキル?
(はい。名称を詠唱するか、動作を一致させることで、スキルは発動します)
名称の詠唱か、動作の一致……?
動作の一致言われても、その動作が分からない。
ってことは……、
「――【青龍の型】!」
身体が自分の意思とは無関係に動き出す。腰に差してある刀を抜刀すると、右足を前に半身となり、左の脇をしめ、柄をへその位置に、切っ先を木偶の喉元へと向け構えた。
初めて取る格好の為か、少し窮屈だ。
……以上?
よくよく周囲を観察すると、『スラッシュ!』とか『スマッシュ!』とか叫びながら、素人とは思えない
念のため……、
「――【朱雀の型】!」
今度は、左足を前に半身となり、柄は目の位置と高く、刀を持つ両腕を振り上げた形で構えた。
……。
【青龍の
【刀術】のスキルはまさかの構えだけなのか……。
ってか、青龍とか朱雀とか格好良く言ってはいるが、要は中段の構えと上段の構えだろ? と、いうことは次に覚えるスキルは下段の構えで白虎か玄武の構えあたりか?
格好良く木偶にアクティブスキルを打ち込む他のプレイヤーを目にしながら、俺は【青龍の型】と【朱雀の型】――中段、上段の構えを繰り返してみた。
ダメだ……
ここでの用事はもう済んだか?
(はい。マスターは基本となる武器スキルを習得しました。クエスト達成を目指し、
それじゃ、外へ向かうか。
俺は道場を後にし、外へと向かうのであった。
◆
メティのナビゲートに従い、金沢駅……もといカナザワシティの東口から外へと出ると――、
おぉ……駅周辺の情景がまったくないな。
建ち並んでいたビルディングは倒壊しており、アスファルトで固められていた地面も雑草が生い茂っており、所々から茶色い土が見えていた。
金沢市をモチーフにマップをデザインしても、区画整理された街並みがなくなったら、情景は消えるか。
(こちらです)
腕に装着している『端末』に表示された地図を見ながら、南下すること3分。
目の前にはもふもふのピンクの毛を生やしたバスケットボールサイズの球体が跳ね回っていた。
アレがこの
(はい。目の前のモンスターは『ポムスラ』。危険度は
危険度?
(はい。危険度はマスターとの力量差を示します。
へぇ。メティはそんなことも分かるのか。
(【アナライズ】を習得すれば、更なる詳細なデータを把握することが可能です)
色んなスキルがあるようだが……まずは戦闘だ!
俺は腰に差した刀の抜刀し、
「――【青龍の型】!」
構えを取って対峙するが、ポムスラはそんな俺を気にすることなくふよふよと飛び跳ねている。
向こうから襲っては来ない……?
人畜無害のモンスターなのか??
「悪く思うなよ! タァー!」
気合いと共に振り下ろした刀はポムスラを両断。真っ二つになったポムスラは光の粒子となって消え去った。
(ポムスラは消滅しました。1の経験値と『ポムスラの粘膜』を取得しました)
「お!」
記念すべきこの世界での初戦闘は――まさかの
「おぉ。敵が弱いのか? 俺が強いのか? はたまた――」
俺は手にした刀――『千姿万態』に視線を向けた。
(ポムスラはこの世界では最弱のモンスターとなります。一撃で倒せた理由はマスターの
なるほど。武器の性能が大きいか。
(はい。そして、マスターは
(はい。稚拙な攻撃であったと断言します)
断言かよ。
(よろしければ、攻撃アシスト機能モードを有効にしますか?)
攻撃アシストモード?
(はい。マスターが正しく攻撃できた場合のみ『ヒット』とお答えします)
アシストってそれだけ?
(はい。刀は他の武器よりも扱いが困難です。叩くのではなく斬ることを意識して下さい)
叩くではなく斬るね……。
イマイチピンとこないが、頑張ってみるか。
俺は通常攻撃をマスターすべく、ポムスラ狩りを始めたのであった。
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