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俺のせいだ。何故だ、今日までは、退勤までは、とても順調だったじゃないか。自分への怒りの感情が止まらない。
目の前で蒼くんが肩を上下にしている。呼吸が上手にできていない。
「僕は……僕は、あなたは、誰なんですか?」
初めて聞く、厳しく非難する様な声音。初めて見る睨みつけるような目から、涙が溢れ頰を顎を首をつたっている。
「ごめんね、ごめん、ごめんね……。」
俺に泣く資格はないのに、涙が止まらない。唇だけはそう動いてるけど、声が喉のところで詰まっている。強く握られた拳を上から強く包んだ。
さっきまで2人握っていた手は行き場所を探すように、落ち着くポジションを探し動いていた。しばらく車内には2人の鼻を啜る音と呼吸音だけがした。あぁ、俺が今すぐ蜂蜜とカフェオレにでもなって蒼くんを癒せる存在になれたらいいのに。俺は、苦しめることしかできなかった。
呼吸を整えているうちに、泣き疲れてしまったのか、蒼くんは寝息を立てていた。その様子に俺は声を殺して泣いた。
第二章 終
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