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やがて店長もお店にやってきた。期間限定のメニューに悩んでいたが、パウンドケーキを作ることにしたらしい。俺は焼き菓子に目がないので、ウキウキしながら店長と作戦を練っていた。時々蒼くんを見ると、楽しそうな顔でこちらを見ていた。ドキッとしてしまったことは内緒だ。
店長と構想を練りながら試作で作ったみかんのパウンドケーキは最高に美味しかった。毎日食べたいくらいだ。以前買ってきていたアールグレイが役に立つ時が来た。
「紅茶との相性最高だね!!ナイスだよ、柳くん!!」
店長も興奮気味だ。
「本当ですね!!買ってきててよかった〜。」
ちらっと蒼くんを見ると嬉しそうに食べている。よかった〜。
「そういえばさ、柳くんはかなり焼き菓子好きだけど、何が1番好きなの?」
「フィナンシェですね!小さい頃に手作りのものをもらって、それがすごく美味しかったんです。熊の形で焼いてくれて、形も可愛かったから忘れられないです。」
「フィナンシェかぁ、フィナンシェもいいよねぇ。私も大好き。好きなきっかけもなんだか素敵ね。」
「我ながらそう思います。あの味がなぜか忘れられないんですよね。自分でもよく作るんですけど、不思議と同じ味の再現ができないんです。」
「確かに。料理もお菓子も、レシピ通りに作ったって作る人が変わると味も変わるのよねぇ。不思議だけどそこがまた魅力よね。」
焼き菓子を食べながら焼き菓子の話をする、なんともいい時間だった。今日帰ったらクッキーでも焼こうかな。
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