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「1番卓にブレンドとホットのはちカフェをお願いします。」
「はいよ〜」
朝一番に来たお客さんのオーダーを口にしながら、壁にメモを貼り付ける。蒼くんのその動作を横目に準備をする。
予め、使用するカップにはお湯を注ぎ温めておく。小鍋には牛乳を注ぎ温め、仕込みの時に挽いておいた豆を、セットしたフィルターに1人分入れる。サッと熱湯を注ぎ、少し蒸らしておく。その間に蜂蜜も加え混ぜたりしながらカフェオレも作っていく。
無事に注ぎ終わったブレンドコーヒーと、蜂蜜入りのカフェオレをそれぞれソーサーに乗せ、カウンターの向こう側の蒼くんに声をかける。
「佐伯くん、1番さんにお願いね。」
「かしこまりました。」
丁寧でゆったりとした動きでトレンチに乗せ、慎重にお客様の元まで届けている。
「よし、作るか。」
身体を温めたいから、作ったばかりのカフェオレをもう一度作る。蒼くんはブラックコーヒーよりカフェオレ派だ。そしてこの、蜂蜜入りのカフェオレがすごく好きだ。お客さんのところに持って行った後は、決まって優しげな顔をしている。残り香を感じているのだろうか。飲むか、と聞くと飲むと答えたので、小鍋には2人分の牛乳を注いだ。
「僕、初めてこのお店に入ってこれを飲んだ時に、この店に通いたいって思ったんですよ。」
「そうなの?その頃から好きだったんだ〜。知らなかった。」
ううん、知ってる。初めてお店に来た時から、注文する時はいつもこれだったよね。あの時は飲んだ後ホッとしたような、なぜか寂しそうな表情をしてて印象的だったな。その後は同じ顔は見なかった。ただ優しく穏やかな表情は共通していた。
少し片付けて、蒼くんを調理場の奥の椅子へ促す。ゆっくり飲んでほしいからね。ふーっと何度も息を吹きかけている姿を見つめ過ぎない程度に見ていた。口に含んで更に優しげなお顔になっていて、すごく癒された……。うん、今日もいい朝だな。
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