第6話
「シレンさん、あなた前世も酒で失敗して、来世も酒で失敗してますね…」
「ふぐ…」
いやな記憶が思い出された。
胸が、実体がないはずの胸が痛い。
おかしい。辛いことなんて酒で全部忘れたはずなのに。
トラウマが大量のアルコールで築いた防壁を簡単に突破してきやがる。
エロゲ。スマホ。マンホール。
アルコールだけに揮発性だったのか。
は! そうだ。だめなスキルなら変更すればいい!
まだ転生前だ。保険適用の範囲内のはず! いまならスキルが変更ができるだろう!
「スキルの変更、スキルの変更をお願いします!」
「うーん。実は先ほどから取り外そうと試みているのですが…」
閻魔の様子がおかしい。
そして手をポンと鳴らしていった。
「うん。無理」
「え?」
「このスキル、すでに魂に固定化されてるので、他のスキルに変更がもうできないですね」
「あ…、それはの、ちょっと呪いの強そうなスキルで構成されているからのう。一度ついたら多分離れぬのじゃ」
「え、何それ。俺の魂にカビでも生えちゃったの? しつこすぎてもう取れないの?」
「…ハクよ、説明してください。シレンさんにわかるように」
ハクの説明を聞いた閻魔が静かに怒りの表情を見せている。
「は、はいなのじゃ…」
ハクが閻魔の怒りに押され流れも、一度コホンと一息ついた。
「そのスキル『捨てる神あれば拾う神あり』はの、転生者レビューで低評価をうけ、ツクモガミ化しそうなスキルを集めたスキルじゃ」
「転生者レビュー? ★1とか★5とか?」
そんなのあるのか。
一部の業者により★5爆撃や★1爆撃とかされてるんだろうか。
「そう、まさにそれじゃ。以前から転生者でスキルをもらったものに対してレビューを取っておっておるのじゃ。のちの改善や新しいスキルの参考にするのためにの。このスキルに入っているスキル達は、それで不運にもめぐり合わせが悪くて、さらには価値を理解せぬ凡俗共によって低評価だったのものなのじゃ」
★1のスキルが集まったスキルと…。
「…つまり、ゴミスキルってわけ?」
俺がそういうとハクはちょっと怒ったような顔を見せた。
「ご、ゴミスキルではないわい! 不運で不遇なスキル達じゃ! 皆、妾がちゃんと愛を込めて作ったスキルじゃ! …ちょっと時世には合わなかったようじゃが」
…評価は人それぞれだよね。
というか、いろいろ言ってるけど結局ゴミスキルじゃないか。
「で、それらの不遇スキルを集めて使用して、あはよくばスキルに合う人に配布するスキルなのじゃ。妾は追放されたらこのスキルで下界を気ままに旅しながら、スキルを理解してくれる人物たちを探して配布する予定なのじゃ」
「配布?」
「あ」
その配布という言葉に反応したのが閻魔だった。
なんかちょっとピキリと来ているのか眉間にしわが寄っていた。
「配布、というのは解せませんね。それは神の権限では? それをあなたは制限のある下界で行おうとしたということですか?」
「ひ、ひぃいいいいい」
閻魔の空気が再びピリピリしてきた。近くにいるだけで心が震える。
そういって俺の方に向いて、何か手を伸ばしたがあきらめた様子を見せた。
「く・・・今から改造することはさすがにできない。ここまで定着していれば、魂が崩壊する可能性がある」
それは怖いからやめてくれ。
閻魔は再びハクの方へ向いた。
「ハクよ、次に戻った際には必ず破壊しておきますね」
「うぐ…。丹精込めて作ったスキルなのに…」
「いいですね?」
「わ、わかったのじゃ…」
なんか、話の結論が出たようだけれど、俺のスキルは変わっていない。
「つまり、俺は元のチートスキル達は使えなくなって、不運で不遇なスキル達が代わり手に入ったと」
「…そうなるのじゃ」
俺のスキル転生、終わった。
チート転生による楽勝人生が…。
終 S・R・N
倒れている俺に対して、ハクが申し訳なさそうに声をかけた。
「すまぬのじゃ。まさかシレンの元に行っておるとは思わなんだ。ちゃんとしまっておいたのじゃがのう…」
「う、ううう…。いいよ。俺が酒飲みすぎてしまったのが原因なんだ。最悪、スキルなしでの転生だと思っていこう…」
スキルなしでもやっている転生物語はある。
ないならないでやってやる。可能性は低くともできないことはないはずだ。
「そのな、言いづらいのじゃが、それらのスキルは使わないとツクモガミ化するのじゃ」
「ツクモガミ?」
そういえばさっきも言ってたな。
ツクモガミって確か、長年使われなくなった道具が妖怪となって人を襲うってやつだよな?
「スキルは魂に付属するじゃろ? だからスキルは長らく使われないと、魂の妬み嫉みなどという不純なものが魂からスキルに流れ込んで暴走するのじゃ。その後は飛び出て武器や防具についたり魔物についたりする。最悪人そのものにつくこともあるのじゃ…」
「え、何それ。呪物? 俺いつの間にか20個どころじゃない呪物を抱えちゃったわけなの?」
いずれ俺自身がツクモガミになっちゃうわけ?
「そうなのじゃ。特にそのスキルは不遇スキルをたくさん抱えておるから、怨念がたまりやすいのじゃ。妾であれば神であるからそれらをたやすく抑えられるのじゃが、このままだとおぬしは普通のモブじゃからのう、スキルがぽんぽこ暴走するのじゃ」
「…まじで」
「まじなのじゃ。だからスキルを定期的に使っていくか、他の人に譲っていかないといけないのじゃ。それをやらないと」
「…やらないと」
「なんか爆発するのじゃ」
「いやだああああああああ!!!!!!」
スキル転生、来世を迎える前に爆死が確定しました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。