第2話
なんて言った? 到底転生の間では聞きそうにない言葉を聞いたんだが。
「ガチャです」
「なんで急にソシャゲ?」
ソシャゲはそれなりに好きだったけどさ。
この流れで死後にガチャ回すって誰が想像したんだ。
「いやぁ、以前までは死者の善業、悪業、ようはカルマを神力で調べて転生先を算出していたんですがね。あまりの死者の多さに転生局員がストライキ起こしましてね」
「起こすなよ。それ死者どうなるんだ?」
「ゾンビとして世にとどまります。映画でゾンビがあふれている奴あるじゃないですか。あれ、原因はウィルスでも寄生虫とかでもなく天界でスト起こしてます。今度ゾンビ映画見るときは、お、ストがんばってるんだなって思っていただければ幸いです」
「ホラー映画の裏側なんて知りたくなかった」
「まぁけどそのままじゃいけないって言うんで、なし崩しで作られたのがガチャ。これなら転生先を公平に決めれるでしょう?」
「なし崩しで転生方式決めないで」
「けどあなたガチャ好きでしょう?」
「う」
「好きでしょう?」
「…まぁ、それはやりたい。というかあるなら回さないと」
ガチャが目の前にあったら回す、それが常識だった。
俺が住んでいたニッポン国でも、小学校の教育課程でガチャを寝ながら回せることが必修となっていた。
ガチャを回さなければ国賊扱いされるのだ。
「ではガチャを出しますね」
閻魔様が指をパチンと鳴らすと目の前に出てきたガチャ。
ガチャと言うよりはガラガラだな。昔の商店街とかであったやつだ。
「えっと今のキャンペーンはなんでしたっけ」
そういうと書類をひっくり返し始めた。
「キャンペーンなんてあるんだ」
「当然ありますよ。ないと気合いが入らないじゃないですか」
「当然なんだ…」
「そこのボードに過去のキャンペーンが載っています」
受付の横に置いてあるボードを見ると、確かにそこに過去のキャンペーン一覧が載っていた。
それぞれに転生・転移・憑依がある。
・モンスター転生キャンペーン。
・TSキャンペーン。
・悪役キャンペーン。
・冒険者追放逆転キャンペーン。
・現代ダンジョンキャンペーン。
・ゲーム世界キャンペーン。
・悪役令嬢キャンペーン。
・宇宙世界キャンペーン。
・ざまぁキャンペーン。
・物質キャンペーン。
・VTUBER転生キャンペーン。
・ダンジョンマスターキャンペーン。
…。
まだまだ続いていた。
いろいろあるんだなぁ。
というか、VTUBER転生キャンペーンは意味が違うような…。
まぁいいか。
「なんかサブカルにめちゃくちゃ詳しくない? ソシャゲとかもやってるの?」
「ええ。ええ。実はですね、ソシャゲは最近天界でもはやってるんですよ。空前のサブカルそしてソシャゲブームです。仕事中に転生者が回すガチャを見て、ガチャ欲が刺激されるんですよね」
ガチャ欲ってなんぞ。
「ガチャ欲って。食欲みたいにいうね。そんなのないだろうに」
「ありますよ。マスクデータにちゃんとあります」
「え?」
「あ」
「…」
「…」
聞いてはいけないことを聞いてしまったのか。
聞かなかった振りをしよう。
「ま、まぁ。そのソシャゲはですね、天界で流行しすぎて、天神より程々にっていうおふれがでてるんですよね。あんましやりすぎて仕事中にもスマホいじって下界にとばされる人もいました」
「神もとばされるのか」
左遷みたいな感じか。
まぁスマホいじってミスされるよりかはましか。
「ええ、神だからこそそういうこともあります。いい神もいれば悪い神もいますからね」
「確かに。目の前の神は悪そうだ」
「ははは、地獄に落とすぞ?」
いやだなぁ、冗談ですって。
「ああ、今はスキル転生と勇者に殺される山賊A転生キャンペーン中です。当たるといいですね」
「へぇ…。スキル転生か…。勇者に殺される山賊A転生?」
「ええ、勇者に殺される山賊A転生です」
「なにそれ?」
「そのままの通りです。無駄にムッキムキの筋肉を見せびらかしながらパンイチマントで斧をもって王女とかに襲いかかり、道行く勇者にあっさりと一切りで殺されて、王女と勇者のつなぎ役になる役です。最近の流行ですね」
「なんでそんなキャンペーンがあるんだよ! 嫌だよ殺される役なんて! それキャンペーンじゃなくてハズレじゃん!」
「ハズレだなんてそんな。シレンさん。いいですか?」
「なんだよ」
「人生というのは山が多ければ多いほど楽しいものですよ」
「うるせえよ! それ暗にハズレって言ってるようなもんじゃねぇか!」
「さて、そろそろ時間です。回してもらいましょう。ちなみに時間内に回さなければ自動的に地獄に落ちます」
「う…。まじか」
10分がそろそろたったらしい。
まじかよ。こんなにも重いガチャは初めてだ。そもそもガチャって回すことはめちゃくちゃ軽いんだよな。
これで俺の人生が決まる…。
頼むからスキル転生、スキル転生をお願いします。
いい人生を送れますように。
神に祈った。
いやけど目の前の神は願いをねじ曲げそうだ。別の神にしよう。
最近なんかで見た芸能の神にでもしておくか。
俺は意を決してガチャの取っ手に手を当てて、そして回した。
ガラガラガラガラガラガラ。
ポン!
虹色に光る玉が出てきた。
「当たりか?!」
「チッ」
虹色の光がやみ、見えたのは青い玉だ。
ひらがなで「すきる」とかかれている。
「よっしゃ、スキル転生! 当たりだ!」
「おめでとーございます」
「おい、棒読みだぞ。ちゃんと祝え」
さっきの舌打ちもちゃんと聞いてるからな
「いやあ本当に運がいい。キャンペーンなんていっても確率は100万分の一位の確率なんで、当たる人はほとんどいないんですよ」
「ひく! 低すぎだろ! 詐欺じゃん! 天界に消費者庁はないの?! クレーム入れてやる!」
「そんな省庁はありませんね。外れてクレーム入れる人は皆転生して忘れちゃってるんで」
「やりたい放題じゃねぇか…」
ガチャ理不尽すぎるだろ…。
いや、ガチャはそもそも理不尽の塊だった。そうだ。うっかり忘れていたわ。
まぁ当たったからいいか。
100万分の一を引き当てるとは幸先がいい。
「では、次の担当に送りますね」
「なんだ。あんたじゃないのか」
「当選者は別なんですよね。私は外れた場合のみの担当です。さて、今のスキル転生の担当は誰だったか…」
そういうと、別の資料を取り出してぱらぱらと見て、一点を見つめて目の前の受付は顔をしかめた。
そしてこめかみに手を当てる。
「…ま、何とかなるだろう」
「え? 何で今顔をしかめたの? なにがあるの?」
「ちょっと頭の頭痛が痛くてですね。決して次の担当神の話ではありません」
「いや絶対ごまかしてるでしょ。そんなべたべたなごまかし方最近きかねぇよ」
「担当がめちゃくちゃな問題神とかそういうわけではありません。大丈夫ですよ。なんたって神なんですから」
「いやいやいや、さっきその神にもろくでもない奴がいるって聞いた所なんだが?」
「記憶にございません。ではいってらっしゃい!!!!!」
「おいいいい!! どこのホリウェモンだ! 勢いでごまかすなぁぁぁぁぁぁぁ!」
鬼畜のにっこり笑顔に見送られ、目の前の景色がもやに包まれて消えた。
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