難解な従者と向き合う 十日目 (十二の日)
親愛なる我が従弟殿。
暖炉から離れがたい日々だけど、オーリチが容赦なく私を火から引き剝がすんだ。
「焼き色が付くまでそこにおいでのおつもりですか」だって。
ラングワートの人間というわりに料理番みたいな表現をするなぁと思ったのだけれど、彼は元々宗家であるエールコスト侯とそれほど血が近いわけではなく、生家はもはや貴族というより騎士家と言ったほうが妥当なのだと、本人から聞いた。
そう、猊下から勝手な憶測で彼を判じてはいけないと忠告をいただいたので、私は正面からオーリチに訊いてみることにしたんだ。私のことを嫌っているのだろうか? と(後でこの話をお聞きになった猊下は、もう少しましな訊きようがあったのでは? と渋面を作られた)。
そのときのオーリチの表情を何と言ったらいいのか……。彼は修道僧の中では歳若いほうなのだけれど、いつも眉間に皺が寄っているから妙に
でもこのときは更に額に縦筋が増えていて、いったいこの表情から何を読み取ればいいんだろう? と私も困ってしまった。
睨まれているのかそうでないのか判断がつかないまま、私とオーリチはしばらく互いの顔を見たまま固まっていたけれど、やがて彼の口元がとてもぎこちなく動き出したんだ。油の差されていない
挙句、呻くようなざらざらした声で、彼は答えたんだ。
「……特に、好きでも嫌いでもありませんが……」
……私はべつに、汁物に浮かべられた
まだ嫌いって言われた方がましな気がするのは、私だけだろうか。
とにかく、よく分からないけれどきっと私は彼を困らせたのだろうと思って、このときは早々に話を切り上げたよ。
でもそうしたら、しばらくして、彼の方から私に話し掛けてきたんだ。
明日はその話について書きたいと思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます