第25話 オーラブレイク

ドゴーーーーーーーーーーーン!!


 凄まじい轟音と共に、バンダールの右腕が俺の頭諸共に地面に叩きつけられた。


ガシャーーーーーーーーーーン!!!


と、同時にガラスが割れるような音がバンダールの腕と体から響き渡る。


 バンダールは呆然と立ち尽くしている。ベデルや隊長など、周囲の面々も同様だった。レーベンだけが、何が起こったのかを把握しようと目を凝らしているようだ。


「なんとか耐えれたようだな。」


 俺はぽつりと洩らすと、ピアース2のエンチャントされた短剣を、地面に落ちているバンダールの右腕に突き刺して、地面に縫い付ける。

 貫通効果がある短剣だけあって、腕だけでなく、堅い地面も簡単に貫いた。


 しかし違和感に気付く。とても微弱だが、バンダールの腕がオーラを纏っていたのだ。

 さっきの音はオーラブレイクの音だ。3回聞いているので間違い無いだろう。なのに、なぜ真っ黒なオーラが滲み出しているのだろう?


 バンダールは立っていた。意識を失ったのなら、すでに倒れているはずだ。

 だが、明らかに衰弱しているようだ。はち切れんばかりに膨張していたその腹回りも、空気の漏れ始めた風船のようにみるみるシワが寄り、皮が垂れ下がっていく。


「なんだこりゃ!?」


 あまりの変わりように、結局、分析が追いついていないレーベンだった。


 これまで、オーラブレイクをくらった相手は、一度に大量のオーラを失ったショックで意識を失っていたが、肉体には毛ほどのダメージも負っていなかった。

 しかし、バンダールは明らかに衰弱している。つまり、これは俺の攻撃では無い。

 魔剣の攻撃を受けた副作用だ。


 魔剣で死体を刺すとアンデッド化していたが、生きているうちに刺された者は、ドス黒いオーラを噴き出していた。あのオーラが生命力を無理矢理変換したものだとしたら。


 バンダールは異常な再生力と回復力がある。それが、あの分厚いオーラの供給源だったとしたら。


 倒せるのは今しかない!


 だが!!!


 俺はバンダールの斜め後方に距離を取っていたベデルへと突進する。気付いたベデルは魔剣を振りかぶって待ち受ける。

 バンダールの横をすり抜けようとした瞬間、


「あにぎは殺らせねえ!」


 動く気配も無かったバンダールに左腕一本で抱きつかれた。


「ぐっ、、、離せ!」


「はなずもんがぁ!

 兄貴! にげろぉ!!」


「馬鹿が。何言ってやがる。」


 ベデルは白け切ったように呟くと、俺へ向けて突進し、


「な、、、な、、なん、でぇ、、、」


 バンダールの背中から心臓を一突きにしたのだった。

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