第23話 圧倒的不利
レーベンは手を出すつもりは無さそうだ。さっきまでよりも状況は悪いというのに。
と言う事は、そう言う指示を受けたんだろう。
ヴァイゼルはきっと見ている。
多分、あいつも勝ち筋が見えているんだ。それを俺が辿れるかどうかの試験なんだろう。
「いでぇ! ぐぎゃっ! いでぇっ!!
やめでぐでぇ!!!」
バンダールは何度も何度も、魔剣に刺され、斬りつけられていた。
最初に刺された時は大幅に強化されたドス黒いオーラだったが、今はもう変化がほとんど見られない。
魔剣の効果の上限に達しているのだろう。
それでも攻撃をやめないのは単なる嗜虐趣味だろうか。
「さっさとそいつを殺せ! そしたら、また犯らせてやる!!」
ベデルはそう叫ぶと、バンダールを刺すのを止める。
「ぐへひひへへへっ! 犯れば、みんなが笑ってくれる! また、褒めでぐれる!!!」
バンダールがニヤニヤと笑いながら立ち上がる。続いて、下敷きになっていたベデルも立ち上がると、魔剣でバンダールの右腕を斬り落とした。
「いでぇ! な、なんでぇ!?」
「黙ってろ。」
すると、さっきのベデルのように、両方の切り口からピンク色の繊維が伸びて来て、互いに絡みつく。
「う、腕がまたのびたぁ!!」
すぐに斬られた痛みも忘れて、バンダールは喜色を浮かべる。
尋常では無い再生力は元々持っていたが、腕を繋いだ力は魔剣から与えられたものだろう。魔剣の攻撃がドス黒いオーラに弾かれないのも、魔剣によって与えられたオーラだからなのだろうな。
「グヒヘヘヒヘェ。 もう、お前なんか、ごわぐねぇど!!」
5m近くまでリーチの伸びた右腕を振り回し、ハンドアックスを叩きつけてくる。元々、鎖鉄球を使っていただけあって、器用に肩を回してリーチも調節してくる。
貫通を狙うなら別だが、この世界の戦闘の基本はオーラの削り合いだ。オーラのどこに当たろうが、減衰量に変わりはない。それは、アンデッドと兵士たちの乱戦の中で確認した。
つまりガードに意味は無い。より強力な攻撃を、どこへでもいいから当てればいいと言う事だ。
的こそデカいが、分厚いオーラに守られて、馬鹿みたいに長いリーチで重い武器を的確に当ててくるバンダールは、強者の条件を揃えている。
一方の俺は、オーラこそ強化されたが、武器は短剣のみ。圧倒的にリーチ負けしている上に、身体能力も運動不足気味の現代人でしかない。掻い潜って攻撃を入れる力は無い。
しかし俺には『接触発動』のスキルがある。こちらから触るのがベストだが、相手から攻撃されても、必ずカウンターを入れられる。ダンパースキル限定なので、ダメージは与えられないが、俺の勝ち筋の中に組み込まれているのは間違いない要素だろう。
「シュペート、シュペート、シュペート、シュペート・・・・」
俺は自分自身と短剣、そして、シャツやズボンなど、身につけているあらゆる物にシュペートの魔法をかけていく。どこに触られてもシュペートが発動する事と、重ねがけによる効果の重複が見られるかどうか、こんな厳しい状況試そうとしているのだ。自分でも頭がおかしいのではないかと思う。
しかし、シュペートで動きを遅くしても、決定打を与えられる攻撃力は無い。しかし、偶発的にだが、3度もオーラブレイクが発生している。あれの発動条件さえ見つけられれば。
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