第15話 バンダール

「どうすりゃ試験は合格なんだ!?」


 俺は最初に現れた隊長格の男に向かって叫ぶ。


「そいつらを皆殺しにしたら1次試験は合格だ!」


「ふざけんな! 結局、数で囲んで殺す気じゃねえか!」


 レーベンがキレている。


「見込みがあれば殺さないさ。貴重な戦力である事を見せてみろと言ってるんだ。

 不要なら文字通り切り捨てるがな!」


「、、、んの野郎、、、」


 どうやらレーベンも言い返すのを諦めたようだ。


「コツを掴みたい。盗賊ども相手に練習するから、レーベンは俺の背中だけ守ってくれ。」


 小さな声で言うと、


「わかった。もうオーラが見えてるみてえだから、盗賊どもならなんとか出来るだろう。

 だが、2次試験とやらは参加するぞ。」


「ああ。頼んだ。」


 話はついた。


「おおーい。そろそろはじめっぞ! 

 ビッグボーナス君。おめえを殺っちまったら刑期10年短縮されんだよ。大人しく死んでくれるよなあ!!」


ギャハハと、盗賊達が下品な笑い声を上げる。


オゴッオゴッ


と、変にむせるような声は、バンダールの笑い声らしい。


「盗賊ってのは冒険者にすらなれなかったヤツらの集まりだろう?

 お前らにできる事なんて、雑魚がたかってハッタリかますのが精一杯だろう?

 俺一人で十分だ。ビビってないでさっさとかかって来い!!」


「言うじゃねえか。雑魚はどっちか思い知らせてやる。

 行け! バンダール!!」


 一番偉そうなヤツは、やっぱり来ないのかよ。


「ぐがぁーー! まがぜろ兄貴ーー!!」


 健気な弟が、巨体を揺らして突進して来る。なるほど。脚力も化け物らしい。230cm、200kgはありそうな巨体だが、物凄い速さだ。


 一転、急ストップすると、突進の勢いも利用して鉄球を俺の頭上から叩きつけて来る。コントロールもバッチリだ。

 だいぶ練習してるんだろうなあ。とか呑気に考えつつ、


スパン


ズズーーーーーンン!!


 レーベンを含めた、この場にいる全ての人間があんぐりと口を開けていた。


「な、な、な、な、な!」

「何、何をしやがったーーーーーーーー!!!」

「ただ、切っただけだが?」


 真っ直ぐ頭の上に鉄球が落ちて来るんだから、そこに短剣を当てただけだ。オーラで覆われてない鉄球なんて、ゴム鞠みたいなもんだろう。

 まあ、破片に当たらないように、ちょっと避けはしたがな。


「お、お、お、おでのタマがああああぁっ」

「これを使えっ!」


 兄貴がハンドアックスをバンダールの方に投げる。


ガスッ

「あがっ! い、いでぇ、、」


 なんか、頭に刺さってねえか?


「よぐも、やりやがっだなぁ!」


 頭に刺さった斧を抜きつつ、こっちを睨む。

 なんでだよ! と突っ込みたいが、額からピューピュー吐き出す血が気になってしょうがない。


「一斉にかかれ!」


 兄貴が声をかけると、他の盗賊達も群がって来たが、やはり自分では寄ってこない。


 盗賊たちはどいつもこいつも、オーラが見るからに不安定で、得物にもオーラを纏っていない。

 弓を構えている奴もいるが、あれなら問題ないだろう。


 足の速い奴が駆け寄って来たが、明らかにへっぴり腰でビビっている。剣を振り回してはいるが、俺に届くところまで踏み込んでこない。

 それなら簡単だ。


パキン


 一合、剣を打ち合うだけで、簡単に叩き折ってやる。


「うわぁ!!」


 恐怖が限界に達し、俺に背中を向けて逃げ出そうとするが、


ザシュッ


 突然、首が飛んだ。


「逃げる奴は俺が切る。死ぬ気でかかれ。たった2人殺ればいいんだ。簡単だろうが。」


 兄貴が子分達にドスを効かせて言い放つと、


「バンダール。いつまで遊んでるんだ。さっさと行かないとお仕置きだぞ!」


「お、お、おじおぎはぃやだぁぁぁ、ああああっ!!」


 めちゃくちゃにハンドアックスを振り回しながら突進して来る。他の子分達もそれに続く。

 今度はしっかりとこちらに武器が届く間合いまで入ってくるので気は抜けない。

 だが、やる事は一緒だ。

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