第14話 試験
「貴様が召喚されたと言う『勇者』だな。
これから試験を受けてもらう。拒否は出来ない。」
先頭を切って出てきた男が、有無を言わさず通告してくる。侮蔑するような目で、俺をにらんでいる。
その間にも続々と武装した兵士が姿を現し、俺たち2人を包囲していく。服装こそ揃っていないが、その動きは、明らかに統率されていた。
「おいっ!
俺は賢者会議の依頼で、勇者の護衛をやっている者だ。もし、ムートを傷つけるつもりなら、俺は守らなきゃならない。任務遂行の為なら殺人も認められてるんだが、承知の上か?」
レーベンが威嚇するように宣告する。
「奇遇だな。俺たちも賢者会議の依頼で来ている。試験の結果、対象が死んでも構わないし、邪魔者は何人であろうと実力で排除せよと言われている。
お前は試験対象ではないから、早々に立ち去れば手は出さない。」
「ジジイどもの手先か、、、ムートを処分する気だな。絶対にさせない。
兄貴が戻ってくるまで凌げば俺たちの勝ちだ。
やるぞ、ムート。」
肩に力が入るレーベンに、
「これは俺の試験だろう? レーベンは下がっててくれ。」
なぜか頭がすうっと覚めていくのを感じる。
「ムート。わかってるのか?
これは試験の体裁をとったリンチだ。いや、処刑だぞ。」
「ああ。ちょうどいい。掴めそうなんだ。あいつらを練習台にしてやるよ。」
少しだけ思い出したんだ。元の世界の事を。俺は戦ってたんだ。復讐のために。
「なんであいつらが生きてるんだ。」
これまでの兵士とは明らかに違う、ガラの悪い男たちが、俺たちを包囲する兵士の間を抜けて、俺たちの方へと向かって来る。
20人ほどのむさ苦しい男達の中に、一際、背の高いでっぷりとした大男がいる。
「間違いない。バンダールだ。鉄球のバンダール。俺たちがとっ捕まえた盗賊だぞ。
100人以上殺してる凶悪な奴らだ。とっくに縛り首になったはずだが、ジジイどもに飼われてたんだな。」
説明してくれるレーベンを見る。
ん? レーベンの周囲が赤銅色に輝いて見える。もしかしてこれがオーラか?
次にバンダールを見ると、体は馬鹿でかいがあれがオーラか?
あちこち掠れて濃淡のムラがある。光も弱い。
「なあ。あいつって、やたらオーラ弱くないか?」
俺の問いにレーベンが驚く。
「お前、見えてんのか? 確かにオーラは薄い。ただし馬鹿力は人間離れしてるぞ。鉄球をまともに食らったら、オーラも貫通されるから、絶対に喰らわないようにしろ。」
レーベンはそう言って警戒しているが、俺の本能は危険を感じていない。むしろ、あの隊長格の兵士の方が強そうだし、それよりもレーベンのオーラは段違いの強さだろう。
こんなのはピンチでもなんでもない!
と、思ったんだがオーラを貫通ってなんだ?
「攻撃に耐えられるだけのオーラの厚みが無かったら、オーラブレイクされてなくても肉体にダメージを負うんだ。」
レーベンが説明してくれた。
その間にも盗賊達が近づいて来る。
「ゔぉーーいぃ。おべぇ、あんとぎのチビだどぅ!!」
なんか、知性はかなり低そうだ。
「また、痛い目に会いに来たのかよ。うすのろ!」
「おでは、うすのろじゃねぇどぅ!!」
鉄球に繋がる鎖を掴んだ両手を上げて、地団駄を踏む大男。
それを見てふと気付く。
レーベンを見ると、バトルアックスを構えているのだが、それごとオーラを纏っているのだ。
だが、バンダールの鎖も鉄球もオーラを纏っていない。他の盗賊達も同様に、武器にオーラを纏っていない。
俺はと言うと、さっきレーベンから受け取った短剣にオーラは纏われていなかった。
だがイメージをするだけで、ヌルヌルとオーラに短剣が飲み込まれていった。
どうやら装備出来たらしい。
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