第11話 謎の能力

「それが、俺もよくわかんねーんだ。

 でも、同じようにぶっ倒れたのは、あいつで2人目なんだ。」


「ちょっと待ってくれ。

 『イゾリゴン』」


 ナッケンが魔法を使うと、俺たちの周囲の景色がボンヤリと霞んだような気がする。


「結界を張った。訓練所のような強固なものじゃないから、小声で頼む。」


 と、顔を寄せてくる。レーベンも近付いてきたので、男3人で顔を寄せ合いながら道を歩いている恰好だ。


「そいつは穏やかじゃない。ライクスは実力で言えばA級ライセンスクラスだ。

 すでにオーラを消耗していた可能性もなくはないが、もう一人、オーラブレイクされた奴がいるとなると、そいつは王宮にいたんだろう?」


 ナッケンの問いに、


「ああ。召喚された時に、後ろに立っていた騎士だ。」


「なるほど。王宮内で護衛を務める騎士のオーラが削られているなんて事は、まずあり得ないだろう。

 そのオーラを一瞬で削り取る能力は恐ろしいものだが、それ以上にムートがその力をコントロールしているわけでは無いと言うことの方が問題だ。

 すぐ、ヴァイゼルに知らせた方がいい。」


と言うナッケンだが、


「だが、あの騎士がぶっ倒れた時、ヴァイゼルは神の怒りだとかなんとか言って笑ってたぞ。何か知ってて、放置してるんじゃ無いか?」


レーベンがふむと頷き、


「確かにな。あいつの性格からして、面白がってるかもな。」


 そうだとしたら迷惑な話だ。突然、知らない世界に呼び出されて、変な能力を与えられたのに、俺自身はさっぱりわかってないんだからな。

 もし、俺の能力を知ってるんなら、さっさと教えやがれ。

 ヴァイゼルの胡散臭い笑顔がちょっと嫌いになりそうだった。


 ナッケンが口を開く。

「そういや、『接触発動』を持っていたな。それも、レベルアップで獲得したんじゃなく、最初から持っていたみたいだったが。」


「ああ。そんな事、言っていたな。どう言う能力なんだ?」


 レーベンが引き継ぐ。


「あらかじめ自分に魔法をまとっておくと、相手に触れた瞬間に発動するってえスキルだ。激レアだぞ。

 ムートはさっきシュペートを覚えただろう? あれを自分自身にかけておくんだ。接触発動持ちなら、魔法の効果が自分に現れる事は無いから安心しろ。

 その状態で相手のオーラに触れると魔法が発動する。スキルレベルが上がれば、自分の装備で相手のオーラに触れても発動するようになる。剣で切り付けたら発動するってな具合だ。

 もっとレベルが上がれば、互いの装備が触れあっただけで発動するぞ。

 前衛の奴が持ってると、厄介極まりないスキルさ。羨ましいぜ。」


 見るからにゴリゴリの前衛だからな。レーベンは。


「だが、シュペートが発動したとしても、それだけでオーラは削れないし、騎士をオーラブレイクした時はまだレベル1だったんだろう?

 となると、ムートが化け物並みのフィジカルを持っていて、そいつで一撃喰らわせた事になるんだが、どうみてもそんな力は無さそうだ。」


 ナッケンが言う。


「それに、そんな事をしたらオーラだけをきっちり削り切るなんて無理だろ。勢い余って怪我させるか、殺しちまってるはずさ。」


 レーベンの見解だ。


 そう言えば、オーラブレイクされちまった2人は、どちらも俺を突き飛ばそうとした瞬間にぶっ倒れたな。やはり、接触発動が関わってる可能性が高いのだろう。


「ムートが謎の能力者ってのは間違いなさそうだ。どうだ? 俺たちでその謎を解いてみないか?」


「おおっ! ナッケンにしちゃ面白え事言うじゃないか! 

 もちろん俺は賛成だが、ムートはどうだ?」


 ヴァイゼルの考えている事はよくわからない。さっき出会ったばかりだし、裏もありそうだし。

 しかし、俺の力の使い方がわかるのなら、やってみてもいいかも知れない。

 ヴァイゼルよりは、この兄弟の方が付き合いやすそうだしな。


「その話。乗った!」



 そんな3人の様子を、少し離れた後方から伺っている者がいた。

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