第3話 魔法のある世界

「さっぱりわからん」


 俺は思った通りの事を口に出す。


「まあ、そうだろうね。順を追って説明させて欲しい。」


 ヴァイゼルは俺の反応を予想していたらしい。


「まず、この世界に危機が訪れている。100年近く前に勇者によって封じられた魔王が復活しようとしているんだ。」


「なんだ? ド◯クエとか、そういう奴か?

 俺はあんまり詳しく無いんだが、、、」


 ゲームか漫画の話でもしてるんだろうか。俺の現状の説明を聞いているはずなんだがなあ。


「ドラ◯エと言うのは知らないが、君が詳しく無いのは当然だ。ここは君が生まれた世界では無いのだから。この世界のどこにも君の生まれた街や、知った人間は存在しない。全く別の世界なんだからな。」


 それにしては、ここは中世のヨーロッパの城みたいだし、ヴァイゼルが喋っているのは日本語にしか聴こえない。


「『双子の世界』と呼んでいるんだが、君のいた世界とこの世界は、互いに互いの周りを回っている、並行した存在らしくてね、共通点もたくさんあるんだが、本来、接点を持つ事は無いんだ。」


 なんか、わかりそうでわからない話だが、とりあえず聞いてみる。


「君たちの世界では、こちらとは全く違う技術体系が発達しているんだろう? 君たちが『科学』と総称しているものだね。

 だが、こちらは『魔法』が発達した。いろいろと便利な暮らしを営む為に、魔法が発達した世界なのさ。

 言語も魔法によって統一されたから、どんな言葉を喋っても互いに理解できるのさ。」


 なるほど、なかなかにファンタジックな世界に来ちまったらしい。


「なんで、俺たちの世界の事を知ってるんだ?」


 当然の疑問をぶつけてみる。


「君が初めての客じゃ無いって事さ。」


 事もなげに答える。


「じゃああんたらは何人もの人間を勝手にこっちの世界に連れて来ているって言うのか!?

 それは『拉致』じゃないか!!」


 流石に声を荒げる。


「そうでもない。そちらから客人を召喚するには、途轍もない魔力を必要とするんだ。特に、客人がそちらの世界から消える事で、大きな変化が起きる場合にはね。」


「どう言う事だ? 一般庶民よりも、大社長とか大統領を連れて来る方が大変だって事か?」


「あんまり身分は関係ないかな。無関係ではないけどね。

 それよりも、召喚されなかった時と、召喚されていなくなった時を比べて、世界の変化量の差で必要な魔力が決定される。

 正確な魔力量を求める計算は恐ろしく複雑なんだけど、必要な魔力が少なくなる条件と言うのは一つに集約できる。」


「一つだけ?」


「そう。その人間の死が確定した時さ。」


 と言う事は、


「まだ、記憶が戻って無いみたいだね。でも、そのうち思い出すよ。君は前の世界で死ぬところだったんだ。その直前に僕たちがこちらの世界に召喚したってわけさ。」


 どっちにしろ死んで居なくなる人間だから、別の世界に飛ばしても元の世界に影響は少ないって事らしい。


「でも、なんでそんな事を? 俺たちは魔法なんて知らないし、魔王がどうとか言ってたけど、人を殴った事すら無い奴を連れて来て、なんの役に立つと言うんだ?」


 普通に思いつく疑問をぶつけてみる。


「それはね。こっちの世界のレベルアップシステムが関わってるんだ。」


 レベルアップ?

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