家庭科室にて 4

 家庭科部の活動は週二回。部員は部長である花耶かやと、新入部員の一年生であるここねの計五人。


 活動内容は、簡単なお菓子作りや裁縫など、そしてそれを文化祭で販売したりする。


 活動場所は家庭科室だが、裁縫などは家でもできるため、別に来なくても大丈夫だったりする。


「活動は週二回って言ってるけど、別にボクみたいに毎日来てもいいよ。家庭科室使う部活ってうち以外無いし。まー、自由参加的なやつだね」

「分かりました」


 部長の話を真剣に聞いているここねを、なんとなく微笑ましく見ている菜々美ななみ


 もうこれで放課後、ここねと一緒に部活動見学に行かなくて良くなって寂しいような良かったような。


 自分は早くアルバイトを探さなくてはと考え、スマホで求人情報を見る。


 飲食店やスーパーのレジ、倉庫など確認してみるが、どれも怖そうだ。


 酔っ払いやクレーマーに絡まれたり、クレーマーに絡まれたり、倉庫はかなりブラックだと聞いた事がある。


 それになにより、同僚に男がいるのが嫌なのだ。


 一応自分の見た目の良さを自覚している菜々美だ。それに女子校に通っているという事実で、言い寄られるのが目に見える。


 自意識過剰であればいいのだが、それが事実なのだ。


 それもあり、なかなかアルバイトを決められないというのがある。


柏木かしわぎさん?」


 そうやって難しい顔をして考え込んでいた菜々美を見て、ここねが声をかける。


「すごい顔してたよ? 彼氏関係?」


 そこに花耶も加わる。


「花耶先輩、柏木さんは彼氏いませんよ」

「え、そうなの? てっきりいるもんだと思ってた」


 花耶が意外そうに今すぐ眠ってしまいそうな目を大きく開く。


「はい、男の人が苦手なんで……」

「そっかそっか。ごめんね」

「いえ別に、そんな……」


 あたふたと手を振る菜々美である。


「アルバイトを探していているんですけど」

「あー、なかなか見つけられないと?」

「そうなんです……でも大丈夫ですよ。あっ私、部活の邪魔になるんで帰りますね。お邪魔しました」


 全ての事情を話してしまおうかと思った菜々美であったが部活の時間中にそれをするのはなんだか申し訳ないような気がしてそそくさと立ち去るのだった。

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