家庭科部にて 3

 その日の放課後も、ここねの部活動見学について行った菜々美ななみ。昨日言っていた文芸部を見学に行き、次の日は家事部、その次はインテリアコーディネート部、また次の日は水槽楽部と見学に行ったが、どれもハマらないらしく結局――。


「やっぱり来てくれたんだね」


 家庭科部へ入部することにした。


 一度入るつもりは無いと言った手前、家庭科部へ来るのはどうかと思った菜々美だったが、ここねにお願いされてやって来たのだ。


「はい。入部します!」

「すみません。今日も私は付き添いです……」

「いやーここねだけでも入ってくれて嬉しいよ。これで部としては存続できるんだし」


 花耶かやは菜々美に気にするなと言って、二人分の紅茶とクッキーを用意してくれる。


「結局入部してくれるのはここねだけかな。麻耶まやは止めたし、もう期間的に新入生は部活決めただろうし」


 渡された入部届を記入しながらここねは話を聞いている。


「でもまあ、聞いた話によると部活の数が増えたらしいんだけど……なんか聞いてる?」

「「あー……」」


 菜々美とここねは顔を見合わせる。


 新たに大量の部活動ができたという話は一年生から広がった話なのだ。ただそれをあまり言いたくない。ある種の独占欲を二人は持っている。


「言いたくないなら別にいいけどね」

「あっ、じゃあそれでお願いします」

「私もそれで」


 二人の答えを聞いた花耶は気にした様子もなく、この話は終わりとばかりに手を叩く。


「おっけー。さて、じゃあその入部届は担任に渡してもらって……。ようこそ、家庭科部へ」

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