家庭科室にて 2

 その後、喚く麻耶まやを追い出した花耶かや


 涙を見せながらも帰っていった麻耶に、少し同情したが、姉妹の問題だ。部外者の菜々美ななみとここねはなにも言えない。


「妹が見苦しいとこを見せたね」


 なにも言えないのだが、心配するのは別にいいだろう。


「あの、大丈夫なんですか? 内――麻耶さん泣いてましたけど」


 思わずここねが菜々美の顔を見る。


「んー、あの子って昔っからボクのこと好きすぎるんだよ。少しは姉離れしてほしいんだけどねー」


 だから泣かしてでも帰らせたのだろうか。泣いていたのは少し心配だが、そういう理由があるのなら仕方がないような気もする。


 頷いた菜々美だったが、まだ納得いっていない様子だったのか、花耶はやれやれと困ったように笑う。


「具体的に話そうか?」

「えっ、いや……」


 菜々美がしどろもどろになったところで、ここねが口を挟む。


「大丈夫です。家族のことはあまり踏み込まない方がいいと思うので」

「そっかそっか。それなら話を戻そうか」


 そう言って花耶は、先程動かした紅茶を再びここねの前に戻す。まだ湯気は立っており、入れ直す必要はなさそうだ。


 追加で菜々美の分の紅茶も入れる。


「あっ、ありがとうございます」


 自分は入部する気がないのだが、貰ってもよかったのだろうか。そう思ったが、飲まなければ失礼だと思って、ありがたくいただくことにする。


「説明は部活動紹介で言った通り、部員はボク一人、活動日は週二回、主な活動は文化祭でのお菓子販売、まあお菓子じゃなくてもいいんだけどね。入ってくれるよね?」


 ここに来たということは入ってくれるんでしょう? という目で見られる。


「うーん……」

「ここに来たってことは入ってくれるんじゃないの……⁉」


 恐ろしいものを見たような表情で花耶が言う。


「そうなんですけど……そうでもないというか……」


 一番興味が湧いた部活は家庭科部で間違いないのだが、本当はもっとほかの文化部も見てみたかったのだ。


「他の部活見てから決めてもいいですか……?」

「じゃあなんできたのさあ!」


 テーブルに頭突きをする花耶である。


「すみません……」

「いいよ……ちなみに聞くけど、ここねの待ち人は――」

「すみません、私は部活動する気が無くて……」

「だと思ったー」

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