午後の授業にて 2

「……負けた⁉」


 ふらりと頭が振れて、地面が崩れ落ちる感覚に見舞われた菜々美ななみ


 保健委員、図書委員、体育祭委員、文化祭委員などの委員会類。


 掲示物係、鍵係、体育係などの係類。


 その全てに負けた菜々美、残りは誰もなりたがらない学級委員だけだった。


「じゃあ学級委員は柏木かしわぎさんと真辺まなべさんで決定ね。はいみんな拍手」


 パチパチと拍手が向けられる。


 ショックと恥ずかしさに顔を俯かせた菜々美。


「あっ!」


 そんな中、担任の高岩が声を上げる。


 生徒達が驚いて前に立つ高岩を見る。


「ごめん、みんなの自己紹介まだだった」


 手を合わせた高岩の言葉に、生徒たちは気だるそうな雰囲気を出す。


 そのタイミングで隣のクラスから歓声が聞こえてきた。


「うん、他のクラスも盛り上がってるね。じゃあ出席番号順に自己紹介よろしく! あっ、その時になに係かどうかも言ってね」


 突如始まった自己紹介。まずは出席番号一番からだ。


 自己紹介において、トップバッターは責任重大である。一人目がなにを言うかによって、その後に続く者の言うことが決まるのだ。


「えっと、綾谷あやたにくくり……です。委員は保健委員です。よろしくお願いします」


 小柄で分厚い眼鏡をかけた、少し茶色っぽい髪の毛の少女だった。


 俯きがちで自信なさげにそれだけ言うとすぐに座る。


 拍手が響いて次の生徒にバトンが渡される。


 簡潔な自己紹介、理想的な自己紹介だ。



 ハードルが上がらなかったことに菜々美を含め、何人かは安堵の息を吐く。


今村春花いまむらはるかです、掲示物係になりました、みなさん、よろしくお願いします」


 ぺこりと一礼。ほんわかとした雰囲気の少女だ。


 その後も自己紹介は滞りなく続き、変にウケを狙うような生徒はおらず、平穏無事に終わるのだった。

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