部活動紹介の前にて

 次の時間は部活動紹介だ。


 今日はこれで終了。そして、各部活の仮入部期間が始まる。


 入学式のように出席番号順で並ぶ生徒達。相変わらず四組周辺では歓声が凄い。


 勿論菜々美ななみの所属する三組の生徒達も歓声を上げる。


 列を崩しながら生徒達は四組に所属する水原涼香みずはらりょうかを一目見ようとする。


 菜々美も歓声は上げないが、やはり自然と目は涼香を探してしまう。別に自分のイメージを押し付けようなど思っていない。


 ただ単に絶景を見たいだけだ。


「相変わらず凄い歓声だね」

「ひぇやっ、芹澤せりざわさん⁉」


 いつの間にか近くに来ていたここねに驚いた菜々美が飛び跳ねる。


 普通ならかなり目立つのだが、他の生徒の目は四組に向いているため、それ程目立っていない。それでも恥ずかしいものは恥ずかしいらしいのだ。


 少し赤くなった菜々美を見たここねは笑顔を浮かべる。


「やっぱり見ちゃうよね」

「そうね、綺麗だもの」


 そんなことを言いながらも、二人は互いの目を見て話ている。


「でも、柏木かしわぎさんも綺麗だよ?」

「私なんて、あの、水原さん……? に比べたら全然よ」


 菜々美も中学の時はよく綺麗だと言われてきた。


 だから今更そう言われても照れもしない、だけど涼香に比べたら、綺麗だと言われ慣れている自分が恥ずかしくなってくる。


「それに――」


 続けて口を開こうとしたが、静かに並んで、という教師の声が響き、その先を口にすることはできなかった。


「あ、もう戻った方がいいわよ」

「え? う、うん」


 どうやらその続きは言ってくれないようだ。


 後ろ髪を引かれる思いで、ここねは列に戻るのだった。

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