第18話
「……はっ、ここは?」
目を覚ますと、視界には一面空が広がっていた。と、いうことはここは外だ。俺はどうしてこんなところで寝ていたんだろう。まだ覚醒しきってないぼんやりとした頭で考えても、記憶は直ぐには蘇ってきてはくれない。
確か俺はドMで、トラックに轢かれて死んで、HPとMP以外全て1のドM勇者になって、まずはレベルをあげようと……、
「おーい、生きてる?」
と、そこで頭上から聞き覚えのある声がかかる。この声には聞き覚えがある。この透き通っているけどちょっと甘く鼻にかかったような声は間違いなく、
「フック姉さん?」
「そうだよ、キミに無茶振りしていきなりポイズンスネークと戦わせたフック姉さんだよ? 気分はどう?」
あくまでも気楽な感じで言ってくるフック姉さんの言葉に俺は思い出す。
「あぁ、そうだった」
そう、俺はフック姉さんから胸を触った(勝手に触らされた)からその償いにというムチャクチャな理由で毒蛇と戦わされたのだ。しかし、本来ドMであるはずの俺には垂涎もののシチュのはずなのになぜか心は弾まなくて、その原因が姉さんが興奮してるとこを想像出来ていないからだと気付いて、『イキそう』っていう言葉をもらって……、
「あれ? あれから俺どうなったの?」
そこから覚えていない。
「あはは、記憶無くなっちゃってたんだね」
そんな俺の言葉を聞いたフック姉さんは少し苦笑いした後、ニッと挑発的な笑みを浮かべると、
「ステータス、見てみなよ?」
なんて事をいう。ステータス? どういうことだろう。実はもうHPがゼロで俺は死んでて状態異常:ゾンビ、みたいになってるとかか?
「ステータス、オープン」
怖くなった俺は慌てながらステータスパネルを表示させ、その詳細を見る。
タイゾー
職業:黄昏よりも昏きマゾ
Lv:23
HP:87659
MP:253893
力:1
体力:1
素早さ:1
知能:1
精神:1
魔力:1
運:1
EXP:2359
次のLVまで:124
SP:0
固有技:DOB(ドライオーガズムバスター)消費MP99
「……えーっと、これは」
うーん、レベルが上がっている。なぜだ。なんて思っているとフック姉さんは嬉しそうな感じでこんなことを言ってくる。
「凄いレベルあがってるでしょ? あれからキミ、ポイズンスネークを20体も倒したんだよ」
マジか。記憶がない間にヘビを20匹も? ヤバいなにそれとんだ殺戮兵器じゃないか俺。自分で自分が怖くなってくる。もしかして俺ってやつはち◯こさえボッキすれば殺戮を繰り返すドSになってしまうというのだろうか。まあ、それは考えると怖くなるのでとりあえず置いておこう。他にも疑問なことがあるので、とりあえずそのことを一つずつフック姉さんに聞いていこう。
「なぁ、ポイズンスネークって弱いの?」
「え? フツーに強いよ?」
「じゃあ、どうやって倒したんだ?」
そう、強いなら倒せないはずなのだ。なんせ俺はHPとMPだけ異様に高いが他のパラメーターは全て1、普通に戦って強敵を20体もやれるとは思えない。
「それはねー……、わたしが、その、い、『イッちゃいそう』って言ったじゃ……」
「ああ、そうだな最高だったありがとうございます」
蘇る甘美な記憶に俺が思わず食い気味にそう言うと、フック姉さんは呆れたように、
「いやキミどんだけドMなのさ? ……まあいいや、そんでね、それを聞いたキミは急に叫んで走り出して、股間を光らせながらポイズンスネークに向かってDOBを発射して一撃撃破したってわけ!」
と、説明してくれるがいまいちわからない。股間を光らせて? DOB? なので俺はまず、この話の核心であろう単語について姉さんに尋ねる。
「DOBって?」
「そっかそっか、キミは確か異世界から来たんだもんね? DOBっていうのはMの男性にしか習得できないすごい技で、ち◯こから摂氏750度以上(M度が高いともっと上がる)のカウパーを発射できるんだよ!」
なんて説明をフック姉さんはドヤ顔でしてくれる。しかし、俺はその様子をみて一つ疑問が生じる。
「なあ、フック姉さん」
「ん? なに?」
「フック姉さんって、基本エロいことに対して割と恥ずかしがりだよな」
そう、俺は今までこのドS(の卵)姉さんと接してきた印象は、『本当は結構エロいけどエロさオープンにするの恥ずかしい人』だ。えろーすな経験について訊かれた時とか、普通の「何こいつヤバいこと急に訊いてきてキモい」っていう嫌悪感よりも、恥ずかしがってるなってことの方が印象的だったし、他にも随所に割と照れたりごまかしたりしいることを記憶している。
「えー……、急にそういうこと聞く?」
ほら、そんなこと訊いただけでちょっと顔が赤くなっている。それを考えるとさっきのはどう考えてもおかしい。
「じゃあなんで、ち◯ことかは平気で言えるんだよ?」
なので俺はその当然の疑問をフック姉さんにぶつけてみる。するとフック姉さんはあくまでもキョトンとした感じで。
「へ? なんでち◯こが恥ずかしいの? ち◯こってえろいの? ただの部位じゃん」
なんてことを言う。あれ? なんだろう、この人実は結構、……変かもしれない。
「……そうか」
ま、まあいい。今はそんなことよりも状況を整理したい。えーっと、フック姉さんのくれた「イッちゃいそう」という言葉。その時の姉さんの顔は確かに実際ちょっと感じていそうで、俺の脳の中に眠るドーパミン放出用の蛇口が一気にフルオープンになった結果俺はDOBというち◯こから熱いビームを発射するという色んな意味でヤバい技を習得してそれを使って毒蛇を20匹討伐してレベルが23まで上がったけどパラメーターは相変わらず1。
「なるほど……」
ち◯こからねぇ。
俺は姉さんから視線を逸らし、自分の下腹部の方を見る。すると俺のズボンとパンツの一番大切な部分大きく焦げて穴が空いており、くたっとした我が粗末なドリルが丸見えなのだった。
「ちょ! 姉さんに見られてる?」
慌てて俺が股間を手で覆うと、それを見たフック姉さんはおかしそうにクスクス笑ってこんなことを言ってくるのだ。
「ふふっ、別にそんな慌てて隠さなくても別にそんなの見たくないし」
その言葉を聞いた瞬間、本日23発目のDOBを自分の手に浴びせてしまい、HPが2000くらい減ってしまったのは言うまでもない話だった。
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